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あなたに、であえて。  作者: たけ ゆう。
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AM 5時50分。


スマホに設定していたアラームが鳴る。


12月の早朝、さむい。

頭まで被っている

布団から右腕を出すとヒヤッとする。

「う~。」と少し声を出しながら

アラームを止める。


「はぁ…、さむぅ。」


ゆっくり、ゆっくり上体を起こし、

ベッドから右足、左足と出した。


まだ頭が寝ぼけているので

シャワーを浴びた。


やっとで、

ホカホカになったけど、

風呂場から出ると少し、冷えてしまった。


少し苦めなホットコーヒーを飲みながら、

テレビの電源をつける。


ソファーに座り、

目の前の画面を眺めると若い女性二人が、

インタビューを受けていた。


「似たような髪型だなあ…。」


ポツリと呟く。

同じような髪型、メイク。


個性があるようでない。


そういう自分も、似たようなもの。


周りと少しでも違うと、

「変な人」、「おかしい」と言われる。


うんざりだ……けど、仕方がない。

そう自分に言い聞かせながらメイクを始める。


AM 7時。

家を出る。


空を見上げる。

快晴。


ドラマで良く見る太陽に向けて

手のひらを伸ばすやつ。


実際に、そんな事をしたら"変な人"になる。


「行くか。」


そう頭の中で言葉にし歩き始める。


会社はバスで15分くらい。


相変わらず満員に近い。

座れた事がない。


車通勤を考え始めているが、

迷っている理由が1つある。


それは、途中で乗車してくる1人の子。


その子がくるまで、あと数分。


「停車致します。」


バスのアナウンスが流れた。


扉が開き2、3人乗ってきた。

その中に、あの子が居る。


髪が短くてピアスを右に2つ、左に1つ付けている。

化粧も薄い。

服装もボーイッシュな子。


(自分の好きな生き方をしている。)


まぁ、これは私の勝手な想像だけど。


まぶしい、なぁ。


「……おはよう ございます。」


私の隣に立った、あの子が言った。

声を聞いたのは初めてだ。


誰か知り合いが居たのかと周りを

見たけど、皆、スマホを見ている。


「あの…」


声のした隣に顔を向けると、

あの子が私を、じっと見ていた。


「…え?私、ですか?」


バカみたいな質問をしてしまった。


「はい、…いつも隣ですよね。」


「…そ、うですね。」


決して狙って隣に居る訳じゃない。

だって、私が先に乗っているから。


「話すの、初めてですよね」


「そうですね…」


同じ言葉しか出ない。


「…ライン、してますか?」


「はい、一応。」


仕事用として使っているだけ。


「交換、しませんか?」


「は、はい、ぜひ。」


ぜひって、なんだ。


「じゃあ」


そう言って、ラインのIDが書いてある紙を

渡された。


「ありがとう ございます、送りますね。」


「…待ってます。」


小さく下を見ながら、あの子が言った。




「じゃあ、お先に。」


そう言い残して私はバスを降りた。


降りる直前「いってらっしゃい」と、

小さく聞こえた。





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