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深海探偵

作者: 新月 雫

 深海魚は深海の暗いところから明るい上の方へいくと、たまにそれを人間が見つけたり…………まぁ、なんだかんだして元いた場所に戻れない。

 海の水の中みたいに青い色で統一した部屋の天井を見ながら、僕こと深海探偵は呼吸と思考以外特に何もしない。

 ちなみにこれは本名じゃない呼び方で、探偵とはいっても事件なんて推理しないし、人間同士のしがらみだとか言い具合の関係だとかへの興味関心が高いわけではなくて、他人への興味はどちらかと言えば低い方だ。あんまりにも低すぎて関わる気持ちも起きず、だから学校に行くのはテストのある日くらいか。

 名前の由来は微妙に響きが良いから。それだけのことだ。

 誰も深海探偵と呼ぶことはない。

 だって誰にも名乗ってはいないから。

 ああ、余計なこと考えちゃったな…………目が覚めているからなんだっていうんだ。

 思いつくことをしても、過去に1度はやったことだったり毎日することだったりするから、刺激と言うほどのものでもなく……そう言えば何時ぐらいだろう。

 起き上がって近くの時計をみていまが何時くらいかを確認した。

 夕方ぐらいだから外に出よう。

 パジャマの上にスタジアムジャケットを羽織り、鞄の中に財布があることを確認してから部屋を出て一階への階段を上がる。

 廊下を歩いていたら祖父が畳の部屋から出てきた。

「出掛けるのか」

「うん」

 祖父と言えども何故だか父親と間違われるくらいには若い見た目をしていて、写真を見ても僕が小さい頃から姿の変わっていなくて……。

「今日は化け物もどきが徘徊する祭りだと」

 出掛けるときにはいつもこうして何か一言声をかけてくれる。

「化け物祭り?」

「ほら、西洋の盆で馬鹿騒ぎする」

 そうか、そんな時期か。

 じゃあいつもみたくパジャマで出歩いていても何の違和感もないな。

「転ぶなよ?」

「いってきます」

「遅くならないうちに帰ってくるんだぞ」

「うん」

 玄関から外に出て、沈むことを色と位置で主張してくる太陽を背中に近くにあるバス停まで歩き、ちょうど来ていたバスに乗り込む。

 窓を眺めていたら、病院前のバス停についたアナウンスが流れて下車するボタンを押しそうになる。

 今日は母さんに会いに行くわけではない。

 そうこうしているうちに遊園地前のバス停に到着して、そこで降りた。

 学生の料金で入園して、入り口にいた着ぐるみからあめ玉と風船を貰い、ベンチに腰掛ける。

 視界に入る他の人達はたしかに仮装をしていた。

 楽しい雰囲気の音楽が流れ、木の枝に巻き付けられた電飾には灯りがつきはじめて……楽しい気持ちになる人にはそうなるんだろう。

 来たことにもう満足してしまって、特別乗り物に乗る気力は無く、楽しい気持ちがでてくる様子も無く……。

 あめ玉を口に含むと、ドロップの苺の味がした。




おわり

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