38話 神話の激突
「うぉぉ!」
「やれぇ!これ以上街に魔獣を侵入させるなぁ!」
「男の意地見せたれぇ!」
鉄鋼都市周辺から迫る魔獣の軍勢。都市の出入り口付近では聖鋭隊が守護している状態だが、空中から飛んで襲いかかる魔獣に対して全てを防げる訳では無い。
その為街の至る所では魔獣による被害。そして黒い人型の怪物達によって混乱を招いていた。
しかし鉄鋼都市の男達は違った。どんな困難や危険に苛まれようと力を合わせて困難を押しつぶす団結力。そして勇気を持っている。
ならば恐れることはあるだろうか。否。
そんなものないわぁぁ!!!!
♢
~遡ること数時間前~
「アッハハハハ!」
響く笑い声。
降り注ぐ黒い斬撃。
そして雨をくぐり抜け時折手に持った棍棒にて攻撃を弾く女戦士―アテナの姿が見える。
戦況はどちらも防戦一方。言わば綱引きの状態が続いている。
決め手に欠けている両者は互いに遠距離からの攻撃に鉄則し、相手の隙を窺う。だが、そんな隙を見せないことなど、どちらも収集に承知していることだ。
「ねぇアテナ。いつまで力を隠しておくつもりなんだい?」
「……」
「ヘラクレスの武器を振り回してばかりだけど、君本来の力を出さないと、死んじゃうよ?」
「……」
ロキの挑発を聞くアテナだが、それに従うほど阿呆ではない、が。
「そうだな。お前の要望に応えてやるのだ。」
「…。そうでなくちゃね。」
ロキの策に乗るつもりでアテナは笑いかけた。そしてそれをみたロキも笑みを見せる。
アテナは右手をロキに向けると、その正面に大きな魔方陣が描かれる。
「『神の爆風』。」
魔方陣を中心とした半径20メートル範囲に暴風が吹き荒れ始めた。風は1つとなるようにアテナの魔方陣の中心に集まると、そこから一気に空中に立つロキに向けて放たれた。
(防御は……不可能かな。)
魔力圧から防御は不可だと考えたロキ。だが神速と呼ばれるアテナの攻撃はロキが認知した瞬間には既に回避不可能の距離に到達していた。
「『神壁』。」
ロキの目の前にアテナと同じ魔方陣が描かれた透明な壁が出現。空気の壁はアテナの攻撃からロキを護り、攻撃を受ける事無く逃れた。
「さすがアテナの攻撃は速いね。この僕でさえ反応に遅れたよ。」
「微少の魔力で放ったとは言え、よく防御できたな。褒めてやるよ。」
「ハハハッ。君に褒められるのは嬉しいね。まぁでも流石『神術』同士のぶつかり合いだね。見なよ。僕らの周りがもうめちゃくちゃだぁ。」
2人の周りは既に崩壊の崩壊。壊れた建物をさらに破壊している。この中に逃げ遅れた人間がいないといいが。
アテナは心中で考えた。
「しかし、『神術』を使えると言うことは、神の力を殆ど持った状態でこの世界に居るということか。ますますお前を呼び出したのが誰か気になるな。」
「残念。それは教えられないよ。」
「お前が統率している、若しくは所属している黒使団のガミルとレグルス。そいつらが奇襲をして来た事は知っている。この数百年静かにしていた筈のお前達がどうして今更動き出すのだ?」
「あえて言うなら“黒い神話”の実現。それが僕らの最終目的さ。」
ロキは続ける。
「あの神聖戦で僕らは指導者を失った。でもそれさえも『あの方』にとっては作戦の内なのさ。」
揚々と話を続けるロキ。アテナはその言葉にかつての記憶を呼び覚ます。
「“漆黒の神ヘルディス”か。」
脳裏に蘇るのは、愚かにも神殿を襲い、世界を闇に包もうとした神の話。
「お前が我々を裏切ってまで成し遂げたいのがそれか?」
「さぁね。」
アテナの言葉にロキは答えない。
アテナ自身統神から詳しい話を聞いている分けで無く。神聖戦の詳細についてもあまり詳しくない。
そんな中でもアテナには1つ疑問があった。
「1つ問う。古の神聖戦の時、統神は我ら統率者20神を祭壇に集められた。だがその時、お前ともう1人。誰かが居なかった。」
「……。」
「どうもその時の記憶があやふやで覚えていないが、お前ともう1人、一体誰だ?」
「……。」
アテナの質問にロキは答える様子無く、ただじっと上空からアテナを見下ろす。
「私の見立てでは、そのもう1人が我々の情報を敵に流し、混乱を招いた犯人。そしてお前が、統神を殺した。違うか?」
「……。」
「何も答えない、か。」
ロキの反応を見てアテナは再び棍棒を強く握る。
「どちらにしてもお前を拘束する。話はその後だ。」
「さぁて。君に出来るかな?」
♢
一方、鉄鋼都市の外では
「くそっ!キリがない!」
闘技場で敵を一掃したシンは、同じ隊が守護している都市外の援護に来ていた。
戦況はまるで最悪だ。
敵の魔獣達は数を減らすこと無く襲いかかり続け、こちらの隊員も既に半分近くが負傷している。回復班にはアグレナ・アンデルフォルツが居るため、さほど心配はしていないが、今の現状で戦えるのはシンと、リヒトの師匠であるローガン。【ジェイド】の教官であるバグジェイドとその他隊員達の計50数名のみ。敵はその倍程の数で攻め込んで来ており、何体かは都市内への侵入を許してしまっている。
「隊長!このままではここは保ちません!一端退避すべきかと。」
女隊員がシンの元に駆け寄り話す。
現状としてはそう考えるのが妥当。だが、そうしてしまっては都市への被害が増してしまう。
「それはダメだ。俺達がここで引いてしまえば、街への被害、住民への被害が大きくなってしまう。きついかもしれないが、ここは踏ん張るところだ。」
「分かりました。」
「頼んだぞ。」
とは言ったものの、ここで自分たちが死んでしまってはもともこも無い。
シンは迫る魔獣の軍勢を見た。
すると遠い向こうで地響きが鳴り響いた。
「何だ?」
「たっ、隊長!」
すると隊員がシンの元に来た。その顔から良い情報では無いことは明らか。
「ここから数百メートル先の地点より、巨大な人型魔獣が接近しているとの情報が入りました!」
「なにっ!?大きさは?」
「恐らくこの付近の針葉樹よりか大きいかと…。」
「……くっ。分かった。お前は後方に下がり、戦況を説明してこい。最悪応援が必要になる。」
シンの言葉を聞いた隊員は走り去った。
「くそっ!」
シンは走り出し、その魔獣が居るとされるエリアまで走った。
そして見つける。その姿を。
「何だよ。あれ……。」
目の前に近づくのは、巨大な人型の魔獣。そこまでは報告通りだ。しかし、問題なのはその容姿。まるでたくさんの人間を吸収して作られたかの様に、所々に手や足が見られる。
まさに化け物だ。
「はぁぁぁ!」
シンは自前のバスターソードで斬りかかる。だが、その頑丈さは鉄よりも固い。
「ぐっ!」
攻撃を弾かれたと思えば、次は敵の攻撃。口と思われる穴から強力な火属性の魔力を感知する。
(まずいぞ!!)
放たれた火線はシンに直撃。しかし剣でガードしたお陰で、難を逃れた。と思った。攻撃は密に集中されており、魔法攻撃の筈なのに重圧が強い。
剣を傾け攻撃から逃れたシンは敵との距離をとった。
(やばいな。普通に攻撃してもノーダメージ。あれが街に行ったら大変だな。)
ここは街を護る隊長として退く訳にはいかない。だが、太刀打ちできなければ、ただの無駄死にだ。
戦略を考えるシンの耳に声が聞こえた。
「お困りみたいだな。隊長殿。」
「アグレナ!どうしてお前がここに。」
やって来たのはアグレナである。
「あっちは他の隊員達に任せたさ。それにもうじき総隊長が来ると知らされれば、それまではと隊員が奮闘しているぞ。」
「そうか、カムイさんが来るのか。なら、こっちもへばっていられねぇな。」
シンの表情に明るさが戻った。
「なるほど。1匹の魔獣が人間を喰らって、形を成した魔獣か。」
「倒せるか?」
「ふむ。あの中に1体核となっている魔獣がいるはずだ。そいつのコアを壊せば何ら問題ない。が、人間達の厚みで本体まで届かないかもな。」
「なら、お前が一発かましてくれ。その後俺がぶっ壊すからよ。」
「分かった。では、隊長殿。剣を出すのだ。」
「あぁ。」
するとアグレナはシンのバスターソードに手を翳した。
そして剣身に火属性の魔力が覆われた。
「敵は魔力強化している武器でないと倒せない。隊長殿の様に力業で何でも出来るわけではないんだよ。」
「うぐっ。はい。」
痛いところを突かれた気分だ。
「では始めよう。準備はいいですかな?」
「おうよ!っ!アグレナ。その前に1つ聞いても良いか?」
「聞こう。」
シンの表情が真剣になった。それを見てアグレナもまた真面目に返答する。
「あれに取り込まれた人間達はもう、死んでるのか?」
「……あぁ。あそこまで黒瘴気に浸食されていれば、間違いなく生きてはいないだろう。ここで殺して楽にしてやるのも我々の仕事であると思う。」
「分かった。ありがとな!」
シンは覚悟を決め、剣を構える。
(恐らく普通の魔法では貫通出来ないな。ここは……。まぁ後で変えれば良いか。)
「『炎獄殺し』。」
太陽の様に燃える熱球が敵の胴体に穴を開けた。
それを見計らってシンが敵の真上に飛ぶ。
「炎の剣!」
敵一帯を豪炎が焼き尽くす。
敵は悲鳴を上げながら、核ごと燃え尽きた。
「ふぅ。何とか終わったな。それにしてもアグレナ。お前の魔法凄かったな!あんな高密度な火属性魔法は初めて見たぜ!」
「おぉ。そうだったな。初めては嬉しいが、それに関しては忘れてもらうぞ。隊長殿。」
瞬く光が辺り一帯に輝いた。
♢
再び戦場はアテナとロキ。神話の戦いへ。
戦いは終盤に差し掛かり、アテナはバルバロイを一度しまい、ロキもまたデス・サイズを戻した。そして神術同士の撃ち合いが始まった。
神具の仕様は例え神であれ、魔力の消費量が多く、まして自身の神具とは別の物を使うとなると、自身の特有の神具より倍の魔力を消費してしまう。その為、元素をもとにした神術を使っての攻防を行うのが一番経済的に有利である。
だが、その緊迫状況は一瞬で崩れた。
「はぁぁ!!」
ロキは納めていたずのデス・サイズを出現させ、黒い斬撃を繰り出した。
咄嗟にアテナは回避する。
「いや~。ホント黒瘴気は素晴らしいよ。無くなった魔力を元に戻してくれるんだから。」
つまりロキの魔力は黒瘴気によって元の状態に戻ったと言うことだ。
(私の魔力も残り少ない。ここは一気に勝負を決めるか。)
地面に膝をついたアテナにロキは斬撃を繰り出す。
「『神壁』。」
迫る斬撃とアテナとの間に透明な盾が現れる。それはロキが使った。防壁魔法。
「無駄だよ!神具の攻撃を神術で防ぐことは出来ないんだから!」
ロキは勝利を確信した。戦いが長引いたことでアテナは忘れていたのかもしれないが、神具を防ぐのは神具の攻撃又は防御でないと不可能である。
防壁と直撃した為か。砂埃がロキの足元に広がっていた。
すると、煙の中から5つの光が見えた。そしてその光は光線と成し、ロキを狙って迫る。
「ほっ。ほっ。」
来ると分かっていれば避けるのは容易いことだ。
だが、その内の1つが頬を掠めた様で、裂けた痛みと赤い血が流れた。
「なるほど。今度は遠距離からの攻撃。考えが単純じゃないかい?」
砂埃が消え、中から弓を構えたアテナの姿が現れる。手に持つ弓は太陽の放つフレアの様な異形の形状で、その容姿から既に厚さを感じるほど。
「太陽神アポロンの弓か。」
「そう思うのなら気をつけるのだな。次は確実に当てるぞ?」
「その弓の能力はあまり覚えてないけど、これだけの距離があって、僕が避けられないとでも?」
実際、身体能力がずば抜けている神の器であれば、飛んでくる矢を躱すことなどわけないことだ。
「1つ言っておくぞ。」
そんな絶望と思われる状態でもアテナは笑っている。
「お前は私の攻撃を避けることは出来ないぞ。」
「アッハハ!その言葉がどれだけ言っていられるか楽しみだね!」
ロキは上空から一気に降下。アテナの元に向かった。
もちろん考えがあっての行動だ。ギリギリのところで避け、一気に攻撃を決める作戦だ。流石にこれ以上戦いを長引かせるのはロキとしても好ましく無い。
(アテナの残り魔力から、残り3回が限度のはず。さぁ。どう出る?)
ロキは鎌を構える。
「“残り3回が限度”そう思っているな?」
「っ!?」
「残念だが、3回もあればあ充分なのだよ。」
その時ロキは背後から迫る2つの攻撃に気づいた。
瞬時に避けアテナと少し離れた位置に逃げた。
すると元ロキが居た場所に2本の矢が突き刺さった。
「一体何を?あの時矢は全て避けたはずだ。」
「お前は5本の矢を避けた。と考えてるだろ?それがそもそもの間違いなのだよ。」
ロキは険しい顔をする。その表情から先程までの余裕の表情は消えている。
「あの時私が放った矢は全部で6本。お前が避けることを見越して、1本連続で放ったのだ。」
「なるほどね。それで僕の上で先に放った1本を反射壁に変えて、後から来たもう1本を反射。それを2本に増殖させたということか。つまり、その弓の能力は―。」
「そう。太陽の力の本質は“繁栄と増殖”アポロンの矢から放たれる矢は、“繁栄”の力で何にでも変わり、“増殖”の力でいくらでも増え続ける。私は反射壁に反射する度に矢を1本ずつ増殖させるようにしたのだ。」
「くっ…。」
圧倒的な戦略術にロキは歯を強く噛む。さすがは戦鬼と呼ばれていただけあり、統率者20神を統率していただけある。個々の神の能力を全て把握しているのだ。
「でも、それを教えた事を後悔するんだね!後はそれに対応した戦術で戦う!」
「果たしてどうかな?」
「っ!?」
突如、上下左右四方八方から攻撃を感じた。ロキは上空に逃げる。
見ると複数本の矢がロキの居た場所に群れを成している。
恐らくあれもまた、増殖した矢なのだろう。
「いいのか?ゆっくりしてるとどんどん数が増えるぞ!」
矢を操るアテナは指先を上に向ける。すると、それに従った矢の数々はロキの跡を追った。
「くそっ!」
空中で分裂して2方向からの追撃。ロキは声を荒げる。
そして気づいた。
「誘導…か。」
気がつくとロキの周囲を増殖によって増えた無数の矢が囲っていた。
「でも甘いね。一番に魔力が弱い場所があるよ!」
幾ら神具による攻撃だとしても魔力が伝わりきっていない場所がある。ロキはそこを狙った。
デス・サイズを振り、破壊した隙間からロキは脱出。アテナへの攻撃を試みる。が、居た場所にアテナは居ない。
すると膨大なほどの魔力を感知する。その発信源は。真上。
「お前が脱出することくらいお見通しなのだ!」
そう。あの時の魔力伝達不足は、初めから魔力を伝えていなかったのだ。
そして、そこからロキが出てくる事を予測して、上空で待っていたのだ。
「やっとお前の真上に立てたのだ。」
空中でアテナは剣を構え、魔力を溜めている。
「君本来の神具『梟の翼。」
梟の翼を象った剣身に風属性の魔力が集まっている。
「なら僕も神具で対処させてもら――。」
ロキが右手に魔力を集中させた時だった。ロキの身体に異変が起きた。
「ぐっ!あっ、あぁぁ!」
「ようやくか。」
「な、なにぃを、したぁ!」
悶え始めたロキ。その額からは大粒の汗と、口から血を吐いた。ロキを見ながらアテナは言った。
「お前の頬を掠めた矢。そこに毒を塗っておいたのだよ。」
「くっ!そ、そんなぁ手にぃ。」
「見覚えがないか?その毒に。」
ロキは虚ろめく意識の中で考えを凝らした。そして思い出した。忌まわしき記憶を。
「これ、はぁぁ!毒蛇ぃぃ!!!」
「逸話によればお前はかつて牢に入れられた時、毒蛇の毒を身体に受け、絶叫したそうだな。それを使わせてもらったぞ。」
「くそがぁぁぁぁ!!!あの忌まわしい蛇なんぞにぃぃぃ!!!」
ロキの情緒が崩壊した。そして時は来た。
「行くぞ!これで終わりなのだ!」
膨大に溜まった魔力はまるで時空を歪めるように空気の流れを乱し、爽快な空を破天へと変貌させる。そして高まった魔力は高い高音を轟かせながら剣身に纏わる。
「『神風を纏った猛鳥!!」
振り下ろした剣からは高圧の風属性の魔力が放たれた。
それは苦しむロキに容赦無く襲いかかり、暴風の嵐に身を沈めさせた。
「ぐおぁぁぁぁぁぁ!!」
♢
「がふっ、な、中々に…やられたよ。アテナ。」
衝撃波を諸に喰らったロキの左半身は既に消失しており、その痕はまるで焼けて焦げたように見える。
さらに吐血しながら虫の息であれば、もう彼に戦闘は不可能であろう。
瓦礫を背にして座り込んでいるロキにアテナは近づく。
「己の傲慢さにやられたな。これでお前は戦うことは出来ないぞ。器が生身の人間である以上、戦うことはおろか、回復するのも困難なはずだ。」
アテナは拾った剣をロキに向け、眼光を赤くする。
「答えろ。お前は一体誰の差し金で動いている?それと、この街に何をしに来た?」
「……ハハッ。」
不意に笑い出すロキ。
「ハハハッ。アッハハハハ!……まぁ…そうだね…。いや~。でも、凄いよ…。」
「答えろ!敵とは言っても、私はお前を殺したくはないんだ。」
息を切らしながらロキは言葉を続ける。
「残念、だけど、答えることは出来ないよ。それに言ったところで、君はどうすることも、出来ない。」
「どういう?」
その時。
「っ!!これは!?」
すると突然。アテナの足元から突如として帯状の何かが複数出現した。それは動揺するアテナを気にすること無く腕に足。胴体を縛り付け、身動きをとれなくする。
「ほんとに凄いね。この能力は!」
弱りながらも笑みを浮かべたロキの目は水の渦のように渦巻き、白と水色のグラデーションを表している。その模様にアテナは見覚えがあった。
「それは……。アプーの能力、『予言者』。どうしてそれをお前が……。」
「えへへ。驚いた?君は、僕がこの街に来た目的を、聞いたね。それ、だけは、答えてあげるよ。僕はね。彼の目を。能力を奪うために来たんだ。」
「よっこいせ。」と残った右腕を使って起き上がるロキ。その表情には先程までとは違い勝利を確信した顔をしている。
「ぐっ。お前、同族を殺したのか!?くっ!動けない。これは『フェンリルの鎖』。どうして私がこの鎖を受けている。」
『フェンリルの鎖』は本来、フェンリルを捕縛する為にロキが作りだした物。それをアテナが縛られるのはおかしい。だが。
「アテナってば、もう忘れちゃったの?君は僕の『偽りの仮面』の影響の中に居るんだよ?君をフェンリルとして認識させて鎖で縛ることなんて簡単なんだよ。」
「くっ……。つまりお前は『予言者』でこの結末を知っていてたということか…。」
「まぁね。でも君を近づけるのは至難の業だからね。その分の代償は受けちゃったけど、まぁ結果が大事だよ。だからね、アテナ。君はここで終わりだよ。」
ロキの右手に再び『神殺しの大鎌』が現れた。そしてロキは愉快な表情で鎌を振り上げた。
「さよなら。戦友。」
黒い斬波が都市の空に上がった。




