見えないモノ⑦
すごく久しぶりの執筆です
今年もよろしくお願いします
ちょっと待ってほしい。
どうして幼馴染で、昔からよく一緒に遊んでて、学校も一緒で、スポーツも出来て、モテまくってた龍也が…。
どうしたら私に対して跪いて、私のことを「凰華」ではなく、ここで出会った人たちと同じ「姫様」と呼ぶのだろうか。
なぜ自分のことを家臣だというのか…。
「ねぇ…ほんとにどうしちゃったのよ…。おかしいじゃん。」
「…。」
「私が姫様なんてものじゃないことは知っているでしょ?」
「…いえ、あなた様は間違いなく‘姫様’なのです…どうか、どうかお許しくださいませ…。」
さらに額を畳に近づけてしまう龍也。
ショックというよりは、認めなくてはならなくなってしまった事への絶望が私の中に広がった。
【ここは私の知っている時代ではない】
仮説でしかなかった《タイムスリップ》という非現実的なトラブルに巻き込まれていることを、現実として受け入れなければならない事を突きつけられている。
そしてたぶん、龍也は、【初めから知っていた】可能性がある。
動揺していないこと、妙に馴染んでいること、そしてなによりも…
ここに来て初めて会った人たちと同じ呼び方をすることが決定的だ。
私は今まで龍也に対して感じたことのない‘距離’を感じていた。
私と龍也って、こんなに遠い存在だったっけ…。
私…ここでは、1人なのかな…。
1人で、これからどうしたらいいのか…わからない…。
だれを
しんじたら
いいの?
1人ぼっちになった事を自覚した瞬間、頬を伝う雫が1つまた1つと増えていった。
ほろほろと止めどなく流れ続ける雫は誰にも止めることは出来ない。
本人ですら、どうすれば止まるのか分からない。
やがて頬から落ちた雫は、滴り落ちて畳にしみ込んでいった。
ポタ、ポタ、とわずかに音を立てて。
瞬きも忘れて、声を出すこともなく、ただひたすた小さくなっている幼馴染の背中を眺めながら、ポタポタという音だけが部屋の中で聞こえてくる。
こんなはずではなかった…。
今朝までは普通に生活をしていたのに。
どうしてこんな事になってしまったんだろう。
なにを間違えたのか。
朝はちゃんと起きて朝食も食べて電車にも間に合った。
掃除当番を代わったせい?
それとも友人のささやかな願いを叶えられなかったから?
最後にお参りしよう、と立ち寄ったから?
いまさら戻れもしない過去に戻り、やり直したい、と願うのは…ワガママだろうか。
いや、着物を着るような時代への《タイムスリップ》が出来ているのだから、それよりもちょっとの過去へなら許されてほしい。
お願いだから…
「ねぇ…ほんとにどうしちゃったのよ…。おかしいじゃん。」
「…。」
「私が姫様なんてものじゃないことは知っているでしょ?」
「…いえ、あなた様は間違いなく‘姫様’なのです…どうか、どうかお許しくださいませ…。」
跪いた幼馴染を、姫は大きく見開いた瞳で見つめ続けている。
その表情は驚いているだけではなく、大きな悲しみも含まれているように見えた。
やがて表情は変わらないまま、大粒の涙が姫の頬をすーっと静かに流れ始めた。
俺、清歌、政寛は、ただ見つめることしか出来ない。
姫はこの時代に来てせいぜい一刻(約2時間)くらいのものだろう。
その短い時間で、すべてが変わってしまったのだから泣きたくもなる。
あの小さな身体ですべてを背負い込まなければならないのか、と思うと申し訳ない気持ちと、自分がなんとしてでも支えになりたいという思いが溢れた。
掛ける言葉が見つからない今の自分が不甲斐ない。
膝の上で握るこぶしには力が入り、指が白くなっていた。
新年早々子供の風邪をいただき、発熱と解熱を繰り返すこと早5日
未だに体調戻らず…
子供は発熱した翌朝にはピンピン
老いを感じずにはいれません笑