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欲しかったモノ  作者: 彰子
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見えないモノ③

どんどん進みます!

私たちは揃って境内へと進むが想像していたよりも、辺りは静かで闇が深いように感じた。

聞こえてくるのはフクロウのホウホウという鳴き声だけ。

これがまた人間の不安を駆り立てるには十分なシチュエーションなわけだ。

3人並んでお賽銭箱の前に到着し、財布を漁る。

金額は5円。

やはり古いとはいえ神様が相手だし、ご利益はあるだろうことを期待して「ご縁」をお願いしよう。

お賽銭箱に向かって五円玉が、三日月のように放物線を描いてお賽銭箱の隙間へ向かっていた時、正面から眩しい光に包まれた。




身体が浮遊する感覚の中で、わずかに人の話し声が聞こえる…。


「呼び寄せたか?」

「はい、抜かりなく。」


誰…?

声が違うから2人いる?


「これで我らの願いは叶ったも同然です。」

「我らではない。《あの方》の望みだ。」

「冷たいですね。すぐに始めるのですか?」

「うむ、探し出せ。」

「仰せのままに。」




ゆっくりと目が覚める。

見えるのは青く澄み切った空と流れる雲。

何度が瞬きをして、自分の意識がハッキリしていることを確認する。

自分が地面に仰向けで寝転んでいることに気付き、慌てて上半身を起こした。

自分の周りは木の板が並び、まるで壁のようだった。

えっと、たしか私は神社でお賽銭を投げていたはず…。

状況が分からずプチパニックになった頭を懸命に動かしていると、遠くから人の気配とかすかに話し声が聞こえた。

とりあえず今のこの場所を聞かなければ、と思い声の聞こえる方角へ歩き出した。

両側を木の板で作られた細い道を進み明るくなっている所へ出た瞬間、道行く人がみんな着物を着ていた。

右を向いても左を向いても着物を着こなし、男性は時代劇でよく見るちょんまげ。

女性もかんざしを差したヘアスタイル。

いや、待て待て待て。

そんな非現実的な事があるもんか。

だってさっきは神社の境内だったし、暗かったし、何よりみんな洋服のはずだ。

呆然と立ち尽くしていたら、辺りがざわつき出した。

私をまるで珍獣かのように見て通り過ぎる人もいれば、子連れの母親はまるで私から子供を守るようにして離れて行く。

さすがに居心地悪く、来た道を戻ることにした。

しかし道が分からない。

聞こうにも先ほどの反応では、声を掛けることもままならないだろう。

あてもなく板に囲まれた細い道を右へ曲がり、左へ曲がりとしながら歩いていると、川辺に辿り着いた。

川に少し近づき水に触らない程度の距離を開けて川辺に座る。

膝を抱え、混乱する頭をなんとか使い、状況を把握しようとしてみた。


『ここはどこだろう。』

『なぜ私はここにいるの?』

(すず)龍也(りゅうや)はどこ?』


疑問しか浮かばず途方に暮れる。

見上げた空は日が高い。

おそらく午前かお昼あたりだろう。


「2人とも…。どこ行っちゃったのよ…。」


ぽつりと漏れた言葉は、誰の耳にも届くことはない。

淋しさと不安から視界が滲む。

自分の膝をぎゅっと抱きしめ涙をこらえた。


「おい。」


ハッと顔を上げて、声の方向を見ると2人の着物を着た男がいた。

腰には時代劇のセットでよく見る刀を差している格好だ。

本物ではないだろう、と思いたい。


「ずいぶんと珍妙な恰好をしておるな。」

「珍妙…。」


失礼な。

れっきとした学生服ですよ。


「こんな場所で何をしておるのだ。」

「あ…ちょっと迷子になってしまって…。」

「ほう、迷うておるのか。」


ずいぶんとクセのある話し方だ。

恰好もそうだが、時代劇ごっこか?

いい年だろうに、痛々しい。

とはいえ道を聞くにはちょうど良い。

さっさと聞いて立ち去ろう、そう思い口を開こうとした時、近寄ってきた男1人に腕を掴まれた。


「は?」


男の表情を見ると、薄ら笑みを浮かべながら私を見ていた。


「行く当てがないのなら、一緒に来い。」


ナンパにしたって、もうちょっとスマートにしなさいよ!

いきなり腕つかんで、一緒に来いだなんて!!


「何すんのよ!離して!!」


抵抗していると、反対の腕をもう1人の男に掴まれてしまった。

やだやだ、普通に怖い。

目を瞑って大声を出そうとした時、両腕を掴んでいた男たちが急に立ち止まった。

不思議に思い正面を見ると、真っ黒いが上品そうな着物を着た長髪の男らしき人が私たちの行く手を阻むように立っていた。


「なんじゃおぬしは。」

「…。」

「そこをどけ。さもなくば痛い思いをする事になるぞ。」


黒い着物の人は何も言わず、ゆっくりと私たちに近づいてきた。


「聞こえぬのか!どけと言うておる!!」

「離せ。」

「あぁ?!」


低く迫力のある声で男だと分かった。

続けて黒い着物の男は言った。


「その手を離せと言ってんだ。聞こえなかったか?」

「何を!こやつは我らが見つけたのだ!横取りするつもりか!!」


横取りも何も、無理やりじゃないの。

だいたい、あんたたちについて行くって言ってないし。


「忠告はしたぞ。」


そう言うと黒い着物の男は素早い動きで、私の右腕を掴んでいた男を腰に差していた刀のような物で倒してしまった。


凄い!!

何をしたのか分からなかった。

私同様に何が起きたのか分からなかったのであろう、左腕を掴んでいる男も倒れた相方を呆然と見下ろしている。

黒い着物の男は私と隣の男に向き直ると、鋭いまなざしで男を睨みつける。


「失せろ…同じ目に遭いたいか…。」


ひぃっと小さな悲鳴を上げて、倒れている相方を担ぎ、急ぎ足で去って行った。

私は安心したことで呆けている。

もう何が何だか…。

黒い着物の男は私に近づいてくる。

男を近くで見るとモデルのように整った顔立ちで、背中まである黒く長い髪は1つに束ねられ、風に揺れていた。


「助けて頂いて、ありがとうございました。助かりました。」


頭を下げる。

すると、男は先ほどとは別人のような声と表情で優しく言う。


「いえ、どうか頭をお上げください。」


そう言った瞬間、男が跪いた。


「ちょっと何してるんですか?!」

「お待ちしておりました。」

「は?!」

「我らが姫。」

「はい?!?」


初心者ですか、書いている時が落ち着くんですよね。

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