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真実の愛? 正気ですか殿下、相手は『男』ですよ!?

作者: 缶バッチのアホ

 初投稿です、好き勝手に書いてたら酷い事になってしまった(笑)

 追記、誤字脱字に記載漏れが……キチンと確認しないとダメですね(笑)

「リアステラッ! 貴様との婚約を今ここで破棄する! お前のような悪逆非道な女など視界に入るだけでも虫唾が走るからな! そして俺は今ここにクリスを生涯のパートナーとし婚約する事を発表するっ! クリスこそが真実の愛だと気付いたのだ!」


 力強く輝く金髪を(なび)かせて、赤く鋭い瞳が私を捉えます。

 ヴィクトリア王国第一王子、ウールニング・ヴィクトリア殿下が学園の卒業パーティーで私に婚約破棄を突き付けての糾弾をしてきたのです。

 パーティーのスケジュールに無い唐突で大事な話があると言い出して、周りの人達の視線をかき集めると私を親の仇が如く睨みつけた上で。


 そして私が言葉を失っている間に殿下が私の罪状やらクリスさんに不当な扱いを行った等々、苛立ちをぶつけるが如く読み上げますが、今の私には全く耳に入りませんでした。

 殿下の御言葉があまりの衝撃で、思考が上手く定まらず自身の事で精一杯だったからです。


 確かに真実の愛というのは生涯のパートナーを自由に選べない貴族にとって、大変魅力的である魔法の言葉だというのは良く分かります。なにせつまらない相手や横暴な者、時には自分の親と同じくらいの年齢の方が相手で涙を流したという話もありますからね。結婚相手に必死になるというもの分かります。


 ですが……今回私と殿下の婚約は王家側から打診された話なんですけどね? そもそも私がクリスさんに危害を加えるなど、()()()()()()()()というのに……。正直に言えば身分に関係無く、クリスさんとは仲良くなりたいとさえ思っているのですけどね?

 想いがきちんと伝わらないというのは、中々にままならないです。


「で、殿下? 僕と婚約って……」


 時間を置いた御陰で少しだけ落ち着いてきました。きっとまだ頭はパニックのままなのでしょうが、視界がある程度クリアになって余裕が出てきたので、今言葉を吐いた方に視線を向けました。

 殿下の腕に手を絡めて寄り添いパートナー宣言された人物ことクリス・ウラニズムは、淡いブロンドに殿下と同じ赤い瞳、どこか保護欲をそそる小動物を思わせるような小柄で大変愛らしい人物です。


 そんな彼は随分と複雑な表情をして殿下を見詰めていました。嬉しさ半分に困惑半分といったところでしょう……その心情は察するモノがあります。

 人慣れしていない者が注目を集めてしまった時の状態ですね。私も昔は注目される事に苦手意識を持っていましたので気持ちは分かります。何せパーティー内の視線を釘付けしているのですから。


「クリス……何も心配いらない。俺はお前を絶対に離さないっ!」

「……はいっ!」


 それにしてもなんと甘くて力強い台詞。殿下の悪い所でもあり良い所でもある少々強引な気質というのは、()()()()()に大変人気がありました。かくいう私もその点は好印象だったりします。


 しかし……しかしですね? 私は殿下に一つ尋ねなければならない事があります。恐らく周りの方々も()()をとっても気にしていらっしゃるのでしょうが……色々な意味で怖くて尋ねられないのでしょうね。


 正直な所私も口にするのには少しばかり勇気が必要で、気持ちの整理に少々時間が必要になってしまいました。

 深く深呼吸を挟んで……えぇ、大丈夫いけます。


「えっと殿下……ウールニング様。確認させて欲しいのですが……その御方は、あの? クリスさんは『男性』である事をご存知でしょうか?」

「僕を馬鹿にしているのかリアステラッ!? 当然知ってるともっ!」

「………………………………そ、そうですか」


 やっとの思いで絞り出した声は、掠れて虚しく会場に消えました。一体どうしろと?

 殿下がおかしくなってしまったのか、元々おかしかったのかは定かではありませんが……その言葉を挟むと周りの止まった時間が動き出して騒がしくなりました。


「……アイツら妙に仲が良いとは思ったが」

「……おい、どうするんだコレ?」

「愛の女神の経典では同性愛も認められてはいるが……王族が許される物なのか? ましてや栄えあるヴィクトリア王国の者が?」

「イヤ、それよりもリアステラ令嬢に何と声を掛ければ良い? 婚約者がコレというのは余りにも……」


 その中でも一際目立ったのが、殿下の取巻きでもあり友人でもある方々でした。

 殿下から距離を取って信じられないモノを見たと、事の成り行きをドン引きしながら心の吐露を思いっ切り口に出してますからね……まぁ、気持ちは分かります。


 宰相様の息子で頭の切れるクールな秀才のウィルフィン様、第一騎士団長様の次男で剣術の大会優勝の常連である気の良いシャルクス様、学園始まって以来の天才で飛び級となった少々気難しい神童のリヒテル様、他国からの留学生で大賢者の称号を持つ父の血を強く受け継いだ魔法の天才で面倒見の良いレジスタール様。


 学生の身でありながら既に様々な現場に足を運び、エリートの方々と肩を並べて活躍している皆様が……ただただ何も出来ず私を哀れと見て来ます。

 正直そういう同情よりも、この場をどうにかする手伝いをして欲しいですね。


(皆様殿下の友人なのでしょう? どうにかして下さいまし)


 殿下の取り巻きの方々に視線を向けても、こっちに投げるなという拒絶。皆様揃って顔を全力に横に振ってしまわれてしまいました。

 まぁ、私もそこに居れば同じように何も出来なかったでしょうが……それでも、もう少しなんとか出来なかったのかと思ってしまいますね。

 ねぇ皆様、そう思いませんか?


「……ウィル、君は相談役だろ?どうにかして来たらどうだ?」

「ふざけるなよ? 神童のリヒテル様がなんとかしてきたらどうだ?」

「……レジスタール、ここは君の魔法でなんとかならないか? コレは……ちょっとな?」

「無茶振りをしないでくれシャル、コレはもうどうにもならないさ。僕達の手に余る」


 続けて視線で問いかけると、皆様が厄介事の押し付け合いを始まりました。

 いやしかし……皆様は本当に仲が良いですね、大変眼福です。油断すると少々はしたない笑顔になってしまいそうです。

 もうなんと言いますが、口喧嘩してるのに肩が触れ合うぐらいに近いですし、文句を言ってもお互いの事を認め合っていて素晴らしい距離感ですね。思わず笑みが零れてしまいそうです。


「僕達は愛し合っているんだっ! 誰にも邪魔はさせないっ!」

「殿下……」

「殿下じゃないっ! 名前で呼べクリスっ!」

「はいっ、ウールニング様……」


 取巻きの方々へ熱量を込めて浸っていたら、殿下達の方も大分事態が動きましたね。しかしこれは……良い、非常に良いですね。出来ればティータイムの合間に食い入るように眺めていたいものです。

 一先ず公爵令嬢として最低限の行動はとったので、少しは気を抜いても問題無いでしょう。


 さてさて……二人の絡み合う視線、少し歩を前に出すだけで唇が届いてしまう程の距離、男同士の友情の垣根を越えた二人の立場、許されない禁断の愛。


 とても滾るものがっ……では、ありませんね。コレは眉を潜める事態です、えぇ。全くっ! 断じてっ! これっぽっちもっ! 決してっ! 良いぞもっとやれ! などと口にするハズがありません。そうですとも、私は公爵家の娘なのですから。

 殿方同士の絡みに劣情を感じるだなんて、ねぇ? おっと涎が垂れそうでした、危ない危ない。


 さて、二人が桃色の空間に浸っている間に改めてこの状況を改めて整理しましょう。

 勿論二人の愛の蜜月は当然目に焼き付けながらですが。





 まず我が公爵家は長年国に仕える重鎮であり、その中でも武家として活躍してきました。先月もダンジョンによる魔物のスタンビートを解決したばかり。そして私と殿下とは同い年であり幼い頃から顔を合わせていたので、王家からの打診もあり私達の婚約はあっさりと決まったのです。

 それから私は王妃の教育を順調にこなし、どこに出ても恥ずかしくない立派な腐女子(淑女)となりました。そうして学園を卒業後少しして結婚式を行う予定となっていたのです。


 それに対し殿下は父親の血を強く受け継いでなんでも器用にこなす優秀な方である反面、向こう見ずで俺様気質と少々危なっかしい一面がありました。

 特に一度決め付けては強引に話を持って行こうとしてトラブルの元になった事も。私が婚約者に決まった一番の理由が、殿下の手綱を握ってコントロールして欲しいからなのでしょうね。

 国王陛下も強引に婚約を勧めてきた点から察するモノがあります。


 そして殿下の生涯のパートナーに決まり全世界から祝福されこれが栄光の道を進み薔薇色の未来が約束されたいえむしろ初めからコレが運命だったと思わせるような素晴らしくも尊く儚く素敵で愛らしく美しくどこか欠けていてそれで完璧であるような……ではなく、肝心の彼の者について。


 クリス・ウラニズムは平民育ちでありながら貴族の血が混ざった少々難しい立場になります。

 クリスさんの父君は元々は男爵家の血に連なる者でありながら、平民であるメイドと駆け落ちして何処(いずこ)で幸せに暮らしていたそうです。


 しかし、不幸にも彼が六歳の頃に両親の病死により孤児院へ送られる事に。それから十三歳頃になって稀代の癒やしの担い手である事が発覚しました。

 なんでも塞ぎ込んでた彼を気に掛けていた恩師が病に倒れて、もう大切な人が消えて欲しくないという想いで力に目覚めで無我夢中に癒やしたそうです。


 その事実は当然噂となり()()を知ったクリスさんの祖父は慌てて彼を引き取ったそうです。何せその力は人類の敵とされる悪魔、それも公爵クラスが施した呪いさえもあっさり祓えてしまう程だったのですから。

 凡そ百年に一度の割合で産まれてくる聖女、神の祝福と加護を受けし者が祓うのが出来なかった呪いを、あっさり祓ったと言えばどれだけの存在価値か分かるというもの。

 加えて聖女よりも強力な癒しは部位欠損をなんなく再生して、死後まもなくであれば蘇生も可能と言うのだから存在価値は計り知れないでしょう。


 借金で首が回らなくなっていたクリスさんの祖父にとって渡りに船。そういった経緯の下に彼を金儲けの道具として扱いました。

 それは当然と言えば当然ですが、家族間の仲は決して良いとはいえませんでした。いえ、むしろ最悪と言っていいでしょう。

 家を捨てて逃げた息子の子供と、病に倒れた両親を見捨てておいて自身を道具として扱う男。お互いに許せず、されどクリスさんは暴力を振るわれ逆らうことが出来ずにいたそうです。


 最もソレは長続きしませんでした……。クリスさんの祖父を始めとした親族は()()()()()によって命を落としました。

 そして()()()()()()()()()()()()()()()()()、暫くは療養中で姿を見せる事はありませんでした。


 そして彼が再び顔を出すようになった頃には、既に殿下達と親密な関係となっておりました。また、国王陛下が後ろ盾となって彼の立場を保証。

 様々な便宜(べんぎ)をクリスさんに図ったようです。なにせ学院に中途編入して私や殿下達のクラスに来たぐらいですからね。歳は私達より二つ下、そして平民として育ち貴族の心得を知らず学力も足りなかったというのに……。


 きっと私が想像も付かない様々な暗躍と思惑が絡み合い、このような政治的処理がなされたのでしょう。

 まぁ、国益の為に彼を取り込むのは自然の流れですからね、それ自体は問題ありません。

 問題なのは、婚約者である私……いえ、今は元婚約者でしたね。私との時間が日毎に減っていった事です。

 まぁ……私もクリスさんの価値というのを理解してましたし、表向き病気や不幸な事故にとなっている裏側には様々な出来事あり、殿下達が一緒に居る大いなる理由があるというのも、仕方ないと理解していました。


 いえむしろ殿下に新たなカップリングが生まれた事に私をはじめこの想いを賛同してくれる方々との熱い想いの談議を考えれば良いぞもっとやれといやむしろ私なんて蔑ろにして私達に供給を図って下さるなんて最高ですし私としてはリヒ×殿下が至高でしたが今回は殿下×クリスの需要を検討して新規需要を見極めてる最中の方々の為に多々の濡れ場を抑えつつハッピーエンドを迎えるという妄想(情熱)を本に落とし込む作業を必死に……ゲフンゲフン。


 おっと、話がズレてしまいましたね。結果としてクリスさんは殿下とその取り巻きの方々と一緒に居る事が多くなりました。

 お陰様でお茶会から手紙のやり取り、逢瀬の機会も目に見えて減りましたからね。とても()()()()()()()

 しかし、そんな事態に眉を顰めたのが私の父でした。あの二人は特に少しばかり行き過ぎているんじゃないかと、私に行動を命じました。


 まぁ、このままどうか二人行き着く所まで……ではありません。国の重鎮の娘として殿下を諌める立場なのですし、私としては大変不本意で邪魔などしたくなかったですし、なんなら応援したい気持ちでいっぱいでしたが、家の立場上……公爵家の長女として仕方なく、本ッ当に仕方なく二人に嫌々苦言を述べる事になりました。


 男同士で恋人繋ぎは素晴らし……じゃなくて、やり過ぎではないか?

 公衆の面前で膝枕をするなんて最高っ……じゃなくて、おかしくないか?

 婚約者を放って二人で内緒のデートなんて分かってる……じゃなくて、酷くないですか?

 クリスさんの誕生日に殿下と二人っきりの旅行だなんて素敵すぎ……じゃなくて、婚約者である私は放置ですか?

 等々、私は御心のままに殿下達に御伝えしました。


 ですが、私の言葉は殿下に届かず心の距離も次第に広がりました。幸か不幸か殿下の取り巻きの方々とそこで随分と交流が増えて色々相談したり、趣味趣向を聞いて本の制作に良い影響を与えてくれましたんですけどね。


 そうして卒業式前という事で皆忙しくなり、時間に追われての今回の卒業パーティーで婚約破棄騒動。

 これがもしクリスさんが女性だったのならば、他の方々もある意味納得が出来たでしょう。シンデレラストーリーをなぞるように、平民から王妃へと至るというのは読み物としては大変面白いと思える展開でしょうからね。

 国民にも耳障りの良い御話を振りまく事が出来たでしょうから。


 ですが、その相手は『男』。稀代の癒しの担い手というヒロインの条件をこれでもかと持っているのに『男』。

 コレはコレで最高に面白っ……じゃなくて、あんまりです。婚約者だった私の立場がありません。


 私もウールニング様の事を少なからず想いを寄せてはいました。

 特に王族という立場と強引な性格がペンを捗らせて幾度となく濡れ場を掻き立て尚且その強気な性格を徹底的に屈服されてリヒテル様に狂愛されながらも御仕置きされる事に嬉しくもソレをプライドから素直に言葉に出来ずに上から目線で愛という名の命令形の言葉を投げ掛ける体裁でもっと虐めて欲しいという甘え下手で少々拙い求愛という一種のツンデレを混じえたどこか歪でされど完成された愛し合う二人というのが私の中で最高のシチュエーションで私の中で王道の一つであり……ではなくてですね。


 シャルクス様との共に背中を守りながら友情を育み芽生える愛と立場上許されない禁断の恋という王道やレジスタール様との愛の逃避行から外国へ足を運びひっそりとそれでいて激しく愛し合うシチュエーションだとかウィルフィン様が国王陛下に直訴して二人の仲を認めてもらう為に困難に立ち向かいながらお互いの愛を確かめ合うとかもうイッソ全員で愛し合い新たな国を立ち上げるとか……でもありませんっ。えぇ違いますともっ。

 私も次期王妃としてウールニング様を支えるべく努力をして、国の為にと粉骨砕骨してきたのですけどね?


「クリス……」

「ウールニング様……」

「……ッ!?」


 こ、これは……!? ま、先ずは落ち着きましょう。えぇ、れれれれ冷静な判断で今の状況を見極めましょう。えぇ、まずは深呼吸をして精神統一を行い凝視ですね……はい。

 

 殿下達二人が見つめ合って十数秒、二人の頬に淡い熱が灯り距離が次第に………………嗚呼、近付いてとうとう二人の唇が重なりましたよなんて晴らしく最高です脳が破壊されますなんと尊く儚く美しく淫らな世界の神秘に触れてしまいました私はもう死んでもいいと思える程の衝撃ですね間違った愛だからこそ禁じられているからこそ盛り上がる愛というのがあるんですこういった二人の絶妙な絡みからしか得られない栄養というのがあるんですよ幸せですコレだけでご飯三杯はイケますね殿下×クリスは解釈違いかもと少しでも思案していた私が恥ずかしい今ここに私が記念日を作り国の中心に記念碑と二人の像を建てて永久に歴史に残しましょうなんなら歴史の授業に必ず載せるべきです同性愛の聖地として崇め奉りましょう今すぐにやるべきです国王陛下に直訴しなければ殿下とクリスさんの愛の世界は国宝が霞むほど至高の存在ですそうです劇に物語に吟遊詩人を手配して世界に布教するのが私の生まれて来た意味なのでしょう愛の女神アテナ様貴女様に感謝致します。


 …………………………………………………………ふぅ。


 いけませんね、突然の過剰供給過多に少しばかり暴走してしまいました。そして殿下達の唇が離れると周りの女性から黄色い声が飛びました。

 えぇ、分かります。これは尊くて実に素晴らしいモノです。私程度の語彙力では言い表せない程至高の存在です。クリスさんが可能性の獣とは思っていましたが此処まで魅せてくれるとは思いませんでした。


 私も許されるなら魔道具でこの世界を永久保存して額縁に飾り、朝起きたら一番に拝観をし感謝をして昼には鑑賞しながら優雅な食事を、夜寝る前には身を清めてから二礼二拍手三礼を行い生きてる事に感謝してから、ベッドで意識が落ちるその時まで脳内再生をするぐらいに心が打たれました。


 公爵家としての立場が煩わしい……出来れば私もそちら側で事の成り行きを見守り、心に刻み付けたかったです。

 勿論今も全力で目を離さずあの世界を直視して心に刻み付けていますけどね。これ程の集中力は二十三回目のウィル×殿下本を作った時以来です。アレは会心の出来でしたからね。嗚呼……殿下×クリスというのは本当に素晴らしい。私は猛烈に感動しました。

 そうしている間に二人の手が互いの服に伸びて――


「………………っは!? イヤイヤ待て待てぇ!? 流石にソレ以上はダメだろ!?」


 ――良い所だというのに、何故そこでシャルクス様は止めるのでしょう!? シャルクス様のソレは悪魔の如き所業、余りにも御無体な。一体私に何の恨みが……じゃなかったですね。思わず舌打ちが出そうになりましたチクショウふざけんなクタバレ。

 おっと、淑女としてあるまじき態度ですね、反省しなければ。しかし今のはあまりにも社会的損失過ぎます。シャルクス様、本気で恨みますよ?


「……っは!? しまったな、ついいつもの流れで行為に走る所だった……」

「は、恥ずかしいですね……」


 ……………………ん? んん? ん~? 今小声でしたが殿下とクリスさんの恥ずかしがる声を聞き取りました。今確かに聞き取りました。つまりシャルクス様が止めてなければ私の知らない殿下達の約束の地(カナン)が見られたという事ですよね?


「っち……」 


 何故シャルクス様は止めるのを後一時間待ってくれなかったのでしょうかね?

 神が遣わした人類への素晴らしい世界()が始まる所だったというのにどうして……。時に人には試練が訪れると言いますが、こんな悲劇など私は望んでいません。そういうのは次回作を何にするか厳選して頑張って十択にまで収めた時ぐらいにして欲しいものです。運命は本当に過酷ですね。

 そういえば、あの時は沢山のファンレターから分けて貰った熱量が暴走して、人生で三番目ぐらいに悩み苦渋の決断の末に……仮病も使い学校を休んで死ぬ気で十冊の本を作り切ったんでしたね、懐かしい。お父様の追及を逃れるのが大変でした。


「クリス……続きまた今度な?」

「……はいっ、ウールニング様」


 ………………オヤイマナント。

 ………………いますばらしいおはなしをしませんでした?

 ………………殿下達はこの後に愛を確かめ合うという事でしょうか!?


 今の私は命を燃やし尽くが如く集中して殿下達の一挙一動を見逃さずにいるのですが、それでなお囁くような小さい声を聞き取る事は出来ませんでした……けと、唇の動きから一字一句違わずに二人の熱っぽくて妙に(なま)めかしい睦言(むつごと)を読み取ることが出来ました。

 えぇ、これはいけません。とてもいけませんね。後日大事な予定が出来ました。コレは絶対に外せないですね。


 そういえば思い出した事があるのですが、クリスさんが殿下の部屋に泊まった日の深夜に、私は変装して王宮に忍び込んだ事があったのですが……クリスさんの護衛に見つかって死闘を繰り広げる羽目になったんですよね。

 お陰でアバラを三本ヤラれて逃げるのに苦労しました。替わりに相手の両腕両足を折ってやりましたけど……。


 そんなつまらない邪魔が入ったせいで、窓から覗いてもカーテンもあってか大して得られる情報が無く、有り余る妄想で生命の勉強(意味深)や食べさせ合うあーん(意味深)が起きてるなど想像していましたが……まさかそれ以上の出来事が本当に起きていたとは驚きです。


 ……………………ふぅ。


 いけませんね、衝撃のあまりのキャパ越えで腹部が熱くなり意識がブラックアウトしかけてしまいました、不覚です。

 やはりあの時もっと強引に潜入して、もっと詳しくねっとりナニがあったのか直接見るべきでした。嗚呼……その状況を見る事が叶わなかったのは非常に残念ですね。

 すると再度、舌打ちが自然とうっかり零れてしまいました。淑女としてあるまじき行為? コレばかりは仕方ありません、本当に仕方ありませんよね?


「……今リアステラ令嬢から舌打ちが聞こえなかったかい?」

「気の所為じゃないかい? あの歩く品行方正で清廉潔白、誰もが憧れる非の打ち所がない窈窕淑女(ようちょうしゅくじょ)であるリアステラ令嬢か舌打ちなど有り得ないだろう?」


「……」


 いけませんね、二度目の舌打ちがリヒテル様に聞かれてしまいました。しかし、我ながら次期王妃として受けた完璧たる教育の賜物、鋼鉄の仮面を被ればこの程度欺く事など容易いものです。

 公爵令嬢フェイスは無敵で最強なんです。


 なのでレジスタール様も私がそんな事するハズがないだろうと諌めてくれました。えぇ、今の私は冤罪により婚約破棄を受けた悲運の立場。そのような事などありませんとも……だから私の専属メイドから突き刺すような視線を私に向けてくるのは気の所為ですね。

 いつだったか、彼女に自分の婚約者をナマモノとして扱う勇気があるのが凄いと褒められた事がありますが、今は関係無いでしょう。えぇ、無関係のハズです。


「ウールニングっ! 流石に今回のはダメだろ!? リアステラ嬢が泣いてんぞ!?」


 先程から殿下と言い争っているシャルクス様のその言葉に、私は初めて自分が泣いている事に気付きました。

 殿下達の接吻(先程の神秘の芸術)に触れたあまり感動して涙が零れていたようですが……シャルクス様達は私が悲しんでいると勘違いしていますね、コレは訂正しない方が良いでしょう。私が騙したわけではありませんから。


「シャルクス……コレは真実の愛なんだ。愛に障害は付きものだろう?」


 おっと……殿下はまたそういって過剰供給をなさる。私を尊死させる腹積もりでしょうか?

 実は今感情を揺さぶられ続けて精神に余裕がなく、本気で意識が飛びそうなんですよね。ですが……全てを見終えるまでは気絶など出来るはずがありません。そうなったら死んでも死に切れません。


「そうじゃねぇっ!? 百万歩譲ってお前らがそういう関係だってのは分かったが、こんな場所で行為に及ぶなっ!」


 ……いけませんね。シャルクス様が横恋慕(よこれんぼ)されて寝取られても諦めきれずに殿下に縋る構図に見えてしまいます。今日はファンサービスデーというやつでしょうか?

 次の新作の本の予定が決まりましたね、帰ったら早速ペンを手に取らなければいけません。鉄は熱いうちに打てと言いますからね。


 ですが、オスの本能のままに諦めが付くぐらいにガッチリ寝取られにするか、変わらない美しさから悩み抜いて元鞘とすべきか非常に悩ましい所。

 帰ったら悲しい気持ちでどちらかを選ばないといけないとは……いえ、むしろ両方描くべきですね。神もそう言っておいでです。寝る時間が減ってしまいますが片方選ぶ事に比べればそんなもの些末。


 帰宅した時の楽しみが出来ました。今ならショックのあまり部屋に引き籠もって食事も喉を通さないという体裁で本職に専念できます。

 勿論今も全力で楽しんでますけどね、現実と妄想の間で情報の渋滞が起きてキャパシティーオーバーですよコレは。


 いやしかし大変嬉しい悲鳴なのですが、私はそろそろ舌を嚙み千切ってしまいそうなんですよね。体の表面上に傷を作る訳にはいかないので、内側である舌を傷付け痛みで意識を保っているのですが……身体が持ちません。既に気絶している鉄の教えを守る同士(気心の知れた令嬢)もちらほらいますし。


「……リア」


 そうして殿下とシャルクス様が言い争っていると、私の愛称を呼ぶ声が聞こえました。その言葉に視線を向けると親友である伯爵令嬢のティファナ・レフィールと目が合いましたね。私の悲運を同情や憐憫……ではなく叱責の訴えを向けていますね、コレは。

 こんな時まで全力で趣味に走るなと。多分口の中が血でいっぱいなのも気付いているのでしょうね。


 彼女は私の趣味の理解者でもあります。なにせ彼女をこの沼に引きずり込んで、わからせたのは私ですからね。そんなのダメよと何度も叫びながらも食い入るように本を凝視して、彼女の性癖を歪ませたのは大変心躍るような時間でした。

 やはり布教というのは趣味を楽しむ上で最高に楽しい時間の一つですね。


「……ティファナ、私なら大丈夫です」


 私は興奮してボロを出すような失態はしないと静かに、それで力強く答えました。因みに先程の舌打ちはノーカンです。

 そしてティファナに私の事など気に掛けず殿下達の蜜月を楽しむ事に集中して大丈夫てすよと伝えます。彼女も内心では視線を釘付けにしたいでしょうからね。


 そうすると彼女の頬がピクリと少し動きました、嬉しさ半分と羞恥半分といった所でしょう。好きなモノを我慢するなんて身体に毒ですからね、自分に素直になって良いのですよティファナ。

 いやはや彼女を沼に引き釣り込んだ甲斐がありました、心の中で思わずガッツポーズです。しかし、周りの殆どの方は私が健気に虚勢を張っていると勘違いなさっているのでしょうね……でも私は騙してないので悪くないのです。


 いやはや、そんな事よりも今日は本当に素晴らしい日です。今までは殿下達に迷惑が掛からないようにと二次創作で留めていましたが、今日からは晴れて殿下×クリスが公式となりました。

 最近ではレジ×シャルの純愛過激物がトレンディーでしたが、新しい時代の風が吹いてますね。素晴らしい()()()()です、心が洗われますね。

 お陰で私が秘密裏に用意した会員制限定の書店以外にも本を(おろ)す事が可能です。多数の需要があるにも関わらず断り続けてたので本当に申し訳無かったのですよ。


 それと当然殿下×クリス以外のカップリング本も続けますけどね?

 そうしている間にいつの間にか教員達が入ってきました。どうやら生徒がこの事態の異常性を知らせて助けを求めたのでしょう。殿下とクリスさんは別々に教師の方々に連れていかれたのを見て、私が意識を保てたのはここまででした。

 私頑張りました。







 それから後日の話です。

 国はどうにかして今回の件をどうにかして収拾しようと試みたようですが、余りにもインパクトが強すぎました。大多数の貴族の子息息女の前で起きた出来事ですからね。人の口に戸は立てられぬとは正にこの事でしょう。

 私が隠れて殿下×クリスの布教に全力で専念した事に関しては、少なからず影響しているような気がしないでもありませんが、きっと気の所為ですね。


 それと殿下とクリスさんがあの日以降も人目を(はばか)らず過ごしていた事が後押しとなりました。

 その事に国王陛下や王妃は本気で頭を抱えて二週間程寝込んだそうです。自慢の息子があまりにも酷い醜聞を作ったからか、予想の斜め上に捻じれてハジケ飛んた愚行を受け止めきれなかったからか……もしくは両方か。


 そして現実逃避を重ねに重ねて逃げていた国王陛下は、とうとう二人を謁見の間に呼び出したそうですが……二人へ沙汰を言い渡す際に血を吐いたそうです。ストレスで胃をやられてしまったそうで、ご愁傷さまでした。

 そして稀代の癒しの担い手であるクリスさんの手綱を握れるのは殿下だけ。そして殿下に何かあればクリスさんは平気で自害して彼を失う事になりかねず……。


 その事実から二人を大々的に裁く事が出来ず、結果として殿下を王族から除籍。ただし二人の仲を認め便宜を図る事を条件に、クリスさんの癒しの力を国が自由に使える事となりました。

 国としても大きな利益の損失にならず、私も殿下×クリスが公式になった事からとても良い結末となりましたね。まぁ、一部の方々は大変ですけど。


 それからですが、普通なら信じられない事なのでしょう……。国王陛下がまさかの我が家に足を運び、私と私の両親に跪ついて頭を地に付けて謝罪しました。本当に済まなかったという誠心誠意の上で。

 そして勿論と言いますが、その際に殿下が私に突き付けて来た罪状は、冤罪だと陛下自ら証明して社交界に広めてくれたそうです。

 まぁ、私は一切気にしてなかったんですけどね。あの状況で殿下の御言葉を信じる愚者は居なかったという理由もありますし、過剰なまでの幸福感でむしろ忘れてたぐらいですから。


 まぁ、そんな事よりも問題だったのは国王陛下ですね。御歳は現在四十丁度、ですが二月程前に見た時に比べて更に三十は老けて見えました。

 殿下と同じく力強い綺麗な金髪は弱々しい白髪に、覇気も無くもう今にでも死んでしまいそうな様子だったのが印象的でしたね。なので我が家で最大限労わってあげました。


 その後国王陛下は退任して、第二王子――第一王子になったアルフェン様に王位を譲ったそうです。因みに私の婚約もそのままアルフェン様へとスライドされました。

 一応(?)ですが、私には瑕疵が付いてしましましたからね。結婚相手を探すのも少々大変でしょうし、何より立場としてが問題でした。


 政治的な理由により我が家は忠臣として、国に仕えているとアピールする必要があったのです。国の大スキャンダルですからね……。

 その代わりに国は私に最大限便宜を図ってくれると約束してくれました。えぇ、なのであの日を『隣人を愛する記念日』として貰いました。それと――


「お久し振りですクリスさん、今回のも自信作でして……是非とも見てもらいたいんです」

「本当ですか!? 楽しみですリアさんっ!」


 ――殿下に内緒でクリスさんと秘密裏に密会する機会を、定期的に作ってもらいました。

 彼も初めは難色を示しましたが、今まで私が制作した二百七十四冊の本を持って同性愛や殿下×クリスの愛の育みについてほんの十四時間程熱弁した所で、敵ではないと理解を得られました……少々引いた顔をされたのには納得がいきませんが。

 解釈違いで揉める事もありますが、今や彼も立派な同士。今日も親睦を深めるべく足を運びました。


 いやはや布教というのは大変大事ですよね? えぇ、なので普段二人がどのように愛を育んでるのかを徹底的に聞き出し、クリスさんの許可を貰って国に便宜を図ってもらい天井裏や壁からゲイ術を鑑賞し部屋に隠しておいた魔道具で撮影させて貰ったりして、本作りに大変貢献してもらいました。


 勿論最初は当然のように断られましたけどね? 私の誠心誠意の説得と、熱意ある説得に優しさ溢れる説得により、首を縦に振って頂けました。

 大人の玩具、テクニック集、穴場のデートスポット、相談できる同性愛の同士を紹介したのが勝因ですね。


 いやしかし、良く見える場所で二人の愛の行為を見ていると思ったより小さいとか意外と毛深かったり、リアル喘ぎ声は汚いという新たな発見もしましたが、やはり裸体と股間の開示請求をして良かったです。

 えぇ、ただ感動して何度声を押し殺し続けたり悶えて身動(みじろ)ぎを死ぬ思いで耐えきったり、情報量のあまり気絶しかけたりして私本当に頑張りました。


 その分私が作った本を彼に差し上げています。自分達が異端だというのを理解しているからこそ、こういった本で自分達の愛が形になって認められるという事にクリスさんは大変喜ばれました。


 それから彼には私に届いたファンレターを幾つもお見せしましたね。

 ファンから素晴らしいとか最高の出来だと、手紙を何通も頂けましたから、クリスも大変喜んでくれました。殿下×クリスはやはり素晴らしいです。

 さぁっ、今日も帰ったらペンを取りましょう!



 リアステラ――本作の主人公で最大の実力派問題児。企画初期段階ではそっち系の存在は知っている程度だったんです……それが執筆が進む度に嗜みから腐女子で最後は、取り返しの付かないぐらいに腐り果てましたw

 タイトルも初期は『後は勝手にやってくれ』とかだったのに……予定はしょせん予定ですね。

 

 ウールニング――ドイツ語で男性同性愛者を意味します。

 殿下の名前をどうするか悩んでたんですけどね~……本作を執筆するにあたって、ゲイ用語を眺めてたら見掛けてコレだと即決で決めました(笑)

 作中2〜3番目にハッピーエンドを迎えた人物。1番は言わずもがな。


 クリス――吊り橋効果か何かで殿下へ恋に堕ちてしまった人。誰かさんと誰かの母親が多額の寄付金と共に、同性愛の教えを孤児院に布教したのがきっと原因。

 因みにウラニズムはドイツで医学的に男性同性愛者を意味します。殿下とクリスは相性ピッタリですねw


 国王――多分作中一番の被害者。


 ティファナ――リアステラの魔の手により沼に落ちた被害者。苦言を述べても本はしっかり収集。


 殿下の取巻き達――きっと何も裏話を知らない被害者達。被害者ばっかりですね(笑)


 クリスの護衛の人――腐ったヤベー奴の被害者。


 本――同人誌になります。昔の人もきっとナマモノしてたんだろうなーと思ってます。



 正直言うと一万字程度に収めたかったのに、書きたい事が増えて余裕でオーバーしました(笑)

 本当は主人公の母親の貴腐人との絡みとか、専属使用人がリアステラ個人に大金を積まれて協力してる過去の部分とか、親友のティファナを沼に引き込む部分をもう少し絡みとか入れたかったですね。

 

 他には国王陛下がリアステラの本性を知って発狂するとか、昔は注目されるのは苦手だったリアがBLを知ってどう変わったとかのシーン、孤児院の女の子達を沼に引き摺り……英才教育するとか色々入れたかったんですよね……。



 因みにですが、モデルにした国はイギリスなのですが……イギリスに関わらず昔は大半の国では同性愛は犯罪として扱われてました。

 ソドミー(不自然な性行動)というという事で問題視されていて、場所によっては極刑も適応されていたそうです。宗教とかが絡むと色々あるんですよ……(遠い目

 そしてイギリスのヴィクトリア朝時代でも勿論犯罪でした……が、女性による同性愛は犯罪じゃなかったんですよね(笑)

 それからイギリスでは1958年に同性愛法改革協会が創設されて色々変わっていったそうです。

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