犯罪者としての逃亡生活
山の頂上で二人は木の下で座り込み休息をした。啓介は能力を使い過ぎて疲れたのだ。能力を使えるのに制限はないがかなりの疲労が伴うようだ。セシルは細い腕で啓介を運んだから相当疲れたようだ。
「なぁさっき俺の方に飛んできた弾が遅く飛んでくるように見えたんだが何故だか知ってるか?」
「それはお前の目が悪魔のようになったってことでしょうね、俺達悪魔は飛んでくる弾でも目でとらえられるからね、契約者は力が馴染んでいくと身体も悪魔に近づいて行くわ。」
さっき飛んでくる弾を目でとらえられた啓介の疑問はセシルの説明により解消した。
「君、私と出会う前に何人殺したの?」
「一人も殺してないよ、今日が初めてだ。」
「嘘。あんなに十丁なしで人を殺したのに、流石悪魔並みの邪悪な心の持ち主」
今まで人も殺してない啓介が刑務所で何の十丁もなしで人を殺したのが不思議だと思うセシルだ。
「これからどうする」
「総理大臣を殺しに行きたいのだが居場所が分からん、それで先ず母さんのところに行きたいのだが。」
「母さんのとこれって、どこに」
「墓だよ、母さんの葬式にも行けずに刑務所で腐ってった俺は親不孝もんさ。」
刑務所にいたせいで母の葬式にも行けなかった啓介はせめて母の墓にでも行きたかった。しかし今の自分は総理大臣の殺人未遂の容疑がかかった犯罪者それとともに今日の刑務官の虐殺、もう日本一の犯罪者と言えるのだろう。
「もう俺は殺人犯でお前は共犯者だ。監視カメラにより俺達の顔は世界中に知らされるだろう。見た監視カメラは全部壊したから多分だけどお前の正体はばれてない可能性もあるが。
だから俺達がこの山に下りてすぐやることは変装だ。」
「そうだね、早く下りよう」
(ご主人様にお前呼ばわりするなんてまぁこいつも今焦って状況判断が出来てないだろう。)
啓介とセシルは頂上から刑務所がある町の反対側の町へと下りて行った。刑務所の反対側の町ならそんなに騒がしくないと思ったからだ。啓介の推測は正しかった。今刑務所がある町は刑務所から警察に連絡がいき街中で大騒ぎで啓介を探しているのだ。暗くっても何故か周りが良く見える啓介、それも悪魔の力が目に影響を与えたからであろう。
そして町にたどり着いた。今の時間は午前3時くらいで町は明かりが消えかなり暗かった。
啓介達は町を歩きながら変装道具を売ってる店を探した。
「啓介、ここにいっぱいあるよ。」
楽しそうに前を歩き探していたセシルが何かを探したようだ。啓介も気になってセシルが探した店の方を見るがそこはコスプレショップだった。色んなアニメキャラクターの服装やかつらなどが置いてあった。
コスプレショップは今の啓介達には丁度いい店だったのだ。
「よくやったぞ、セシル。」
「何で呼び捨て?」
「お前も呼び捨てだろうが」
「当たり前でしょ、私が君のご主人様だから。」
「はぁ?」
啓介は自分より幼く見えるセシルが自分に呼び捨てで呼んでも悪魔だから仕方ないと自分に呼び聞かせていた。だから啓介は当たり前のようにセシルを呼び捨てで呼んだのだがセシルは不満だったようだ。
それでコスプレショップ言い争いを始める啓介とセシルだった。
「物わかりの悪い奴だな、私があなたのご主人様でしょ」
「何で?」
「はぁ?君、私と契約したでしょ、つまり私はご主人様で君は下僕だということ、親睦を深めるために仕方なくダメ口は許せても呼び捨ては許せないわ、分かった?」
「何で俺がお前みたいなチビを敬わらなきゃいけないんだ、そんなの契約の内容に含まれてないだろうが。」
「ち、ち、チビと言ったわね。」
啓介にチビと言われ怒るセシル。実際にセシルは150㎝くらいの身長だ。173㎝の身長である啓介から見たらチビにしか見えないだろ。
「ご主人様に対してその態度、二度とそんな口叩けないようにしてあげるわ」
セシルは啓介の中にある自分が上げた力の塊を啓介の体内で動かせた。セシルが啓介の体内に入れた気体のようなエネルギーは何時の間にか固体となっていたのだ。そしてセシルはそれを動かせるようだ。多分それを啓介の体から強引に引っ張りだせば啓介の体に穴が空き啓介は死ぬだろう。
啓介は体内にあるエネルギーの塊が体内で動きまわし激しい激痛に襲われた。
「なにこれ。あ、いてぇぇ」
「君の体内に入ってる私の悪魔の力、ユニックスと言うの、それを君の体内で動かしているのよ。」
「そうかよ、じゃお前も少し痛い目に合わせてやろう。」
啓介はセシル長い金髪の髪の毛を捻じ曲げセシルの首を絞めようとしたのだが何も起こらなかった。
「無駄よ、私に君の能力は通じないわ、そもそも私の能力ですもの。もっと痛い目の合わせてやる。」
能力の主でもあるセシルには捻じ曲げ能力は全く効かないようだ。
セシルは啓介の体内にあるユニックスをもっと激しく動かした。今啓介の体内ではユニックスが啓介の内臓にぶつかっているのだ。
「分かった、分かった、分かりましたから止めてください。」
「宜しい、」
セシルがユニックスの動きを止めてくれた。今が彼女への反撃のチャンスだと思った啓介は彼女に直接効かないなら彼女が着ているワンピースを捻じ曲げ彼女の体を絞めつけた。彼女には効かなくっても彼女が着ている服には能力が効くようだ。
「どうだ、これからは私が君のご主人様だ、分かったかいセシルちゃん?」
「防御」
やられた分やり返す啓介、啓介はやられた分取り返さないとつまり復讐しないと気が済まない人間なのだ。今までは力がなくって我慢していたがセシルから力を貰った啓介は我慢などせず誰だろうと構わず復讐する気であるようだ。
そんな啓介の能力により体を絞められていたセシルは顔色一つ変わらないでいる。何ともないようだ。
「何で、痛くないのか、何で顔色一つ変わらない?」
「悪魔の防御魔法の前では人間界で起きる物理攻撃は無意味だ。」
セシルの言葉によると人間界で起きる物理攻撃では悪魔に傷跡一つも与えることは出来ないらしい。そして今の啓介の自分への態度によりもっと怒り出すセシルだった。
「チビと言わんばかりにご主人様を締め付けそのあげくちゃん付けで呼ぶなんて死にたいようね。」
セシルはまた啓介の体内にあるユニックスを動かした。激痛に耐えられず啓介はひざまづいた。
「やめて、やめてください、ご主人様」
「やっと自分の立場を分かったようね、今回だけは特別に許してあげるわ」
「それで俺はお前いや、貴方に何て呼べばいいんですか?」
「ご主人様かお嬢様と呼びなさい、これから一心同体のパートナーとして私達は親しくなる必要があるから特別に今まで通りダメ口なら許してあげるわ。」
「分かりまし、分かったわよ。ごごしゅ、お嬢様」
セシルに完全敗北した啓介は何で俺がこんなチビにご主人様と呼ばなきゃいけないんだとか思いながらご主人様とはどうしても呼びたくなかったためお嬢様と呼ぶことにした。
そして気を取り直してコスプレショップに入ることにする。営業もしてないため扉は閉めてあったので扉を捻じ曲げ入った。中には色んなコスプレがあったのだが啓介はサングラスと桂だけにした。無駄に目立つともっと怪しまれると思ったからだ。
セシルは何らかのアニメキャラのワンピース服が気にったのやらそれを着ていた。
「それは目立つだろ」
「何で?人間界特にこの日本では目立つんだよ、その服は、他のにしてくれ」
「仕方ないわね、可愛かったのに。」
セシルは他のワンピースを選びそれを試着した。ワンピースの服ばかり選ぶのを見てワンピースが好きなようだ。そして帽子を被るセシル、その姿は本当にどこかの国のお嬢様のようだった。
変装が終わり啓介はレジに金が入ってるか確認をする。そこには5万円くらいのお金が入っていたのだが啓介は盗まなかった。自分に何の関係もない人の物を盗んだら自分が嫌っていた総理大臣や犯罪者と同じ人間になりたくなかったからだ。啓介は自分を邪魔するものは虫のように簡単に殺せるが自分と何の関係もなくただ普通に生きてる人間には掠り傷すらくわえない男なのだ。
変装が終わった啓介達はコスプレショップから逃げて路地裏に入りこれからどうするかを決めた。
総理を殺しに行こうとしても居場所が分からない今は無理があるし、啓介は母の墓に行くことにした。
墓までの住所が書いてある紙を刑務所で刑務官からもらったからだ。
墓まではどうせいけないだろうが母の墓の住所くらいは知っとけと刑務官から渡されたのだ。
「その前に何か食べよう」
「そうだね、今思えば俺も何日か食ってないな」
セシルが食事をしようという話で啓介も腹が減ってることに気付いた。刑務所にいたときは理性が飛んで腹が減ってることに全く気付いてなかったがセシルと出会い力も得た今気が抜けちゃったのやら腹が減って来たのだ。
金もないし何かを盗むような悪事もしたくない啓介にとっては最悪だった。コスプレショップで服を盗んだのは仕方ないと自分自身を誤魔化す啓介、本当に矛盾した男だ。
食事をどう確保するか考えている啓介達がいた路地裏に誰か入って来た。
それは男4人組だった。チャラチャラした格好を見る限りどう見てもヤンキーだった。
「おい、てめぇこんなところで女と何してるんだ。」
「私達今酒飲んでもっと遊びたいのに金ないんだわ、貸してくれよ。」
「あいつの彼女可愛くないハーフかなめっちゃ可愛い。」
「君あんな奴と遊ばないで俺達と遊ぼうよ。」
ヤッキー達は啓介達がカップルに見えたようだ。22歳の啓介と年齢不明だけどセシルは16歳くらいに見える。カップルとして見ても無理はない。そして深夜の路地裏で二人っきりいるとなるとエッジなことをしていると誤解されるのも無理はない。啓介とカップルだと言われたのが嫌なのかそれともあんな連中が嫌いなのかセシルは怒ってるようだ。
「啓介、あいつら、殺して。」
「言われなくってもそのつもりだ。」
啓介は刑務所の中で一つの快楽を覚えた。それは自分を邪魔するものと気に食わない奴を殺した時の快感なのだ。啓介はヤンキー男一人の脚を捻じ曲げた。
「あああああああ」
骨ごと片足を捻じ曲げらえた男は地面に転び悲鳴を上げた。その男を見て微笑む啓介とセシル、人が痛くって泣け叫ぶ姿を見て喜ぶ二人は本当に悪魔だった。
自分の仲間の一人がいきなり脚を捻じ曲げられ悲鳴を上げる姿を見てヤンキーたちは戸惑っていた。
「おい、お前一体何をした?」
「お前は死ね。」
啓介は今喋ってるヤンキーの首を捻じ曲げ殺した。残った二人は啓介への恐怖を目のあたりにして倒れている仲間を捨てて逃げる。しかしそれをほっておく啓介ではなかった。逃げるヤンキー二人も首を捻じ曲げころした。
「た、助けてくれ。」
脚だけ捻じ曲げた男が啓介に命乞いをする。
「じゃ金持ってる?」
「持ってるから全部出すから助けてください。」
脚を捻じ曲げられ地面に転がっている男は生きるために必死にポケットから財布を取り出し啓介に渡した。
財布の中には5万円ほどあった。ヤンキーが持っている金額だとは思えない程の高額だ。
「さっきお前ら金ないとか言わなかったけ?こんなにも持ってるのによ。」
「嘘でした。許してください。何でもしますから。」
「何でも?」
「はい。」
「じゃお前一人暮らし?」
「はい、一人暮らしです。」
「じゃ住所教えて。」
「それは何故ですか?」
「言いたくなかったらいいや、殺す。」
「言います、言いますから、身分証に書いてあります。」
啓介がこの男を殺さずに足だけ捻じ曲げて生かしておいたのは家を確保するためだ。今の啓介の家には多分警察官が行ってるはず、だから行けないのだ。それで男一人から家を奪うつもりだったのだ。もし生かしておいた奴が一人暮らしじゃないんだとしたら他の奴の住所を聞けばいい話だったのだ。
啓介は財布から彼の身分証をみた。そこには確かに彼の住所が書いてあった。
暫くの間彼の家で住むことにした。家も確保できたと思い転がっていた彼をころした。
こいつらの死体が警察にばれたら真っ先にこいつらの家に来るのまで考えが及ばなかったことに気付く啓介
「どうしよう。この死体、どこに隠せばいいんだ?」
「何で隠すのほっとけばいいじゃん。」
「こいつの死体が警察にばれたらこいつの家で住めなくなるんだよ。」
「そうか、それなら私に任せて。」
セシルは右手の人差し指を噛んだ。その一刺し指から赤い血が流れ出た。そして地面に何かを描いた。それは魔法陣だった。魔法陣を全部描いたセシルは何かを詠唱した。その詠唱が終わった直後魔法陣はブラックホールのようなものになった。セシルの言葉によるとゲイトという魔界と人間界を繋げる入り口らしい。
セシルの命令により啓介は何で俺に命令するんだとか不満気な顔で死体をゲイトに投げ入れた。
啓介はゲイトの中を見ながら魔界はどんなとこで魔界のどこに繋がっているのか気になった。
「あのさ、あいつらの死体は魔界のどこに送られたんだ?」
「私の可愛いケルベロスの皿の中よ。」
「ケルベロスって何?」
「私の犬よ。」
啓介達はそんな雑談をしながら死んだ彼の身分証に書いてある住所に向かった。
近かったため歩いて20分くらいで着いた。彼の家は一人暮らし向きのワンルームであるアパートだった。
室内はヤンキーの家だと思えない程片付いてあった。
「片付けるわよ。」
「何を別にいいじゃん、結構片付いてあるんだし。」
「ダメ、要らないものが多すぎ、それに部屋も汚い。掃除して。」
部屋もきちんと片付けてあるにも関わらずセシルには汚いように見えるようだ。
啓介は仕方なく彼の趣味のものや要らないものは全部ゴミ袋に入れ捨てた。掃除中には家の主の通帳とカードも発見した。優しくも暗証番号付きで、多分自分自身が暗証番号を忘れたときのための物だろう。
金額を見てはヤンキーの分際で貯金もしていたようだ。
セシルは何もせずただベットに座り込んでいた。
「お前も手伝えよ」
「今何て言った。」
「すいません。お嬢様も手伝ってもらえませんか?」
「あんた高貴な私に掃除をさせるつもり、暫くの間だけどこんな狭い家で暮らしてあげてるという私に感謝の言葉どころか掃除を手伝えだと、まだ教育がなってないみたいね。」
セシルはまた啓介の中にあるユニックスを操り啓介に激しい痛みを与えた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、私一人で掃除しますから。」
「分かったみたいね、さっさと掃除しなさい。」
あの女いつか復讐してあげると思いながら啓介は黙って掃除を続けた。雑巾で家の隅々までピカピカに光る程拭いた。
「疲れた。もういいでしょ。」
「まだ残ってるわ、ベットのしたよ。」
どうせ何を言っても無駄だと思った啓介は雑巾でベットの下を拭いたのだが手に何かがあたった。
想像通り一人暮らしの男のベットにあるのとはもちろんエロ本だ。お嬢様ぶってる悪魔の少女にエロ本を見せたらどんな反応するか気になる啓介はそのままエロ本を取り出した。
その後セシルの目の前でわざとらしく本を背中の方に隠す啓介、啓介の思惑通りセシルは興味を持ったようだ。
「それ何、何で隠すの、見せなさい。」
「それはちょっと見せづらいというか。」
「ご主人様の命令よ、早く見せなさい5,4,3,2,1、」
「分かりました。ご主人様、」
啓介は微笑みながらわざと本を開いてエロいシーンがあるページにしてセシルに渡した。
渡された本を黙って読んだセシルは顔が赤くなっていた。
「あんた何てもん見せるのよ、へ変態、死ね。」
「だってお前が見せろって言ったじゃないか?」
「お、お前だと、こんな本を見せびらかしたあげくまた呼び捨て、私が甘かったわ、スパルタ教育の必要性を感じたわ。」
セシルはまた啓介の体内にあるユニックスを操り啓介を痛めつけた。いつものながらその痛みには慣れない啓介だ。体内から発生する痛みは誰でもなれないはずだ。内臓を直接攻撃されるようなものだからだ。
「やめてくれ、やめてください、お嬢さま。」
「嫌よ、今回は許さない、そうね、そんなに許してほしければ私の足を舐めて忠誠を誓いなさい。」
セシルは内臓の痛みにより腕で腹を挟んでひざまづいている啓介の前に自分の足を突き出した。
啓介はセシルの短いワンピースから見える太ももからの細くって綺麗な足を見て興奮した。何故なら彼の中学時代からのあだ名は脚フェッチだったからだ。そんな啓介にセシルの命令は屈辱じゃなくご褒美だったのだ。特にセシルは啓介の理想の脚である白くって細くってそれとしても骨の線が見える細さじゃなくモデルのような細くって綺麗な脚だった。啓介のような脚フェッチにとってはこんな素晴らしいシチュエーションはないだろう。
啓介はセシルの脚を舐めた。それも足指からまるで犬が骨にかぶりつくように激しく舐めて吸って舐めまわした。そして徐々に太ももまで舐めていった。そこで自分の命令ミスに気付いたセシルは自分の脚を舐めまわす啓介の顔を蹴った。気持ち悪すぎて耐えられなかったのだ。
「あんた。正気なの、マジで変態だったの、気持ち悪いんですけど、マジで死ねよ。」
「何で蹴るんだよ、お前が、お嬢様が舐めろって言ったでしょうに?」
「私はあんたに屈辱を与えるために舐めろと言ったのよ、それなのにご褒美のように私の脚を舐めまわして。」
「仕方ないだろう。俺はな俺は昔から女の子の特にお前のような白くって細い綺麗な脚が好きなんだよ。いや愛していると言っても過言ではない。それほど脚が好きなんだよ、大大好きなんだ、犬に生まれてご主人様である綺麗なお嬢様の脚を舐めたいくらいに俺は女の子の滑らかな脚がちょちょ大好きなんだ。
だから今みたいなお前の脚をいつでも舐めることが出来たらお前の下僕でも犬でも何だってなってやるぜ。」
啓介は暴走してしまった。それほど啓介の女の子の脚への思いは格別だったのだ。それと最後のセリフはセシルを引かせてこれからご主人様やお嬢様と呼ばせない理由もこもっていたのだ。
啓介の脚フェッチだという叫びの告白は窓の外まで流れ出した。掃除をしていたため窓は開けっぱなしで朝6時30分だったので外でジョギングしている人にまで聞こえてきた。ジョギングしていた女性も啓介の脚フェッチの告白に気持ち悪いと思うしかなかった。どんな人が聞いても気持ち悪いだろう。
啓介は今まで彼女が一度も無かった。その理由は啓介が中2の頃教室で女の子に告白した事件のおかげだ。
「啓介は同じクラスの好きな女子に君の綺麗な脚が好きだ。だから私にその脚を舐めさせてくれ」と中2らしい告白をしてから噂になり高校に入ってもその噂は消えずずっと彼女が出来なかった。
まさに啓介の暗黒時代ともいえる。つまり啓介はセシルのおかげで今初めて願いを一つ叶えたのだ。
「マジ引くわ、近い寄らないで、これから私の脚見ないで、マジキモイ。」
「俺はただご主人様であるお嬢さまの命令に従っただけです。」
「もうご主人様とかお嬢様とか呼ばないで気持ち悪いから。」
啓介の作戦は成功した。自分の人間としての尊厳と引き換えにセシルをご主人様やらお嬢様やらと呼ばなくって済んだのだ。
セシルの啓介への警戒がひどくなった。今までは男として見るどころか下僕扱いをされていたのに今はまるで性犯罪者扱いをして布団で自分の脚を隠している。ただご主人様とお嬢様と呼びたくないだけを計算にいれセシルが自分を警戒して脚を隠すとは思わなかったのだ。
(どうしようこのままじゃ短いワンピースやミニスカートとか来てくれなかったらどうしよう。俺は長いワンピースは嫌いなんだ。)
「お嬢様何で足を隠すのですか?」
「きもいんだよ、お嬢様と呼ばないで。」
「じゃ何て呼べば?」
「好きにしなさいよ」
「はい、分かりました、セシル」
「キモイ。」
セシルへの呼び捨てに成功した啓介の勝ちのようだ。何故か今の言い争いで腹が減って来た啓介、さっきまで腹が減っていたのだまた忘れていたのだ。もう二日何も食べてない。セシルも腹が減ったようだ。
今のふざけた言い争いで二人共緊張が解けて一気に腹が減ったようだ。啓介も今までの辛かった母の死や刑務所でのおきごと何もかもスッキリ解消されたようだ。
緊張が解けてからなのやら啓介はいきなり泣いた。自分の無力で母を亡くしたことに罪悪感と母に恩返しどころか葬式すら行けなかったことに自分の情けさに腹が立ちながら母に面目が無かったからだ。
「ごめんなさい、お母さん、ごめんなさい。本当にごめんなさい。」
引いていたセシルは死んだ母を思いながら泣いている啓介を見ていられなくなって抱きしめてあげた。
今の啓介は何のエロいことも考えられずにただセシルの胸に顔を沈めて泣いた。
何分くらいなき辛かったことを全部流したようなスッキリとした顔になった。そして何もなかったように立ち上がった。女の子の前でお母さんと泣き叫んでいたことが少し恥ずかしかったのだ。
「ありがとうなセシル、コンビニで何か買ってくるわ、何がいい?」
「私、コップラーメン醤油味で」
「分かった。行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
啓介は玄関の扉を閉めてコンビニを探しにいった。そういえばあいつ何でカップラーメン知ってるんだ?と今更思う啓介だった。そして近くのコンビニに寄りヤンキーから奪った金でカップラーメンの醤油味と焼肉弁当を買った。変装してからかまだニュースになってないやらコンビニの店員の啓介への態度は何の変哲もなかった。来る途中電柱や壁などを見ても啓介やセシルの顔の写真を貼ってあるポスターはなかった。
啓介は色々ありすぎて何日か経ったように感じたのだろうしかしまだあの事件から一日すら経ってない。
いや今日起きた事件なのだ。そんなポスターもう貼ってあるわけがないのだ。
啓介は眩しい朝日を見ながら今日から新しい人生の始まりだと自分に言い聞かせながら家に帰って来た。
靴を脱ぎ室内に入って来たのだがセシルはベットの上で涎を流しながら寝ていた。
セシルも昨日の夜から寝てないから疲れているのだろうと啓介は布団を敷いてあげた。
啓介も疲れていたのだがそれよりももっと腹が減っていたためコンビニで買ってきた焼肉弁当を食べた。
食べ終え眠りに襲われ啓介はセシルの隣が気持ちよさそうで布団に入りセシルの隣でセシルより先に起きないと俺殺されるなと思いながら横になった。