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いつも通りの朝。
だけど、少しワクワクしている。
自然と早足になる。
時間ピッタリにバスが到着。
バスに乗り込む。
あの子"かえで"が乗るバス停が近づく。
なんて言おう。
おはよう?
元気?
うーん…。
「まり、さん?」
私の名前を呼ぶ声にハッとする。
「あ、かえで、さん。」
「うん、おはよ。」
「お、はよう。」
また、先、越された。
「ねえ、さん付け、やめよーよ!」
「えっ、どうして?」
「だって、変じゃん!同い年なのに!」
「そう?」
「うん、へん!」
「わ、分かった、……かえ、で。」
「うん!まり!」
なんだか同い年なのに、かえでは幼く感じる。
「……あのさ、1つだけ聞いても、いい?」
「うん、いいよ。」
「かみ」
「かみ?何のかみ?」
「髪の毛…」
「あぁ!髪、ね。」
「うん、どうして水色にしたの?」
最初、見た時から気になってた。
私の周りには居ない。
明るくしても茶髪か、派手でも金髪。
水色の人を見た事がなかった。
「うーん、とね。」
かえでは、前髪を少し触りながら答えた。
「かき氷!」
…かき氷?どういうこと?
「あるでしょ、水色のやつ。」
「あるね。」
「それが好きで、味も、色も。
綺麗じゃない?キラキラして。」
「うん。だけど、どうして髪に?」
「最初は服とかにしようと思ってたんだけど、私、服は黒系が好きなの。
ね、今も。」
確かに、靴やバッグ以外、全身、黒だ。
「アクセサリーとか、よく無くしちゃうから
無理だし。で、じゃあ、髪だ!って。」
「でも、ふつ、う……。」
「ねえ」
私の言葉を遮り、かえでが話始めた。
「ふつう?なにそれ」
「え…」
かえでの顔を見ると怒っているわけでも、
悲しんでいるでもなく、無表情だった。
「したい色を髪にいれたら"ふつう"ってやつじゃないの?なんで?じゃあ何、周りの茶髪とかの人だと"ふつう"?つまらない。」
「ごめ」
「別に謝って欲しいわけじゃない。
………まり、降りる場所じゃない?」
「あ、うん。」
降りる前に何か言わなきゃって思うのに、
上手く声が出てきてくれない。
結局、何も、言えずに降りてしまった。
出発するバスを見ることしかできなかった。
楽しい気分になって家路に着いた昨日とは、
逆になってしまった。
まだ、朝なのに。
今から仕事なのに。
あんなに楽しそうに話してくれていたのに、
私の一言で、かえでの気持ちを沈ませてしまった。
情けなさと申し訳なさ、
色んな感情が一気に現れ涙が溢れ、
その場で私は、手で顔を覆い泣き崩れてしまった。