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ゆるコワ! ~無敵の女子高生二人がただひたすら心霊スポットに凸しまくる!~  作者: 谷尾銀
【File57】殯山

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【05】資料④


 ◇竹中好文の取材メモ(3)


 ・“雪鴉”という地名の由来(九段昌隆著『郷土の珍しい地名と由来』より)


 “雪”と付く地名は豪雪地帯に多く、過去に雪崩などの災害があった土地だとされる。一方の“鴉”はハシブトカラスなどの嘴を表す他、鳴き声を示す形声文字であり、鴉が多く生息している森などの地名に用いられる事が多い。

 雪鴉という地名の歴史や伝承を紐解くと、この地名の由来も上記の例に漏れない事が解る。

 二百年近く前の古い地図を見ると、雪鴉周辺は近隣にそびえる茂刈山の名前をとって、“茂刈所(もがりどころ)”もしくは“最上所(もがみどころ)”と呼ばれていた。

 しかし、文政12年の事だった。大雪となり茂刈山の北側が大きな雪崩れを起こして、麓の村で暮らしていた多くの人々が犠牲になった。

 それから春先に近づき雪が融け出すと、雪面から露出した家畜や人々の死骸を目当てに多くの鴉たちが集まってきたのだという。鴉たちは屍を食い尽くした後もその場に止まったといわれる。



 ◇小高敬士の備忘録(2)



 12月3日。

 竹中から例の集団自殺の取材で得た素材や、その他諸々のメモを受け取る。

 気になるのは警察関係者がインタビューで述べていた“あの山はおかしい”という発言である。この茂刈山の周辺――特に雪鴉地区の工事現場では、人が死ぬようないくつかの事故が発生している。

 けっきょく、予定されていた老人養護施設建設が中止になった事から、新聞にはなっていないトラブルもあったに違いない。

 更に郷土史家の書籍によれば、過去に大きな災害もあったようだ。最近になって、殺人事件まで発生したらしい。

 いっけんすると、それらは同じ地域で発生したという以外の繋がりはなさそうであるが、偶然にしては人が死に過ぎている。

 これでオカルト的な因縁でもあるならば、そうした解釈に一気に傾きそうではある。しかし、例の集団自殺や工事現場の事故単体だけを見てみると、現実的な解釈は充分に可能であるようにも思える。

 まずは客観的に、合理的に起こった出来事を検証する方針でいく。

 例えば例のテントの中から消えていた“ドクママ”についてだが、あれはガスマスクがあれば、4人が中毒症状で死んだ後にテントの外へ出られるのではないだろうか。他の四人が睡眠薬で意識を喪った後に鞄の中のガスマスクを装着した。

 小笠原達也が残した映像を見ると、彼は確かに酒井美由利から受け取ったサイレースを3錠ほど口に含んだように見えるが、飲み込まずに後で吐き出したのかもしれない。

 では、なぜドクママはそんな事をしたのか。ここまで考えて思い出したのは、2017年にZで発生した殺人事件である。この事件の犯人であるSも、自らは死ぬつもりがなかったにも関わらず、SNSで『一緒に死のう』と呼び掛け、誘いにのってきた自殺志願者を殺害した。

 このドクママもそうであったのではないか。

 死ぬ気などなく、彼は自殺志願者を自らの手で死に誘ったのではないか。しかし、この説では以下の点が説明できない。


 ①動機が不明である。

 Z市殺人事件のSは、当初は金銭目的で犯行に及び、後に性的暴行へと目的が掏り替わったものの、明確な動機があった。

 しかし、今回の自殺者の着衣はいっさい乱れておらず、貴重品も現場に残されていた。


 ②自殺への積極性。

 集団自殺の切っ掛けとなったチャットルームを立てたのは岸和田である。そして楽に死ぬ方法として練炭による一酸化炭素中毒死を提案したのは酒井であった。

 ドクママはチャットルームにて、世間への不平不満は積極的に書き込んでいたが、具体的な自殺方法の話し合いにはあまり発言はしていなかった。

 彼が死ぬつもりのなかった表れであるとも取れるが、逆に自殺者を死に導く事が動機であったとしたら、もう少し具体的な自殺方法について積極的な発言を行っているのではないか。



 ◇小高敬士の備忘録(3)



 12月4日。

 竹中のつてで地元の警察関係者を紹介してもらい電話越しに話を聞く事ができた。

 ドクママの身元があっさり判明する。

 群馬県在住の徳間真とくままこと(51)であった。彼はいわゆる氷河期世代で、大学卒業後は就職難民として都内のネットカフェを拠点に日雇い派遣で食いつないでいた。三十のときに実家に帰り、以降は自宅で引き込もっていたのだという。

 家族によると、徳間は引きこもりではあったが、ちょっとした外出くらいならする事もあり、生活習慣もまったく噛み合っていなかった事から、彼が失踪したと気がついたのは集団自殺があってから二週間も経った後だったのだという。この認識の遅れが彼の身元確認を遅らせた原因だった。

 更にその警察関係者から興味深い話を聞く事ができた。徳間真はまだ生きているかもしれないのだという。

 詳しく話を聞くために、彼の元へと向かう事にする。こちらのスケジュールの都合もあり、二週間後に彼の住む矢田市へと向かう。

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― 新着の感想 ―
『九段昌隆』の著作物がちょくちょく作品内で出てきて面白い。 あの爺さん、ずいぶんと本書いてるね。 作者からしても地元の郷土史家とか説明役として使い勝手がいいキャラだよね。
ぬわー!?【00】の術がなにかと思っていたらFileに答えあるやんけ!殯か。こりゃ本物と感じ取れるわ竹中氏 この術は雪崩の死亡をこれ幸いと誰かがかけたのか、残った村人が葬式か儀式をやったのが偶然術に…
 ハンドルの「ドクママ」って、真相に至る何かからの由来かと今まで思っていましたら、ただの本名まじりかいっw  自殺方法などには積極的ではなかったものの、場所は選定しているんですよね、ドクママ。チャット…
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