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5話 異世界だって同じ

前回のあらすじ。

Go to FESTIVAL!!

カップルご一行が街につくと、そこは昨日とは比べ物にならない程の人達で賑わっていた。

異世界召喚初日に来たときもある程度賑わってはいたが、さすが街の聖誕祭となると人々の賑わいようも違う。正直な感想、ここまで騒がしい街だと、敵なんて居ないだろうし、他の国からの侵略なんて事もないようだ。


「人多いね」


「そうだね。普段も皆ワイワイやってるけど、聖誕祭となるといつも以上だよね」


「やっぱどの世界も大きな祭りとなると皆はしゃぎたくなるものなんだな・・・・」


「さてと!じゃあ回ろっか!さっきも言ったけど、私、お祭り初めてだから、しっかりエスコートお願いしますね。執事様?」


 アイリは浴衣の袖を摘まんで、貴族風挨拶をした。例え衣装が違えど、その愛らしい行為に恋心を揺さぶられない男は居ないだろう。


「かしこまりました、アイリお嬢様」


 アイリの挨拶につられて、レンも執事風挨拶をした。 こうして自称お嬢様と自称執事のお祭り巡りが始まった。


「よろしいですか、アイリ様?こういった縁日の時のお祭りなどでは、どこを回るか先に決めるものではなく、適当に回って行くものなのです」


「ねぇ、レン。エンニチって何のことなの?」


「縁日ってのは神仏との有縁の日のことで、神仏の降誕・示現・誓願などのゆかりのある日を選んで、祭祀や供養が行われる日のことだよ。ちなみにウィキペディア参照だ!」


「うぃきぴでぃあが何なのか分かんないけど、レンってやっぱり物知りだね!」


 周りには屋台がたくさん出ており、たこ焼き屋や焼きそば屋といった定番の食べ物屋を始め、輪投げやボール掬いなどといった遊びを楽しむものまで出ている。まさか祭りの風景、屋台、遊びまでレンの居た世界と同じだとは思わなかった。

 そんなこんなで周りを見ていると隣のアイリが急に足を止めて何かを見つめている。


「どうしたの?」


 止まったアイリの見つめる先には綿菓子屋があり、街の子供達が沢山並んでいる。大人気の商売繁盛だ。


「もしかして綿菓子見るのも初めて?」


 祭りに来る前日、アイリは祭りに来るのは初めてと言っていた。ということは綿菓子を見るのも初めてのはず。そんな事は分かっているがレンのいたずら心が顔を出した。


「うん、だって雲を集めるなんてどうやってるのか気にならないの?」


「ブッ!アッハハハハ!」


 予想をしていたとおりの回答にレンは、堪えきれず笑い出した。 実はレンの幼少期もよく綿菓子の事を雲と呼んでいたのだから、まるで鏡を見ているようだ。恐らく綿菓子を初めて見る人は皆、同じ事を思うはずと思っていた。


「もう!なんで笑うの!」


「ごめんごめん。昔俺も同じ事を思ってたなーって思い出して」


「何よ!レンだって同じ事思ってるんじゃない!」


「だからごめんって。そんなに気になるのなら買って来たら?お金はある?」


「お金なら大丈夫よ!出る前にセルヴィから沢山貰ったから!そういうレンこそ大丈夫なの?」


「えっ?あっ、そういえば…」


 指摘を受けて改めて自分が一文無しだった事を思い出した・・・・。 この世界に来て二日。物語はスラスラ進んで当たり前のように、寝床を確保していたが、実際に考えてみると、この世界に持ち込んだ物っていたら、通っていた学校していの制服くらいだ。


「大丈夫よ!心配しなくても欲しいものがあれば私に言って!何でも買ってあげる!」


 一体何処のダメ親だろうか…。

しかし、無一文のレンにとってその言葉は逆に救いの言葉でもある。でもやっぱり・・・・。そんな表情を見てか、アイリはさらに言葉を続ける。


「それにレンに案内して欲しいって頼んだのは私の方なのよ!何か私の方からもさせて?」


 正直、男として女の子にお金を自分の分まで払わせるのは気が引けるが、現状一文無しである。ここは格好悪いがお言葉に甘えさせて貰おう。そしていつか返そう。出世払いで。


「なら…、お言葉に甘えて」


「うん!よろしい!なら、私は買ってくるね!レンもいる?」


「いや、俺はさっき食べたばかりだからいいよ。アイリの分だけ買ってきなよ」


「ふーん、わかった。じゃあ少し待っててね。」


 少し不機嫌そうな顔をしたアイリは、まるで子供のように上機嫌になり、綿菓子の屋台に向かっていった。幸いやり取りの間に人が少なかった為、すぐに買ってレンの元に戻ってきた。


「そういえば買ってきたのは良いけど、これってどうするものなの?」


 周りには綿菓子を食べている人がいないため初めて見るアイリにとっては綿菓子をどうするものか分からなかったらしい。 そんな不思議そうに綿菓子を眺めるアイリにレンはやっぱり笑いがでる。


「アイリ、それは食べ物だよ」


「え!?雲って食べ物だったの?」


「実際は全然違うものだけどね・・・・」


「そうなの?えっと、じゃあいただきます・・・・」


 恐る恐る食べ始めたアイリは、食べた瞬間その表情を驚きに変化させた。


「びっくり!甘いね!これ!雲じゃなくてえーっと綿菓子!」


 想像以上に美味だったらしく、初めとは比べものにならない程のスピードで食べ始めた。しかし、半分くらい食べ終えたところでレンの顔を見る。


「どした?」


「えっ、と。その、そんなに見られるのは恥ずかしいんだけど・・・・」


 レンは無意識のうちに菓子を食べるアイリを見つめていたらしい。異世界だったから良かったものを元の世界だと間違いなく蔑まわれ、警察のお世話になるはめになっていたはずだ。


「ご、ごめん・・・・そんなつもりじゃ・・・・」


「あっ!なるほど!わかった!」


 手をたたき何かを納得したようだ。その姿に思わず「その思い付き方古いよ」とツッコミを入れる。

アイリはレンのツッコミを無視して、笑顔で話しを続ける。


「レンも欲しくなったんでしょー、しょうがないなぁー、少しあげる。ハイ!」


「いや・・・・でも・・・・」


 アイリ本人は気づいてないようだが、このまま行くと間接キスをしてしまう事になる。当の本人は全く気づいていないようだが後で訴えられたりしないだろうか?


「ん?なぁーに?遠慮しないで、ほら!」


 戸惑っているレンを見て、アイリは躊躇するなと言わんばかりの勢いで迫ってくる。これが本物のカップルだったらどれだけ幸せなことだろうか?しかし現実、レンはただの居候。だがこんなチャンスを見逃すわけにはいかない!


「えーっと、アイリは気にしないの?」


「もう!食べないなら私が全部食べちゃうよ!」


「じゃ、じゃあ。い、いただきます。」


 綿菓子を一口食べる。口の中に入れた瞬間、ほんのり甘い味が口の中に広がり、その直ぐ後に氷の様に溶けていった。祭りに来てお菓子を食べるなど、小学校の低学年以来だ。懐かしい味に昔の記憶を呼び覚ましながら甘い味を堪能する。御崎家全員でよく夏祭りに行き、母が買ってくれた綿菓子。当時は1人で食べるのは多すぎて、妹と半分に分けていた。家族を思い出し切ない気持ちになる。会いたい。もう一度家族に会いたい。きっと元の世界では何も言わずに消えたレンを心配しているはず。


「どう?どう?」


 過去の軌跡の旅はアイリの言葉で終わりを迎えた。

 アイリは目を輝かせ、レンの反応を待ち遠しにしている。


「うん!美味しいよ!」


「よかった!じゃあ、もっと回ろっか!」


 勢い付いたアイリは、レンの手を引きながら走り出した。


「ちょ、アイリ!急に走り出したら危ないよ!」


 注意はするものの、初めてのイベントだ。はしゃぐのも無理は無い。

何と言ってもアイリの顔はとても楽しそうで幸せそうな表情であるのだから。


 しばらく2人は街中を歩き、さまざまな店を回った。元の世界と同じ作りの祭りだったため、レンは特に迷うこと無く周回する事が出来た。主役のアイリも楽しそうに輪投げをしたり、射的をしたりと大満足のご様子。


 ある程度の店を回り終わった2人の目の前に大きなステージが見えてきた。それは、後ろにも見えるように大きなスクリーンがあり、配慮の効いた催し物だ。

いや待て!そもそも科学もろくに発達していないような世界でどうしてスクリーンなんてあるんだ!?


「ねぇ、アイリ。あの大きなスクリーンには、どうやって撮してるの?」


「スクリーン?スクリーンが何なのかはわからないけど、あれは水魔法の一つで遠くで起こっる出来事をああやって、投映するの。私、水魔法使ったことないから分かんないんだけどね」


 なるほど、魔法ね、なんとも便利なものだ… 。アレを魔法でしていると思うと、この世界はとても凄いと感じる。 関心に浸っていると、催し物の司会らしい人の声が聞こえた。


「さぁさぁお集まりの皆様!お待たせしましたぁ!本日のメインイベントの『街一番の美少女を落とせ!』を開催したいと思いまぁーす!」


 スクリーンに映し出される派手な格好をした司会者は、ヒラヒラの付いた服で回りながら行事を進行している。


「しかぁーし!残念なことにー、一般応募から募った参加者の1人が急遽欠席となってしまったのでー、今この場に居る皆様方から選びたいと思います!」


 司会者は怪しいサングラスを付けたまま会場をぐるりと見渡す。そして何とも喜ばしい表情になった。その顔はスクリーンいっぱいに映し出されているのだから良く分かる。


「見つけましたよぉー!そこの可愛い女の子と居る少年!カム!ヒヤァァー!」


 一体誰が選ばれたのだろう。 可愛い女の子。誰だろ?すると周りの人達は皆、レンを見ている。


「あれ?もしかして、俺?」


 レンはこの訳の分からない状況に自分を指さし確かめる。


「そうそう!きみだよぉ!こっちへおーいで!」


 司会者が指をくいっと立てると、レンは何かに引っ張られるかのようにステージまで凄い速さで引き寄せられた。連れて行かれる瞬間に分かったのはレンの浴衣を掴んでいるのは手。風で出来た手である。


「おわぁぁー!何だこれ!」


 気づけばレンはステージの中央に四つん這いとなっていた。 するとカツカツと足音を立てながら司会者が近づく。


「さぁーて、教えてちょうだい!君の名は?」


「はぁ、はぁ、レン…です。てか、はぁ、大ヒット映画の名前使うなよ・・・・」


 訳の分からない事を言ってしまったが、既に息が切れた状態のレンは走った後のように疲れている。


「レン君ねぇー!りょーかい!ではでは時間も押してきているので早速始めたいと思いまぁーす!」


 お疲れのレンを無視して司会者は両手を広げ始まりを告げた。舞台の上に2人の男が上がって来た。しかもイケメン。


「なっ!イ、イケメンだと!?」


 場の流れと、もはや場違いな雰囲気に行き場を無くしたレンは、観客の中からアイリを探す。何と言うことでしょう!アイリは観客席の1番前まで来ていた。そして可愛らしくもレンに手を振っている。

よし!頑張ろう!レンは決意した。


「さぁーて、今回集まっていただいたのは光明都市ルーチェが誇るイケメン達でございます!これからやっていただくのはぁー!どうぞ!」


 司会者がステージの右端を指すと、花のようなドレスを着た黄色い長い髪の美少女が現れた。その美少女が出てきた途端、観客達が一斉に盛り上がった。

アイリは「私の方が可愛いもん!」と拗ねている。


「さぁ!参加者のお三方!この美少女!エレンをキュンとさせて下さい!」


 意味の分からない事を言う司会者だが、紹介されたエレンも満更では無い表情だ。

 なるほど、彼女を口説けって事か…。

イベントの内容を理解したレンはこれは無理だと悟った。だって女の子口説いたことないもん!しかも相手がイケメンとかマジで無理じゃん!蚊がライオンに勝てるわけ無いだろ!?馬鹿なの!?


「でぇーは!エントリー何番1番!武器屋の1人息子ラーフェルさん、どうぞ!」


 人の準備など知らず司会者は早速告白タイムを始めた。どうやら順番は最後のようである。

まぁいいさ。イケメン、お前の実力を見せてもらおうか!


「エレンさん。今日の髪型、素敵ですね」


 初戦を預かった武器屋のラーフェルはエレナの髪型を褒めに入った。確かに、黄色いロングの髪を右側に編み込みし綺麗に下に流している。普通に可愛い。


「あっ、分かる?今日お祭りって聞いたから、はりきったんだ!」


 その透き通るような声に会場中の男達は虜にされた。もちろんレンもしかり。

アイリは「私の方が良い声だもん!」と拗ねている。

 エレンは嬉しそうに言って、ラーフェルを見る。


「気づいてくれてありがと、ラーフェルはとっても優しいのね」


 こうして武器屋のラーフェルの戦いは終わった。ほんの数分の出来事であるが幸せな時間を堪能したラーフェルは満足の表情だ。恐らくこの男達は勝つこと目的では無く、エレンに癒やされようとするのが主目的だろう。


「いやいやー、女の子は小さな変化にも気づいてもらいたいものですからねぇー、それを突いたラーフェルさんはさぞ、立派なお方なのでしょうー」


 司会者は戦いの解説をする。適当な喋りっぷりにレンはため息を吐きながら観客席を見る。アイリは少し拗ねた表情でご機嫌斜めだ。何故だ?


「さぁーて!続いてはぁー!エントリー何番2番!これは珍しいですねぇー、博士のステラさん!どうぞ!」


 続いて第2戦。謎の職業、博士のステラの戦いだ。


「エレンさん」


 ステラは真っ直ぐエレンを見つめる。その真っ直ぐな視線にエレンは心を奪われ、お互いが見つめ合う。


「な、なんでしょうか・・・・?」


「今日は貴方に会えると聞いてミティアの花を用意しました」


 そう言ってステラは後ろから大きな花束を渡した。見たことの無い花にレンはなんだあれと呟いた。するとエレンは驚いた表情を見せる。


「わぁ!ミティアの花!私大好きなの!この花の香りとっても良い香りで誕生日の日はいつも貰えるの!」


「奇遇ですね!僕もこの花が好きなんです。僕はこの花の形が好きで、正直言うと毎日見ていられるくらいです」


「ステラさん・・・・。素敵な御方なんですね。私、虜になっちゃいそうです!」


 エレンの言葉を残し、ステラの戦いは幕を閉じた。こうして、いつの間にかレンの順番が回ってきた。レンの出した結論は、どうあがいてもあのイケメン達には勝てない。である。逃げ出したい気持ちでいっぱいだが、アイリの前でかっこ悪い姿は見せられない。


「さぁーて!楽しいイベントもこれが最後となりまーす!エントリー何番3番レンくんでーす!」


 アイリが固唾を呑んで見守る中、ミサキレン戦いの幕が切って落とされた。

今回は女の子の口説き方ということで調べていると、近くにいた女性から気持ち悪いの一言を頂きました。大変申し訳ございませんでしたm(。>__<。)m

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