見えないモノ①
初めて投稿します。
不安ですが、自分が楽しめるような作品に仕上げたいと思います。
pipipi...pipipi...
朝の目覚めを促す機械音を自ら望んでいたにも関わらず、どうしてこんなにも不快に感じてしまうのだろうか。
『アラーム』という機能は頼りになるが、朝に聴きたくない音ナンバーワンである事は間違いないだろう。
「う~ん…」
両手を上に伸ばし関節と背骨がポキポキ鳴る。
もう少し布団に包まれていたい衝動を、背伸びという行動で打ち消そうとするのは誰しも行う行動だろう。
いつもと変わらない1日の始まりを感じながら、半年前に入学した高校の制服に着替える準備をした。
私は尾野張高校1年 進学学科 鳳坂凰華 16歳。
この学科を選んだのは、大学は考古学を専攻したいから。
いわゆる歴女の私は、父の影響もあり小学生の頃から日本史の戦国時代に興味があった。
最初は戦国武将がイケメンに描かれた歴史書を見ながら、本当にこんなかっこよかったのかな、と妄想するくらいだったが、次第に武将のエピソードを知るようになってからは政策や国交、戦略の多彩さに現代には無いものを感じ、そこから泥沼にはまるかの如くのめり込んで現在に至ったというわけだ。
制服のネクタイを少し緩めに締めてブレザーを羽織る。
遅刻ではないはずなので、今日は朝ごはんを食べてから出れるかな。
とりあえず味噌汁と目玉焼きは食べたい。
そんなことを考えながらリビングのドアを開けた。
「おはよ、パパ。」
「あぁ、今日はギリギリじゃないな。」
「もう、毎日寝坊してるみたいに言わないでよ。ちゃんと起きる事もあるってば。」
「そうか?慌ててる姿の方が多いと思うぞ。」
「朝からイジワルだなぁ。」
私のパパは一応、社長をしている。
輸入雑貨を扱う会社で、娘から見てもパパのセンスはとても良いと思う。
自慢のパパだ。
「そこでゆっくりしてたら間に合わなくなるんじゃないの?」
「ママ。」
「早く食べて出た方がいいわよ。」
「分かってるよぉ。いただきま~す。」
ママは同じ女の私から見ても、高校生の娘がいるようには見えない美人。
パパ同様に自慢のママだ。
私の好みをすべて把握している朝食にほっこりしながら、ほど好い温度になってるスープに口を付けながら時計を見た。
うん、十分間に合う。
支度を終えて荷物を持ち、玄関で靴を履く。
トントンと靴のつま先を床に打ち付ける音が響く中、玄関のドアに手をかけ後ろにいるであろう両親に一言いう。
「いってきまぁーす。」
ドアが閉まる寸前に聞こえたママのいってらっしゃいの声。
それがすべて聞こえるか聞こえないかの所でパタリとドアは閉まった。
この時の私は普段通りの光景に何の違和感も感じていなかった。
暗く湿り気のある空間は、不気味さをより一層際立たせていた。
鍾乳石から滴り落ちる水は透き通っているが、それすらも人間に不安を与える材料には十分だろう。
大きな空間にろうそくで明かりを取り、2人の人物が話していた。
1人は猫を撫でながら微笑んでいる。
もう1人は、大きなフードを深く被り、猫を撫でるその人物に向いていた。
猫を撫でている人物が口を開いた。
「首尾はいかがかな、怜猪殿」
怜猪、と呼ばれたフードの人物は答え、2人は含みのある会話を始める。
「特に問題はない。あとは【例の儀式】を行えば、我等の望みは叶うはずだ。」
「はず、では困るのですがね、間違えることが許されないのですから。」
「分かっている。お前には【例の儀式】、そう難しいことでもあるまい。」
「勝手なことを言ってくれますね。私の命がかかっているというのに。」
「知ったことか。望みが叶うならば、お前の命をかけるに値する。」
「そこは自分の命になさりなさいな。」
「ふん、我の命は《あの方》のものだ。お前なんぞに使うつもりはない。」
「くくくくく…。まぁいいでしょう。《あの方》とやらに良い報告をお伝えなさい。」
「言われずとも。」
暗黒の空間が2人の会話すらも包み込んでいた。
読んでいただき、ありがとうございました。
これからも頑張ります!