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転生魔王は勇者ああああを子育て中  作者: リリリリリム
はじめてのおつかい編
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22.末っ子のおねだりには弱い

 シアが旅立ちまだ一日しか経っていないが、城内は変わらないように見えつつもやはりどこか寂寥感が漂っている。

 ここの皆にとってそれこそ赤ん坊の頃から見守っていた存在のため、そのシアがいないことに寂しさは拭えない。



 アーキスとマーシェ二人がシアの不在に気づいた後、他の三人も合わせてシアが旅立ったことを伝えに行くことになった。もしもの時は俺からシアの考えを伝えようと思い、俺もファルルに着いて行った。



 アーキスとマーシェはすでに納得済みで、後は三人に説明しなくてはならない。

 シアが旅に出たことを説明している時は大人しく、シアが願ったのならという雰囲気だったのだが、行き先が人族の国、自分たちの故郷だと知ったときにシアを連れ戻すのだとごね始めた。


 彼らにはあの国にいい思い出がなく、シアがもし自分たちと同じ目に会ったらと思うと気が気でなかったのだろう。


 シアは黒持ちではないとは言え魔界で育った子だ。黒持ちよりもなお忌み嫌う魔族との繋がりが濃い。

 もしバレたら迫害ならまだましで、真っ先に処刑対象になることだろう。



 焦る三人に俺はシアの考えを伝えた。シアが一人で行くことを決めたのも、三人がシアを連れ戻したいのも、互いを思い合ってのことだ。だからこそ俺はシアの考えを伝えたのだ。


 結局は不満をあらわにしながらも三人は末っ子の成長のため折れた。

 寂しくも末っ子の成長を喜ばない者はいないのだ。



 そして末っ子といえばもう一人の末っ子が帰って来る予定なのだ。こちらもしばらく会っていない分成長を見るのが楽しみである。



「カルペッタからレナードがこちらに着く予定日は明後日だったな」



 ファルルの三番目の子、アーキスやマーシェと違いこの子はこの城から出て学ぶことを選び、7歳の頃と早くに離れてしまったため二人と比べると正直そこまで知っている仲ではない。

 今はどのように成長しているのか、シアと同い年で八年間の歳月が経った今では記憶に残る姿形とは大きく変わっているはずだ。



「会うのが楽しみだな」


「それは、僕に会うのを楽しみにしていただきどうもありがとうございます。


 ゼノ様お久しぶりです。ただいま戻りました」



 執務室に聞き馴染みのない声がした。声の主の方を見ると記憶の中のレナードの姿から成長した顔立ちの少年がいた。

 連日ハミルトとカインに鍛えてもらって立派な体格に育ったマーシェとは違い、線は細くまだまだ顔にも幼さが残っている。それでも小さい頃よりは大きく成長した姿を見ると離れていた分の月日を感じた。



「レナードか? 帰って来るのが早かったな」


「予定していた到着日は公共機関を利用しての日程でしたが、長旅が面倒になってきたのでこちらの転移魔方陣のシステムにアクセスして遠隔地より繋げて戻ってきました。


 ハッキングする旨は事前にチェスターさんにお伝えしていたので、突如現れて排除される心配もなかったです。


 チェスターさんもありがとうございます。

 後で城内の転送システムの防犯強化と不具合の修正をして、最新式にアップデートをしておきます」


「それは大変ありがたいご提案です。ぜひよろしくお願いします」


「はい。任せてください」



 レナードは学者などを多く輩出しているカルペッタのリンカーウッド学院に飛び級で入学し、二年で卒業した後は専門院へ入り研究をしていた。そこでは魔法回路電子システムを専攻に学んでいたようで、その分野ではちょっとした期待の若手として有名になっているとのことだ。


 俺は正直言ってその分野に詳しくはないがリンカーウッド学院は魔界でも最高峰の伝統ある名門校だ。エイブラムもそこを一回生で首席卒業している。その学院に飛び級で入り、専門院にまで行っているのは十分にすごいことだ。

 他の子たちは実践的な戦いでの強さを求めたが、分野は違えどこの子もまた自分の得意な分野で成長した。誇らしいことである。



「そういえばシアと連絡を取ったのですが」


「ん? そうなのか」


「シアとの通信時に微量な魔電波の発信を感じたので、シアに聞いてみたところ心当たりがないとのことでした。


 何かシアにゼノ様がこっそり持たせているというのなら心配はないのですが、他からの影響でしたら一度手持ちのものを調べてみるように言ってみます」



 レナードが言っているのは間違いなくアーキスが持たせた物のことだ。一応俺も把握はしていて害はないのでそのままにしておいたのだが、シアに伝えた方がいいのだろうか。


 うーむ、と俺が悩んでいるとレナードが確認する。


「ゼノ様が即答しないと言うことはゼノ様は知っているんですね」


「まあ、そうなのだが」



 そこで俺は事情を話すことにした。アーキスが仕込んだ物で害はないが過保護すぎる設定にしており、シアが自立することを望んでいるのであればこれはシアからすると不要のものであるかもしれないということだ。


 俺はアーキスとシアどちらの気持ちも分かる。シアが心配ではあるが、自分も旅に出て成長した経験から、過干渉過ぎるのも成長を妨げるのではないかという思いがある。



「それなら僕がシアに聞いてシアが希望する設定にしておきましょうか?」


「なるほど、それだな」


 シア自身が設定するのなら妨げにはならないし、アーキスも本人が望んだことなら渋々でも納得するだろう。


「じゃあ、ちょっとアーキスから拝借してきます」


「素直に渡してもらえるのか?」


「僕は弟です」


「まあ、そうだが」


「しかも久しぶりに会う可愛い弟です」


「うん? まあ、確かにそうだが」


「アーキスのことは分析済。可愛くおねだりすれば一発ですよ。


 先輩だって僕のおねだりには弱かったんですから」



 無表情でそう言ってのける様子を見るに、なかなかしたたかに育ったようだ。クセの強い子がまた一人城内に増えたことで、シア不在で沈んでいた城内もしばらくは久しぶりに会う末っ子の歓迎で賑やかになるだろう。これからしばらくはまた騒がしくなりそうだ。



「まあ久しぶりに会うのだろうし、アーキスとマーシェも離れていた分目一杯構いたがるだろうな。


 二人と仲良くしている人族の子三人もいる。歳も近いからその子たちとも仲良くしてやってくれ」


「性格が合えばになりますが、まずは会ってみます。

 シアから話は聞いていますが直接会ったことはまだないので」



 魔族の中でも保守派と呼ばれる年長者たちを中心とした連中は種族意識が高く、各種族が交わることを嫌う。人族が魔族を嫌うように彼ら人族を下等な生き物だと嫌っているのだ。長く生きていて、過去の人族が魔族へ行ってきた行為を覚えているからこその嫌悪であるが、歴史に詳しい者もまた同様に保守派が多い。


 それこそリンカーウッド学院には歴史を詳しく知る者が多いため、この学院の関係者や生徒のほとんどが保守派なのだ。


 学院に通っていたレナードはその考えに染まっていないようで一安心だ。だがレナード自身の好き嫌いがはっきりしてそうなので後は相性が合うことを願うばかりである。

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