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「おはよ。」
自分の席に座り、隣の席の同僚に挨拶をする。
「あ、おはよ。」
この同僚の女性が会社内で1番、一緒に居て楽。
嫌なものは、嫌。
好きなものは、好き。
ハッキリしている。
「さて、」
あの子に貰ったラインのIDが書かれている紙を
鞄の内側にあるポケットから出す。
「なに、それ」
隣の同僚が紙を見ながら聞いてきた。
「バスで貰った。」
「へえ。なんで?」
「さあ?」
「バスの中で書いてたの?」
「ううん、書いてあったみたい。」
「 へえ、わざわざ?なんで?」
「……なんでだろ。」
今日、渡そうと決めてた?
ま、いいか。
深く考えるのは苦手。
スマホの画面からラインのアプリを起動する。
ID検索で紙に書いてあるのを入力し、検索。
かえで。
名前が表示された。
アイコンは、三日月のピアス。
あの子が左耳に着けていた。
友達追加を押す。
メッセージ…、なんと打てばいい?
仕事相手なら簡単なのに。
初めて話した子。
「どうしよう…」
「なに?」
隣の同僚が聞いてきた。
「いや、さっきのラインくれた子に、
なんて送ればいいのか分からなくて」
「別に普通で、いいんじゃない?
"よろしく"とかさ。」
「うーん。」
ー♪
「あ!」
「ん?」
「送る前に、きた。」
「良かったじゃん。」
そう言って同僚は席を立った。
目線をスマホに戻す。
[友達追加、ありがとうございます。]
[いえ、よろしくお願いします。]
同僚が言うように、悩まずに送れば良かった、
と少し後悔した。