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あなたに、であえて。  作者: たけ ゆう。
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4

いつも通りの朝。


だけど、少しワクワクしている。


自然と早足になる。


時間ピッタリにバスが到着。


バスに乗り込む。


あの子"かえで"が乗るバス停が近づく。


なんて言おう。


おはよう?

元気?


うーん…。



「まり、さん?」


私の名前を呼ぶ声にハッとする。


「あ、かえで、さん。」


「うん、おはよ。」


「お、はよう。」


また、先、越された。


「ねえ、さん付け、やめよーよ!」


「えっ、どうして?」


「だって、変じゃん!同い年なのに!」


「そう?」


「うん、へん!」


「わ、分かった、……かえ、で。」


「うん!まり!」


なんだか同い年なのに、かえでは幼く感じる。


「……あのさ、1つだけ聞いても、いい?」


「うん、いいよ。」


「かみ」


「かみ?何のかみ?」


「髪の毛…」


「あぁ!髪、ね。」


「うん、どうして水色にしたの?」


最初、見た時から気になってた。

私の周りには居ない。

明るくしても茶髪か、派手でも金髪。

水色の人を見た事がなかった。


「うーん、とね。」


かえでは、前髪を少し触りながら答えた。


「かき氷!」


…かき氷?どういうこと?


「あるでしょ、水色のやつ。」


「あるね。」


「それが好きで、味も、色も。

綺麗じゃない?キラキラして。」


「うん。だけど、どうして髪に?」


「最初は服とかにしようと思ってたんだけど、私、服は黒系が好きなの。

ね、今も。」


確かに、靴やバッグ以外、全身、黒だ。


「アクセサリーとか、よく無くしちゃうから

無理だし。で、じゃあ、髪だ!って。」


「でも、ふつ、う……。」


「ねえ」


私の言葉を遮り、かえでが話始めた。


「ふつう?なにそれ」


「え…」


かえでの顔を見ると怒っているわけでも、

悲しんでいるでもなく、無表情だった。


「したい色を髪にいれたら"ふつう"ってやつじゃないの?なんで?じゃあ何、周りの茶髪とかの人だと"ふつう"?つまらない。」


「ごめ」


「別に謝って欲しいわけじゃない。

………まり、降りる場所じゃない?」


「あ、うん。」


降りる前に何か言わなきゃって思うのに、

上手く声が出てきてくれない。


結局、何も、言えずに降りてしまった。


出発するバスを見ることしかできなかった。


楽しい気分になって家路に着いた昨日とは、

逆になってしまった。

まだ、朝なのに。

今から仕事なのに。


あんなに楽しそうに話してくれていたのに、

私の一言で、かえでの気持ちを沈ませてしまった。


情けなさと申し訳なさ、

色んな感情が一気に現れ涙が溢れ、

その場で私は、手で顔を覆い泣き崩れてしまった。



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