report 八女洞
県南の蛇場見市の山中に所在する登山道から、少し外れた沢沿いの岩場に、ぽっかりと口を開けた洞窟である。
その入り口は木の格子により、覆われているために侵入する事は出来ない。
郷土史関連の資料にも、名前を見る事は少なく謎めいたスポットである。
地元民たちの間でも、山の神様が祀ってある場所だとか、恐ろしい魔物が封じられている場所であるとか、この場所についての認識は異なっている。
しかし、近づくと祟りがある不吉な場所であるという点は共通しており、訪れる者は滅多にいない。
その事と関係があるのかは判然としないが、近隣の山林では昔から不審な行方不明者が度々出ていた。
民俗学者の豊洲文昭によれば八女洞は麓の村で行われていた独自の宗教儀式に関連する場所であったのだという。
それは村でときおり産まれた単眼症の赤子を用いた儀式であったらしいのだが、詳しい事は解っていない。
そして、この豊洲氏は二〇一〇年に八女洞に向かうと知人に言い残し、消息を断った。
その際、八女洞の事を記した数少ない資料である古文書も紛失している。
更に二〇二〇年の三月下旬に、行方不明だった県庁所在地在住の会社員と、蛇場見市在住の整備工の遺体が、八女洞内から発見されたという。
どうやら、入り口の木枠を外して中に侵入したと思われる。
なぜか警察は二人の詳しい死因などの情報については公開していない。
因みに現在八女洞は頑丈な鉄格子により蓋をされている。
危険度ランク【A】