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勇者?魔王?いいえ村人です。  作者: 蒼伊悠
序章
1/27

1:異世界転移

不定期更新ですがよろしくお願いします。

 ごく普通の日常を送っていた。毎朝学校にいき、眠そうに授業を受けて友達と他愛もない雑談を繰り広げる。部活などは面倒だと帰宅部。そんなどこにでもある普通の日常を過ごしていたんだ。


 だけど、どういう事だろう。俺の目の前には神と名乗る存在がいた。


 存在……あやふやな言いようだが目の前のそれはそうとしか表せなかった。目の前にいるはずなのにその姿を認識することができない。摩訶不思議な現象を起こす存在。確かに神と言われれば素直に頷けるのかもしれない。


 『頷けるもなにも先刻から神と言っているではないか。とはいえ、そこを信じるか信じないかは些細な事だ。私は私の役目を果たすのみだ』


 「いや、信じてはいますよ。こんなことは少なくとも普通ではない。ただ、此方だって混乱しているんですよ。授業を受けていたら突然こんな場所につれてこられて」


 視界を右往左往させるが、景色は何も変わらない。真っ白な空間がそこにあるだけだ。自らこんな場所には来るわけがない。授業を受けていたはずなのに気がついたら俺はこの場にいた。


 『ふむ、状況は伝えたはずだがな?それも時間をとらぬように気まで使ったというのに。無駄骨だったのか?』

 「ええ、わかってますよ。時間を取らないで教えて貰ったんでね。文字通り一瞬で何が起きたかは知り得ましたよ。ですけどね……」

 ともすれば気が狂いそうな空間に来たと認識したとたんに俺の脳裏に一瞬で色々な情報が書き込まれたように入ってきた。


 目の前の存在が神だということ。俺達が陥った状況の事、これからどうなるかについて、その為にこの場所に来る必要があったことも全て知ることはできた。

 

 だけども、受け入れる事など出来るわけがない。

 まさか……まさか。


 「異世界にクラスメイトと転移なんて現実に起きてはいそうですかと、納得できるわけないでしょう!」

 異世界転移ーーーー昨今アニメやゲーム等で色々と取り上げられているジャンルの一つだが、あくまでもフィクションだ。現実に起こるなんて予想だにしたいない。それも、一人ではない、クラスメイト総勢30人というオマケもついている。

 

 とはいえ、この場にクラスメイト達はいない。焼き付いた情報によると別の場所で別の神による案内を受けているという事だ。


 『正確には他の者を案内しているのも私ですあるがな。この場にいる私も含めて本体ではないのだよ』

 「先程から自然にこちらの心を読まないでもらっていいですか」

 『それはできぬ相談だな。人間が意識して音をシャットアウトできぬように、私にとっても思考の読み取りは自然に行われるものであってだな』

 「人は耳栓や手でシャットアウトできるんですけどね」


 『ふむ?この些末な問答をまだ続けるかね? 教えた通り君には時間がないのだがね』

 

 「わかってますよ」

 視線を上に向ける。

 そこには真っ白い空間に闇があった。

 半紙に一滴の墨を垂らしたかのよう点黒い染みが一点、空間に生まれている。

 あれが何かそれも脳裏の情報として焼き付かれている。

 

 あの穴はここの空間と異世界とやらを繋ぐゲートらしい。

 つまり、あの穴が閉じた時俺はこの真っ白で何もないは空間に閉じ込められるというわけだ。


 では、何故さっさとこの空間からでないのかそれが、神とやらがいっていた仕事とやらに関係してくる。


 「もう一度聞きますけど後25分位は穴閉じないんですよね?」

 『ああ、後25分きっかり閉じることはない。そこは断言しよう』

 「そんな事言っても大分小さくなってるけど、本当に大丈夫かよ……」

 穴は徐々に小さくなっていっておりもう間もなく人一人通るのさえ厳しい程に小さくなっている。とてもじゃないが後25分も持つとは思えない。


 『問題ない。私は嘘はつかない。後25分は絶対に大丈夫だ。それよりも早く選ぶがよい。私も早く仕事を終わらせたいのだ』

 「ハイハイ、わかりましたよ。選びますよ。えーと、どうやって選ぶんです?」

 疑問を抱いた瞬間、目の前にウィンドウが出現する。そこには文字の羅列が書かれていた。


 ウィンドウには様々な名称とそれに対する説明が付随されている。


 例にだすとこんな感じだ。


 勇者の証:勇者のみが取得できる。効果はステータスの大幅な上昇、状態異常への耐久の大幅な上昇。必要ポイント50

 

スキルーーーー異世界ものとはきっても切れないスキルという単語。例に漏れず俺達がこれから行く異世界にはスキルが存在するらしい。そして、そのスキルを俺達に与えるのが神さんの仕事というわけだ。


 何故スキルを貰えるかは知らない、そういうものだと思っておくしかない。本音でいえば問いた出したいところではあるがあいにくとそこまでの時間的猶予がない。

 

 幸い手に持っていた学生鞄からスマートフォンを取り出してタイマーを制限時間の二分前に設定しておく。


 これで、あとはスキルを考えるだけだ。


 さて、何から取得していくか、俺に与えられたポイントは100ポイント。スキルを取得する度にポイントを消費していくシステムらしい。稀少なスキル程取得ポイントが高く勇者専用のスキル等50ポイントもかかるらしい。流石勇者専用のスキルと言えるがそれでも50ポイントだ。まだ半分も残っている。ここから分かる通り、恐らく100ポイントも使えばチート的なスキルを何個も取れると考えられる。


 「とはいえ、時間がないよな……」

 文字の羅列は下にスライドしてもしても途切れる事なく書き連なられていて、とてもじゃないが一つ一つ吟味しながらスキルを選ぶ事はできそうにない。


 『なんでもいい。こういう感じのスタイルでいきたいと教えてくれれば私がオススメのスキルを教えよう。より、詳細に伝えてくれると助かるがな。魔法を使いたいなら、どの属性のどのような形の魔法がよいとかな。口頭で言わなくても私なら思考するだけで読み取るから時間もかかるまい』


 なるほど、それならば確かに数あるスキルを吟味していく必要はなくなってくるかもしれない。


 「では、頼みます……ん?あれ。黒くなっている?」

 スキル名が書かれた欄が黒くなっている。一つや二つではなく幾つか散らばって黒くなっている。


 先程あった勇者専用のスキルも黒く染まっていた。


 『それは、取得できないスキルが黒くなっているのだ。人間には取得できないものや、世界に決められた人数しか会得できないものなど、様々な理由があるがな』


 勇者専用のスキルは決められた人数しか会得できないものだったのだろう。タイミング的にも見てクラスの誰かが取得したと見ていい。

 


 他の黒くなっているところに眼を向けると精霊魔法等というものもある。精霊、神秘的なイメージがあるその名前に惹かれるが残念ながら取得はできない。


 そもそも、精霊とはなんなのかと思うが。


 『精霊とは自然現象の塊。自然エネルギーの塊である精霊は言い替えれば世界そのものと言えるかもしれんな』


 世界そのものとかそんなスキルを持っている存在がいるのか、本当に厳しい世界のようだ。


 『勘違いするでないぞ、確かに高位の精霊ともなれば自然を司り我等と同等の存在と云えるが、精霊魔法を会得できるエルフ族といえど、そこまでの力を発揮することはできはしない。精々中級程度の精霊の力を借りることができるくらいだ』


 エルフ、今からいく世界には様々な種族がいると焼き付けられた知識にはあった。肝心の種族の種類や種族名がないのが不満ではあったが致し方ない。


 「まぁ、いいや。それよりも、スキルだよな。そういえば言語は大丈夫なんだよな」

 『人間語はしっかりと話せるようにしてある。安心するがよい』

 

 神とやらはそういうが安心なんて出来るわけがない。これからいく世界必ずしも人間がいる場所にでるとは限らないと思ってしまう。いつか人以外の存在と会ったときの用に他の言語もとっておきたい。


 『では、全言語スキルを得るか?取得ポイントは20ポイントだ』


 全言語を覚えて20ポイントは恐らく低い。取得するべきものだろう。候補に入れておきたい。


 『ふむ?すぐ取得しないのか?』

 「この後もっといいものや、どうしても欲しいけどポイントが足りないなんて事態は回避したいからな。候補として残しておいて後から纏めて取得した方がいい」

 

 『ふははは、君はなかなかしっかりとしているではないか。今もそうしてスキル名をカメラで撮影しているのも面白い』

 俺の片方の手に持っているスマホを見て神が笑っている。

 どうして笑っているのか理解できない。


 異世界にスキルについて記載された物があるかわからない以上ここの情報は貴重なはずだ、撮らないわけがない。


 『状況を理解出来ずに戸惑っていたわりには堅実な事をする』

 「褒めてくれて感謝しときますよ。それともう一つ欲しいのがあるんですけど鑑定的なものあります」


 これは異世界ものでは鉄板とも言えるスキルだ。相手を見るだけで情報を得られるのはかなり優位になる。


 『勿論あるぞ』


 神がそういうと幾つかのスキル欄が光る。これが俺が言ったスキルの候補ということだろう。


 鑑定:物の価値や材質等を知る事ができる。必要ポイント5

 霊視:エネルギー等を目視することができる。必要ポイント10

神眼:相手のステータスや物の本質を視ることができる。必要ポイント20


候補の中から気になったのはこんなところか。俺が言っていたのは神眼だったが鑑定や霊視スキルも気になる所ではある。


 「これ、相手のステータスを見れるってどこまで見れるんだ?」

 『それは、スキルレベルによるな』

 「スキルレベル? そんなのがあったのか……」

 この神さっきからちょくちょく思ってたけど大事な情報を何故知識を焼き付ける時に同じように焼き付けなかったのか。

 

 『スキルレベルについてだが、1レベルの時は相手の力なのどを数値として見れるようになる。更に上がっていくとスキルやその詳細等、レベルが上がる毎に視れるものが増えていく』

 

 「レベルを上げる方法は?」

 『スキルをとにかく使用することだな。人によって上がる速度は変わるが遅くても数年以内には上がるであろう。この部屋に限って同じスキルを取得するだけで上げる事もできる』

 「凄いな……」

 どういう仕組みかは分からないが普通に凄いのではないだろうか、数年かかる事もあるレベル上げが簡単に行えちゃうわけだ。流石神というべきか。


 『レベル上げしてみるか?』

 鑑定系のスキル取得するのは確定してる。とはいえ、レベルを上げるべきかは迷う所だな。保留だな。



 「さて、ここからだよな。どうしよう」

 自分がどういうスキルも欲しいのか分からない。地球にいたとき夢想したことはあったがいざ実際に異世界いくことになって、スキルを選択しないといけなくなると途端に思い浮かばなくなる。こうしている間にも刻一刻と時間が減ってきて焦りがでてくる。


 剣聖、剣技、魔弾、戦斤、炎魔法、雷魔法、豪鬼、身体強化、様々なスキル名が書かれているがいまいちパッとこない。そもそも、平和な日本のごく普通の学生に過ぎない俺に戦いに関してのスキル選びが出来るわけもない。


 ひたすらスクロールしていくがいまだに戦闘系のスキルは候補すら見つからないでいる。


 数分間焦りながらスクロールしていると偶々一つのスキルに目が止まる。


 農民スキル:植物等を育てる時、極々僅かな補正がかかる。 必要ポイント0,5。


 悪い意味で目立ったというのが正解ではあったが。

 このスキルあまりに必要ポイントが少なすぎる。


 『いったであろう。スキルは稀少な程必要ポイントが大きくなると、ありふれた村人スキルなど価値などないってことである』

 

 地球で考えても重要な役職に就いてるのは確かに極一部ではあるが、こうも違うのか。ここまで、低いと少し気になってくる。

 我ながら貧乏性だとは思うがお得なんじゃないかと僅かならでも思ってしまう。


 「……流石にこれはいらないか」

 必要ポイントは格段に少ないが、戦闘で役立ちそうにはない。このスキルは却下だ。


 「そもそも、補正ってなんだよ。植物が早く育つのか?」

 『その通りである。ほんの極々僅かではあるが植物が育ちやすくなったり、天気に恵まれやすくなったりする。とはいえ、実感することもないレベルであるがな』

 「本当に役立ちそうにないな。天気に恵まれるってなんだよ…………」 

 

 ふと、本当にふと一つの考えがその時脳裏を過った。荒唐無稽かもしれないそんな考えだ。直ぐにでも忘れるであろうそんな考え。


 『フフーーーーフフハハハハハ。面白い事を考えるではないか。なんてことだ……私も考えついたことのないことだ。誇れ、それは試すに値する考えだ』


 泡沫のように消え去っていく運命であろう考えが神のツボに入ったのか思い切り笑われた。


 うまくいくのか……?


 『それは、私もわからない。言ったであろう。試す価値はあると』

 「そうなのか……? じゃあ、こんなスキルいけるか?」

 思い浮かべた考えに相応しいスキルを想像していく。

 この、スキル達を取らなければそもそも意味がない。

 

 『うむ、大丈夫だ。全部揃うぞ。では、このスキル達を与えるぞ』

 「……はい、大丈夫です。お願いします」

 『うむ……与え終わったぞ』


 体に特に変化はない。現段階で実感できるものではないとはいえ、本当にスキルを取得できたのか少し心配になってくる。


 『心配はいらない。しっかりとスキル取得は完了している。それでは行くがよい』

 ピピピピと時間を告げるアラーム音が鳴り出す。

 時間内に間に合ったようだ。

 ゲートを見ると人一人分通るのがやっとではないかというほど小さくなっている。急がないとまずい。


 「神さん、それではいきます!」

 『うむ、行ってくるがよい。忘れるな、考える事をやめるな。考えに考えて生き抜いてくれ』

 「わかってますよ」

 今、思えば神さんが情報を落とさなかったのは敢えてなんだろう。証拠に俺が聞いた事には答えてくれていた。

 

 『では、送るぞ……』

 神さんがそういうと俺の体が浮かび上がりそのまま穴に向かって進んでいく。あの先に行けば異世界だ。


 変な汗がかいてくる。緊張や不安、そして、どこか興奮している自分に気づいた。


 異世界ーーーー状況に戸惑っているのは確かだ。それでも、男の憧れではあったんだ。この、先に何が待つのかはわからない。しかし、今くらいは、興奮に身を任せよう。


 目の前に迫った黒い穴に、興奮と不安のまま手を伸ばす……。

 


 

不定期更新ですがよろしくお願いします。


感想、アドバイスを頂けたら喜ぶ単純な作者です。


他にもこういう作品を投稿してます。

無能と呼ばれた主人公が魔女に出会い己の力について教わり最強になっていく物語です。


タイトル:黒の精霊殺し

https://ncode.syosetu.com/n3614fn/

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