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転生魔王は勇者ああああを子育て中  作者: リリリリリム
はじめてのおつかい編
21/34

21.バレなければ大丈夫

 とうとうシアの旅立ちの日がやって来た。



 朝早くということでほとんどの者はまだ寝静まっている時間だ。


 玄関ホールにはシアを見送りに来た者たちが集まった。見送りには俺とチェスターとファルルがいる。



「父様、ファルル、見送りに来てくれてありがとうございます。


 今日旅立つこと父様から聞いたのでしょうか? チェスターさんも来てくれてありがとうございます」


「シア様もお気をつけて。無事を祈っております。


 旅先でも何かありましたらいつでもご連絡を」


「それは頼もしいですね!


 何かあった時は連絡します!」



 俺はチェスターには伝えていない。俺が見送りに玄関のホールに来て、気づいたら横に居た。


 こういう時、チェスターが城内での出来事をどこまで把握しているのか、たまに恐ろしくなる。

 自室で気が抜けている時のこととか知られていたら恥ずかしいのだが。



「それでは行って来ますね!


 ファルルは後のこと頼みます!」



 シアは元気よく手を振り旅立って行った。



 チェスターはシアの姿が見えなくなってすぐ、先に執務室へと行っていることを伝えて去った。

 名残惜しく俺とファルルが玄関ホールに残る。



 旅立つまでの時間はあっという間に過ぎてしまった。


 シアはとうとう過保護なアーキスやテッドたちを出し抜き、今日まで旅に出ることをバレずに成功させたのだ。


 もちろんすぐに追いかけて来ないようにと早朝に立つこと決め、ファルルの協力を得て、昼くらいまではバレないように立ち回ってくれるということになっているらしい。そして、旅に出るということをシアの不在に気がついた頃に伝える手筈となっている。


 絶対にあの五人の不満がぶつけられるであろう立ち位置に、よく引き受けたものだ。



「ファルル、シアの手助けに礼をいう」


「いいえ、お礼を言われるほどのことではありません。


 あの子たちにも、シア様にとっても今回は成長できるいい機会です。あまりにもべったりすぎたのでシア様離れが必要だと思っていましたから」


「まあ、それにしては荒療治すぎると思うが。


 気づいた時はきっと騒がしくなるだろうな」


「少しくらいのことじゃあの子たち言うこと聞きませんもの」



 にこにこしながら言うファルルはやはり頼もしく思う。


 これが三児の母の貫禄か。



「数日後に末っ子も戻って来るのだろう?


 久しぶりに会うから今度はそっちに付きっきりになるかもな」


「いえ、あの子は引っ付かれることに対してシア様のように優しく受け入れてはくれません。


 きっと、鬱陶しいと振り切るでしょうね」



 シアと同い年のファルルの末の子は魔界の白の都市と呼ばれるカルペッタに行っていた。


 早熟な子で、7歳くらいの時に学びたいことがあるとのことで自らカルペッタに行くことを望み、そのまま向こうにある学校に飛び級で留学して行った。

 それからはずっと向こうにいて、ようやく帰ってくるのだ。



「ちょうどシアとはすれ違ってしまうな」


「そうですね。


 ですが私よりもシア様との方が多く連絡のやり取りはしているようなので、仲はけっこう良いみたいです。


 基本的にあまりべたべたする関係を好む子ではないので、直接会わなくても平気なのではないでしょうか」


「そんなものか。俺はすでに別れが寂しくて仕方ないがな」


「意外と親の方が子離れできないものですよ」



 確かにその通りである。


 甘えん坊なシアだったが旅に出ることを決め、朝もしっかりとした顔つきでここを離れることを引きずることなく旅立った。



 言われてみれば俺も旅立つ時に老夫婦と離れることを引きずることはなかったな。



 俺が侘しさに浸っていると、

その暗い雰囲気をぶち壊すような大きな声が玄関ホールに響いた。



「母さん!!! シアがいない!!」


 飛び込んで来たのはマーシェだ。


「あら、バレるのが早かったわ。野生の勘か気づくのが早いのね」


 騒ぐマーシェに動じることなくファルルはあっさりとした反応だ。やはり母というものは頼もしい。


「母さん何か知ってんだな!?」


「ええ知ってるわ。でも、知りたかったらまず落ち着きなさい。


 まだみんな寝ている時間ですよ。騒がしくしない!」


「落ち着いてられるか!」



「マーシェ、冷静に。母さんが知ってて焦ってないってことはシアは無事ってこと」


 アーキスもやって来て、だんだん熱くなってきたマーシェを落ち着かせようとする。こちらはマーシェのように焦った様子はなく、冷静に分析していた。



「ゼノ様おはようございます。


 ゼノ様がここにいてシアがいないということは、シアはどこかに出かけたんでしょうか?」


 ちらりと伝えるべきかファルルと目配せをする。

 どうせシア不在のことはすでにバレてしまっているし伝える時間が早まるだけで、元々伝える予定だったのだ。ファルルも頷いたことだし今伝えることにした。



「シアは旅に出た。俺も了承済みだ」


「急いで追いかけないと!」


 それを聞いたマーシェが弾かれたようにドアへと駆け出す。その姿を見て俺は静かに手を上げ、魔法で扉が開かないよう封じた。


 だが、その必要はなかったようだ。


 ファルルが静かにマーシェの名を呼んだ。



「いい加減にしなさい。あなたはいつまでシア様に甘えているの?


 シア様は成長のための一歩を踏み出しました。それをあなたはぐだぐだとみっともない。

 シア様が黙って出かけたということがどういうことかよく考えて受け止めなさい」



 ファルルの嗜める言葉にマーシェは顔を歪める。少しは落ち着いたようだが、やはり納得ができないと言った様子だ。


 アーキスが追ってマーシェを嗜める。


「マーシェ、そういうこと。


 ゼノ様がシアを見送ったというのに、それを無視して追いかけるのはゼノ様とシアの両者を蔑ろにする行為だよ」


「はぁ......分かったよ。アーキスはほんと物分かりがいいんだからさ。


 母さんとアーキスの言いたいことなんとなく分かったけど、やっぱり俺はモヤモヤする」


「そんなに心配なら安心して。


 実はシアがどこかに出かけるのは何となく予想していたから、バレないように鞄にこっそり仕掛けておいた」



 ス、とアーキスが懐から取り出したのは持ち主の安否が分かる防犯グッズだ。主に子持ちの親に人気の防犯アイテムである。

 持ち主に危険が迫ると設定した危険度合いでライトの色が三段階に変化する。さらには簡易召喚陣が内蔵されているため、危険が迫った時に一回のみの使用で一人だけなら持ち主の元に行くことができる優れものだ。



「ちなみに危険度はシアに話しかけるでレベル1、触るとレベル2、攻撃を受けたときでレベル3にしてある」


「それだとほとんど何もできないでしょう。せめて攻撃を受けたときをレベル1にしなさい」



 アーキスは意外とすんなり受け入れたと思ったのだが、やはり過保護なのには変わらなかったか。


 抜け目ない分、マーシェより手強い相手である。

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