家族…
登場人物
ルビはPCの方でしないといけないみたいなんで、新キャラの時はルビを…
そうでないときは、読みにくいキャラの名前は、たまにですが前書きで書こうと思います。
燎斗:やくと
夢葵:ゆあ
俺は夢を見ていた…
燎斗と二人でお酒を飲む夢…
そんな夢の光景を…
脳が勝手に加速していく。
俺の意識を覚醒へと引っ張り上げてくる。
今まで見ていたものが、夢だった。
そう、俺に知覚させた。
自然と、目が開いた。
寝起きとは思えない、軽い瞼…
そして目を開いて見えたのは、いつもの光景だった。
見慣れた天井…
ただ白くて…
見ていても、天井に関して何にも感想が湧いてくることのない天井…
そして…
「あっ、お兄ちゃん起きた!」
そんな声が聞こえてきた。
またか…
俺はそう思いながら、声のしてきた方に目を向ける。
するとそこには、妹がいた。
今年で中学3年生になる妹…
それを示すように、白い制服を身に付けていた。
背は普通…
もしかしたら、少し低いのかもしれない。
それに習ってか、出るとこはあんまり出ていない。
年を考えれば相応なのかもしれない。
いや、少し遅れているような気も…
あどけなくて、まだ幼い顔…
少し明るい茶髪…
そんな髪は肩にかからないくらいまで伸びている。
見て瞬時に、可愛らしさと愛らしさが伝わってくる。
もしかしたらこのまま、幼い雰囲気のままで成長していくかもしれない。
それはそれで、良いと思う。
そして、何故かほんのりと肌寒い…
でしかも、その寒気はゆっくりとだが増している。
特にお腹周りが…
それで、なんとなく理由は分かった。
でも、一応尋ねてみようと思う。
「夢葵、何してるんだ?」
俺のその問いに、視線を俺…
正確に言うと、俺の胴体に向けていた妹が視線を合わせてきた。
その顔はあっけらかんと、さも当たり前のことをしているような顔だった。
「お兄ちゃんの服脱がしてる…」
「なんで?」
「既成事実でも、作ろーかなと思って…」
意味が分からない。
いや、意味は分かる。
でも、意味が分からない…
「君のお兄ちゃん…、それされると社会的に死ぬんだけど…」
「大丈夫だよ。」
「何がっ!?どう考えても、大丈夫じゃないだろ!!」
「大丈夫だよ…」
同じ言葉で諫めてくる。
ただ二回目の方は、少し言葉の明るさが消えて声の重みが増した…
そう、感じた。
そして…
「夢葵も一緒に死んであげるから…」
「いや重いって…。朝から重すぎるって…」
朝じゃなくてもだけど…
「でも夢葵、お兄ちゃんとだったら一緒に落ちて行ってもいいんだけど…」
「いや、俺が嫌なんだけど…。そんな落ち方したくないんだけど…」
「でも、妹のわがままを聞くのもお兄ちゃんの役目だよね?だから失礼して…」
無茶苦茶言ったあと、また夢葵が俺の腹部に顔を向け…
そして手を伸ばしてきた…
ほんとに、落ちていく気満々だ。
その表情は嬉々としていて、元から大きい目はさらに見開く。
頬は段々と赤く、そして気持ち悪くハァハァと呼吸が乱れていく。
その顔は妹のはずなのに、ただの獣にしか見えなかった。
だからそこへ…
チョップ…
「あたっ…」
獣から、そんな声が上がった。
そして…
「何するの!?せっかく、可愛い妹が勇気ふり絞ったのに…」
「ふり絞ってから言え、振り絞ってから…」
「振り絞ったよ。」
「ほう…、どれくらいだ?」
「それは…」
妹はそれだけ口にすると…
視線を左下、それから天井…
つまり上へと向ける。
そして…
「分かんない。」
「ほら、振り絞ってないじゃん。」
むー…
夢葵はそう口から音を出して、不満なのをアピールしてくる。
で…
「いけず…。奥手。草食。」
次は音じゃなくて言葉で不満をぶつけてきた。
しかも追加で…
「だからモテないんだよ。」
「夢葵さんお口が悪いですよ?ものすっごく…」
「本当のことだからいいの。」
グサッ…
いや確かに、俺がモテないのは事実…
だから、ちょっと…
ほんのちょっとだけ、心にずしーんと重くなった気がした。
「でも大丈夫だよ。夢葵がお兄ちゃん貰ってあげるから!」
えっ、優しい…
好…
「二人とも、いい加減降りてきなさーい!」
下から、母さんの声がした。
俺は時計を見る。
すると、そろそろ準備を始めないと学校に間に合わない時間だった。
「ちっ…。いいところだったのに…」
頭のおかしい妹が何か言っていた。
「夢葵、着替えるから部屋から出…」
「夫婦の間でそんなこと…」
「いいから早く出ろ!」
「むー、はいはい…」
嫌そうにそう言葉にして、夢葵は部屋の外に…
出るはずが、何故かドアの前で立ち止まった。
そして…
「でもやっぱり…」
「出ろ。」
「はーい。」
渋々…
そんな言葉が当てはまるように、ゆったりとした動きで部屋から出ていった。
夢葵が部屋を出ていったあと、俺は着替えていく。
まずは寝間着を脱ぐ…
必要はなかった。
すでに、寝間着のボタンが誰かさんに外されていたから…
少し思うところはある。
でも、俺は時短になったくらいの気持ちでいた。
だってもう、このやりとりに慣れしまっていから…
俺は高校の制服を身に纏っていく。
今は季節としては春…
もう少し言うと、春も終わりへと近づいているくらい…
服を剥がれたのとは関係なく、まだ少しだけ肌寒い季節…
だから俺は、長袖のYシャツに腕を通した。
青いネクタイを締め、それを確認するために鏡を見る。
いつもと変わらない、そこには平凡な顔が映っていた。
何度も見慣れた顔…
その中でも、今日の自分は少しイケてると思った…
そして着替える最中の俺の頭にずっとあったのは、今日見た夢のこと…
友人の燎斗と二人で何故かお酒を飲んでいた。
そしてそこで、朱沢が不幸になったという話…
それを知った俺は、どうしようもないほどの悲しい気持ちに襲われたていた…
気がする。
目が覚めてから、少しばかり時間がたった。
だから、夢で見た記憶が段々と風化しているのが分かる。
時間とともに、見た光景も感情も消えていく。
でもそれをどうにかする術を、俺は知らない。
だから流されるように、夢は忘却されていく。
いや、すでにかなりのことが記憶から消えていた。
でも…
そのときの俺は、何かを強く思った…
そのことだけは、記憶にあった。
着替え終えた俺は、部屋を出て居間にいた。
そこがこの家…
幸城家の食卓の場だから。
ソファに隣り合って座っている俺と夢葵…
そこに…
「二人ともおはよう。これ、朝ごはんね…」
そう言って、母さんは机の上に置いていく。
置かれたのは食パンと野菜…
食パンの上には、スクランブルエッグとこんがり焼けたベーコンが乗っていた。
いつも通りの、少しお手軽目なご飯だ。
「おはよ。父さんはもう仕事?」
「そうよ。今忙しいらしいのよ。」
「なるほどね。」
俺と母さんで、他愛もないキャッチボールをする。
そしてそこへ…
「ねぇお母さん、今日のお兄ちゃん、顔良くない?」
夢葵から、嬉しい言葉が飛び出た。
人からあんまり褒められることのない容姿…
でもやっぱり…
いやだからこそ、褒められると嬉しいものがある。
「そ、そうか?」
「そうだよ。お兄ちゃんすごくかっこいい。」
妹の言葉に、無意識に頬が上がってしまいそうになる。
気恥ずかしさから、俺は頑張って笑顔をこらえてポーカーフェイスを繕う。
でも、できているかどうかは不明だ。
そんな俺の表情を母さんはまじまじと見てきて…
「そー?いつも通りの気持ち悪い顔じゃないかしら?」
親とは思えない言葉が飛び出てきた。
つ、辛い…
上げて落とされた感覚だ。
というか、実際にそうだった。
「えー、そんなことないよ!」
「夢葵、あなた目が腐ってるんじゃないの?」
「腐ってないもん…」
何とも言い難い会話が目の前で広がっている。
「母さん…、俺の顔、どんな顔なの?」
さすがに聞いた。
というか、聞かないやつなんていないだろう。
俺の言葉に、母さんは視線を夢葵から俺に変えて…
「お父さんみたいな顔かしら…?」
「なんで結婚したのっ!?」
「な、なんで…。それは…」
気持ち悪いって言った後に、父さんみたいな顔…
それ、父さんの顔気持ち悪いって言ってるみたいな…
いや、言ってるのと同じじゃん。
そして…
「お金?」
「「ひどい…」」
母さんの言葉に、俺たち兄弟から悲しい声と言葉が出た。
「だってね、まったくお金がなくて苦しんでいた私…、私と夢葵を養ってやるって言ってくれたのよ。そんなの、惚れるに決まってるわ。」
「何に…?」
「お金によ。決まってるじゃない。」
あっけらかんと、母さんは言い放った。
と、父さん…
強く生きてくれ…
そして母さんの言葉、そこから分かったかもそれないが…
俺は、母さんと夢葵とは血がつながっていない、らしい…
らしいだ。
母さんとと父さんが再婚したのは、俺と夢葵がほんと小さいとき…
だからその時のことについて、俺はまったく記憶にない。
でも父さんの書斎には…
母さんとは違う、若くて少しだけきれいな女性の写真が置いてある。
そしてそのことについて、母さんは何も言わない。
俺も夢葵も、詳しいことは知らない。
でも写真と母さんの態度に、俺たちはそう言うことなんだと理解した。
いや、そう言うことなんだと思っている。
という感じだ。
そして…
「二人とも、そろそろ時間よ?」
「あー、うん。」
「はーい。」
そう返事して、俺たちは家を出た。
励みになるんで、良かったらブクマとかくれたら嬉しいです。
週3くらいの投稿を予定しています。
ただ、まだ未決定です。
とりあえず、応援していただけると幸いです。