表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
眠れる魔法と星の記憶  作者: 咲夜ソラ
第2章 失われた記憶の欠片たち
32/32

閑話 星々が紡ぐ夜のものがたり


むかしむかし――

まだ世界がいまより若く、

夜空が人のすぐそばにあったころのお話。


 


空には、いまよりもたくさんの星がありました。

星々はただ光るだけではなく、静かに世界を見守り、

人々の歩んだ道を覚えていたといわれています。


 


星は語りません。

けれど、すべてを見ていました。


喜びも、悲しみも、祈りも。

小さな命が生まれ、やがて土へ帰るその瞬間まで。


 


ある夜のこと。


ひとつの星が、ぽつりとつぶやきました。


 


――人の記憶は、あまりにも儚い。


 


それを聞いた別の星が、やさしく瞬きます。


 


――だからこそ、私たちが覚えていればよい。


 


星々は長いあいだ考えました。

世界のすべてを、どうすれば守れるのかと。


 


そしてやがて、ひとつの答えにたどり着きました。


 


――星の記憶を、地上へ託そう。


 


その夜、ひとすじの光が空を渡りました。

流れ星のように見えましたが、

それはただの光ではありません。


 


星々が紡いだ“記憶”でした。


 


光は長い旅をして、やがて静かな森へ落ちました。

深い森の奥、朝露がきらめく草原の真ん中に。


 


そこに、小さな命が眠っていました。


 


名もない少女です。


 


星の光は、そっとその胸へ降りていきました。

まるで帰る場所を知っていたかのように。


 


すると、不思議なことが起こりました。


 


少女の胸の奥で、

小さな光が、ぽうっと灯ったのです。


 


それは星のかけら。

星々が守り続けてきた、遠い記憶の種でした。


 


けれど星は知っていました。


 


この光は、祝福であると同時に、

大きな運命でもあるということを。


 


星の記憶を宿す者は、

いつか世界の夜に向き合わなければならない。


 


それでも星々は願いました。


 


――どうか、この光が

  闇ではなく、導きになりますように。


 


風が吹きました。


朝露が草を滑り、

小さな光が、静かに揺れます。


 


そして星々は、

もう一度だけ、少女へささやきました。


 


――いつか思い出すだろう。

  おまえが何者であるかを。


 


けれど、それはまだ先のお話。


 


今はただ、

星々が紡いだ、ひとつの夜のものがたり。


 


遠い空の上で、

星は今日も静かに瞬いています。


 


すべてを見守りながら。


 


そして――

その光を宿した少女が、目を覚ます日を待ちながら。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ