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横山ちゃんは可愛くない

作者: 黒雪白雨

横山ちゃんは可愛くない


 横山ちゃんは可愛くない――少なくとも私はそう思っている。

 しかしクラスメイトは皆、口をそろえて言うのだ。

 横山ちゃんは可愛いと。


 彼女たちは言う。横山ちゃんはなんでも手伝ってくれて、とても優しいと。

 でもそれは違う。横山ちゃんはそうやって人に優しく接することでクラスの人気者になりたいだけだ。極力敵を作らず仲間を増やす。私にはわかる。


 彼女たちは言う。横山ちゃんは頭が良く、スポーツ万能で素晴らしいと。

 確かに横山ちゃんはいつも学年1位だし、運動も得意だ。

 しかし、それは横山ちゃんが毎日予習復習を欠かさず行っている努力の賜物だし、彼女は水泳とマット運動が苦手で決してスポーツ万能なわけではない。横山ちゃんはただその努力と欠点を隠し通しているだけだ。私にはわかる。


 彼女たちは言う。横山ちゃんは容姿端麗でスタイルが良く、モテモテだと。

 確かに横山ちゃんは美人だし、艶のあるショートカットはとても魅力的だ。告白された回数など数えきれない程だろう。

 けれどそのプロポーションを保つのも大変だ。実際、横山ちゃんは毎朝のランニングを欠かさないし、風呂あがりのストレッチやマッサージなども欠かさず行っている。そんな横山ちゃんは誰とも付き合わない。横山ちゃんは自分が一番好きなのだ。私にはわかる。



 ふと気づくと掲示板の前に人だかりができている。この前のテストの成績上位者が貼りだされたのだろう。よくもまぁこんなに集まるものだと思うが、私も見に来た内の1人なので素直に人だかりの一員として掲示板へ向かう。

 すると人が次第に横へと捌けて行き、あっという間に掲示板の前へと到着する。掲示物を見ると結果は予想通りだった。



1位 横山ちゃん



 当然の結果だ。横山ちゃんが負けるはずがない。

 そう思いながらも、ほっと息をつく。


 あとはHRが終われば下校の時間だ。今日は誰にも手伝いも頼まれていないし、運動部の助っ人もない。屋上や校舎裏への呼び出しもない。ゆっくりお風呂にでも入ってのんびりしよう。もちろん上がった後のストレッチも忘れずに。

 そんなことを考えながら教室へと歩を進める。


 私は横山ちゃんのことならなんでも知っている。

 横山ちゃんが大好きだ。

 だからこそわかる。



 ――横山ちゃんは可愛くない


 



 思わず微笑んでしまった私は、人に見られまいと窓の方へと顔を背ける。

 するとそこには窓に映る大好きな横山ちゃんの笑顔があった。


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