28話 少女達の魔法
アイリルート編最後です!え?早い?普通ですよ。
「“氷針”!」
ザシュッ、ザザザザザッ
氷で出来た1メートル程の無数の針が可愛らしいクマのぬいぐるみ目掛けて、突き刺さる。
可愛いビックサイズのクマさんは布に包まれた綿を無残に放出しながら、ヒューンと音を奏でて地面に落下。
クマを刺し殺したと判断した氷針はシュゥーと音を立て溶けた。
「やったぁ!成功したよ!」
クマを惨殺したことではなく、“収縮”無しで発動に成功した事に喜び、水色髪の少女―ルナ・ティーエルは、その場でピョンピョン跳ねている。
アグレナが創り出した空間。通称『魔法ぶっ放しても大丈夫エリア』では、教官であるアグレナからの最初の課題『攻撃魔法を発動する上で必要となる“収縮”を短縮し、魔法を発動すること』を習得するために4人は奮闘していた。
練習が始まった当初は、アイリを除く3人はミニチュアサイズの魔法しか出来なかったが、1日経った今日。改めて魔法を発動すると、これまた簡単に発動した。
「やったね、ルナ!」
「うん!アイリがコツを教えてくれたおかげだよぉ~。ありがとね。」
「いえいえ。」
抱きつくティーエルに優しく微笑むアイリ。
昨晩、とりあえずの顔合わせを終えた4人は、これから寝泊まりする部屋に向かった。
アイリ的には、いつも屋敷の自室で寝ているため、こじんまりした部屋を希望していたが、そうはいかず、皆で川の字で寝れる広さの部屋だった。
その後、夕食まで時間があるということで、自己紹介をした。もちろん光明都市を代表する王候補であるアイリは皆に顔と名前を知られており、それらの話題で大いに盛り上がった。
ちなみに現在、アイリに抱きついている少女はルナ・ティーエル。水色の短い髪が特徴の元気な女の子だ。
彼女は氷魔法を得意としており、先程の“氷針”もその内の1つである。
ルナとは真っ先に仲良くなったアイリ。彼女の持ち前の元気の良さがアイリの心を惹いたというわけだ。
もちろん、その他の2人とも仲良くなり、アイリはその中で“収縮”を省く方法について説明した。
実はアイリは“収縮”の詠唱を行っていないが、行程の中で“収縮”を行っていないわけではないのだ。
アイリが幼少期に習った魔法学で、呪文はあくまでイメージであると学んでいる。つまり魔力を1つにまとめる中で、イメージしやすい言葉に直したものが“収縮”という呪文なのである。
この他にも魔法とは発動者のイメージ次第でどんな形にも、威力にでも変わるのだ。
アイリのイメージのやり方は単純に、集まり大きくなるというもの。
当たり前の話しではあるが、始めた頃のアイリは全くのダメダメだった。しかし、日々の練習の据えに、今の状態まで成長を成し遂げたのだ。
人の良いアイリは、メンバーにもぜひ!と、こうして魔法のコツを伝授したのである。
「いや~。流石は我らの王様候補だよ。頼りになるって言うか、何と言いますか~」
「もう。茶化さないでよルナ。それにまだ決まった訳じゃないんだから」
うんうんと頷くルナにアイリは「もう~」と、まるで姉妹の様なやり取りが広がっている。
「あとの2人は大丈夫かな?」
不意にアイリは深刻な顔をした。
2人とは、アイリとルナを除く残りのメンバー。パティム・エルトとミレア・ティシェルである。
アグレナの用意した課題は先程説明した通りである。しかし、それと同時に「課題が出来ない者は、ここから出て行く」という難を残していた。期限は明日の早朝の試験次第。
アイリは無論心配ご無用である。見たところ、ルナについても問題なさそうだ。だが、パティムとミレアについては未知である。パティムについては、自信なさげに部屋に戻って行き、ミレアにいたっては、誰とも言葉を交わさずに、黙々と1人で練習している。
誰1人として欠けたくない気持ちのアイリからすると、この2人には頑張ってもらいたいものだ。
「ミレアは大丈夫だと思うんだけど、パティムは何だか自信なさげだったし......」
「大丈夫だって!ここに入れるって事は、それだけ能力があるってことなんだから。まぁでも、私もちょこっと心配だから見に行ってみようか?」
「うん。」
脳天気そうなルナでさえ、少しは気に掛けている様だ。
2人は部屋から出て行き、まずはミレアの様子を見に行くことにした。
「ここ......だっけ?」
部屋のドアには『使用中♪ノックしてね!』と中々にキャパキャパした感じのドアプレートがかけられている。
「そうだね。でも、中から音がしないけど。」
ルナはドアに耳を近づけ、中の様子を確認する。中から魔法を撃ったような音は聞こえず、無音とまでは言わないが、それに近い状態であることが伺える。
「まっ、とりあえず入ってみようか!」
そう言ってルナはガチャッとドアノブを捻り、隙間から中を覗いた。そこには。
「うぅ~。やっぱり、“収縮”無しで魔法なんて無理だよぉ~。ここは強がらずに、アイリんに教えて貰う?あぁ~!もう、どうして私は、あぁいう時強がっちゃうの~!もう!バカバカ!ミレアちゃんのばかぁ~!」
「......」
「アイリん....。」
部屋の中では、黒いドレスのような服に、毛先がくるんとカールのかかった濃い赤髪を持つ美少女ミレアが苦悩に押し負け、頭をポカポカしていた。
ドアの隙間から覗く2人は、ミレアのまさかの姿にお口あんぐり。まさかのあだ名を付けられていたアイリは、さらにあんぐり。
昨夜の会話の中でミレアはツーンとした表情をとっており、そのせいか彼女に話しかけようとしたのは誰も居なかった。
しかし、その凜とした表情や佇まいがまた格好良く、アイリは密かに気になっていた。そんな彼女がまるで別人のよう。格好いいでは無く、むしろ可愛い。
「そうだ!ルナっちに聞いてみよう!いや、こっそり行こう。そんで、こっそり見て帰ろう。そうしよう!」
「......」
「ルナっち....。」
おもむろに立ち上がったミレアは、ドアに向かってダッシュ。それを見たアイリ達はヤバイと隠れようとする。が、時遅し。
「「あっ」」
「.......................」
まるで時間でも止められたかのように3人が制止した。アイリとルナは逃げだそうとした体勢のまま。ミレアは、ウキウキルンルンの表情で扉を開けたまま。
そして数秒後、変化はミレアの顔。どんどんと赤くなり、最終的には真っ赤なリンゴのようになった。
「っ!!!!!!!!!!!」
「あ、あの、何かごめん。」
口をぱくぱくさせ、目の前の現実を信じられないという顔で見るミレア。
数分の間、同じ事を繰り返した後、後ろを振り向き、何やら顔をゴシゴシすると、くるっと可憐に髪を靡かせながら、アイリ達の方へ振り返った。その顔に、先程までの羞恥の表情は無く。
「別に気にすることないわ。それより何の用?」
「わぁ、凄い。」
一瞬にして態度が会った時と同じ冷ややかな感じになったミレア。まるで何事も無かったかの様な表情で佇む彼女に、逆にそのような態度をとられては、何とも言えない気分となりアイリは思わず賞賛する。
「あっ、えっと、2人が心配で見に来たんだ。だから―――」
「何?自分は簡単に出来たからって、見下しに来たの?」
「えっ」
まさかの発言にアイリは固まった。
先程まで、部屋で1人で「どうしよぅ~」と嘆いていたミレアだ。そんな姿をバッチリ見た方からすると、何今更強がってるの?と思ったルナだった。
「良い?私は、1人でやり遂げてみせるから邪魔しないでちょうだい。」
「いや、でも―――」
反論しようとした時。2人の前にルナが立った。
「行くわよアイリ。」
「え、ルナ!?」
無理矢理アイリの腕を引っ張り、部屋の前から去ろうとする。
「本人が出来るって言うなら、放っておいた方が良いのよ。それに、仮に出来なくてもこっそり見に来るだろうからさ。「アイリん」と「ルナっち」のやつを。」
「っ!!!!!」
ルナの言葉にミレアは顔を赤らめた。それはそれは凄い勢いで。まぁ当然のことだが。
「ちょ、ちょっと!私、何事も無かったように振る舞ってたでしょ!?どうしてそれを掘り返すの!?」
「えぇ~。だって、ミレアったら、皆の前だとあんな強気のくせに1人になると、可愛らしくなっちゃうんだもん。いじめたくなって当然でしょ?あっ、ミレアちゃん。だっけ?」
「っっっっ!!!!!」
更に赤くなるミレア。これ以上言ったら爆発するんじゃないかと思う程に。 まさかドSな顔を持つルナにミレアと同様にアイリも驚く。
その後何度も誤解を正そうとするミレアをルナは「はいはい」や「分かった、分かった」と適当にあしらい続け、最終的にはミレアが「もういい!」と言って部屋に戻って行った。
プンプンと怒る背中を見ながらルナが「せっかく面白かったのに~」と呟いた時は、この子には気をつけようと感じたアイリであった。
♢
「もう。ルナってばあんまりイジメたらダメだよ。」
「はーい。ごめんって~。」
ミレアとのやり取りを終え、2人はパティムの元へ向かうため、廊下を歩いていた。
その中で、先程のツンデレ殺しを注意しているところなのだが、どうやら本人に反省の色は無いらしい。それが分かると注意している自分が馬鹿馬鹿しくなり、アイリは小さくため息を吐いた。
心配ではあるがミレアのことだ、こっそり見に来たりするのだろうから、大丈夫であろう。残る問題は―――
「パティムは大丈夫かな?」
パティム・エルトは気弱な性格の上に、自分に一番自信が無いと昨晩言っていた。
その事を考えると、彼女が今、苦戦している事は明確に分かる。
昨晩の話しによると、彼女の父親は鉄鋼都市で有名な鍛錬場の教官をしており、その上自信過剰で厳ついそうだ。そんな父を小さい頃から見ていたパティムは、偉大な父の影に隠れ、いつの間にか自信の無い暗い女の子となっていたそうだ。
更に、母を直ぐに亡くしており、家事や勉学などを両立させ、世話が焼ける父の面倒まで見なくてはいけなかった。現在の歳で言うと、複雑な時期だそうで、唯一の家族である父に反抗したい気持ちも多々あるとか無いとか。
色々考えていると、パティムの居る部屋に着いた。
一応先程のミレアの様にならないようにと、アイリが先頭に立ち、ドアをノックする。すると中からパティムの声が聞こえ、2人は部屋の中へ入った。
「パティム。作業は順調?」
「いや、その、中々上手く出来なくて。必死に頑張ってるけど、やっぱり無理なのかな......。」
自信の無い声でパティムは言った。
しょげるように首を下に垂らすと濃い緑の髪が揺れ、悲しんでいるのにその姿が美しく見えてしまう。
アイリは項垂れるパティムに近寄り背中に手を当てて言った。
「パティム。自信持って。大丈夫、私達が出来るまで練習付き合うからさ。」
「うん、ありがと。」
最終的に実戦するのは彼女であるが、そこまでの道筋に誰かが干渉できない事はない。
少しでも力になりたいと思うアイリは、こうして誰かの為になることをするのが好きらしい。
~翌朝~
『魔法ぶっ放しても大丈夫エリア』に集められた4人。彼女達の前にはアグレナが立ち、試験の開始を感じさせた。
「もう一度試験の内容を説明するぞ。①魔法の使用の際の“収縮”は禁止とする。②試験不合格者は即刻ここから立ち去ってもらう。以上。では始めは、アイリからだな。」
アグレナに指名されたアイリは一歩前にでる。
そしてアグレナの指さした方向へ向かって魔法を放った。もちろん一発合格。とりあえず一安心したアイリは3人の並ぶ列に戻った。
続いてルナ。
前に出たルナは、少し緊張しているようで大きく息を吸いゆっくり吐き気持ちを落ち着かせる。
何度も繰り返した練習で掴んだ感覚。それを元にルナは“氷爆砲”を放った。
威力は初めて撃った時よりも数段弱くはあったが、それでも“収縮”無しで魔法を放ったことには違いない。ルナもまた試験に合格。列に戻った。
互いに合格したアイリとルナは、グッドサインを贈りあう。
そして心配の2人の番がやって来た。
まず呼ばれたのはミレア。
彼女は、凜としたまま前にでる。そして目を閉じて右手を前に出す。
「“焼き尽くす業火”」
「「「っ!!」」」
「おぉ、」
それは彼女が初めて見せた“炎爆砲”とは全く違った。純粋な赤い炎が渦を作り、空間もろとも燃やしているかの様。しかし、その恐ろしい光景の中に、美しさをも感じるのは、魔法という次元を越えた現象が生み出す芸術の1つかもしれない。
ミレアが魔法を解除すると業火は消え、地面に黒墨が大きく跡を残していた。
「なるほど、この私が言った言葉を覚えていたのだな。」
「はい。魔法はイメージによって変わる。元々何かをイメージするのは得意でしたから、こういったのは難なく出来ました。問題があったとすれば、“収縮”無しでの魔法の発動が難しかったです。」
「流石だ。試験に応用を利かせるのは悪いことでは無い。ただ、今のだと上級魔術士程度なら簡単に消されてしまうでしょうね。まぁでも合格だな。」
「有り難うございます。」
アグレナの講評を受け、ミレアは列に戻った。ちなみに彼女の内心は、
(やったぁ~!良かったよぉ~。これも全部アイリんの言ってたとおりだったわ。ありがとね~。でもどうしよう。この後お礼でも言いたいけど、昨日あんな酷いこと言っちゃったし......。どうしよう私~~!!もぉ~、バカバカバカ~!)
放った魔法と同じように荒れ狂っていた。
「す、凄い......。」
ミレアの放った魔法に驚いたのはアグレナだけではなかった。その場に居た3人共、口を開けたまま野状態である。特にアイリとルナにいたっては、昨日あのままミレアと離れ、それから一度も話していない為、ここまでの急成長に驚きを隠せていない。
そして、最後の順番が回ってきた。パティムの番である。
呼ばれたパティムは、前に出てアグレナの前に立つ。
「準備はいいかな?」
「は、はい!頑張り、ます。」
深く深呼吸する。
そして、
「よしっ!」
ゆっくりと右手を前に出し、魔力を溜める。
昨晩、徹夜で練習に付き合ってくれたアイリ達。入口のドアからコソコソしているミレアが見えたのはどうしてか分からないが....。
そんな彼女達の応援に応える為にはここで失敗するわけにはいかない。
大丈夫。コツは教えて貰っている。
「いきます!!」
♢
パティム・エルトはいたって普通な女の子である。特段優れた才能があるわけでも無く。特異体質なわけでもない。強いて言うならば「頑張り屋さん」という才能があると言うべきだろうか。
彼女の父親―バグシェイド・エルトは鉄鋼都市で最も名高い鍛錬場【ジェイド】の教官である。そのせいあってか、周囲の人間はパティムに謎の期待をかけ、将来優秀な騎士にでもなるのだろうと思われていた。
だが、彼女にそんなつもりは一切なく、それどころか十代まで魔法の勉強や格闘技、剣術の稽古など一切していなかった。
当然、父バグシェイドは周囲の思い込みに流され、パティムが将来【ジェイド】を継いでくれるものだろうと勘違いしていたわけでもあり、パティムが「普通の女の子みたいに暮らしたい」と言ったときは、大いに荒れた。
そんな周囲の思い込み率が高い中、唯一心の拠り所となる人物が居た。母である。
大らかで優しく、気の利いた性格を持つ母は、パティムに彼女が望んだ人間になって欲しいと願っていた。実際に母の口からそれを聞かされた訳ではないが、何となく接してくれる態度から感じ取っていたのかもしれない。
母は人当たりが良く、よく暴走する自分勝手な父に笑顔で接しながら、世話をしていた。もちろん父はそんな母の事を心から愛しており、夜中に2人で一緒にくっついてたりしている所を何度も目撃している。
だから、その母が亡くなった時、父は何日も泣き続けた。死因は流行病だった。
もちろん父だけではなく、パティムも泣いた。しかし、パティムには使命があった。それは、母が遺した最後の言葉。
『私の代わりに、お父さんを支えてあげて』というもの。
パティムはその言葉に従った。幸いにも父の立ち直りは早く、気づいたときにはいつも通りの父に戻っていた。
筋肉質な父と話しを合わせようとしたとき、まずパティムは魔法、格闘術等について学ばなければならなかった。この時の年齢は11歳。普通、魔法等について学び始める時期は、十代前が世の中の鉄則である。この時点でパティムには数年のタイムロスが生じていた。
しかし、ここで活きてきたのは彼女の「頑張り屋さん」性質である。
寝る間を惜しんで勉学に励み、その成果あってか【豪傑】と呼ばれる有名な魔術教室に入ることが出来た。
昨日、アイリ達と半日練習していたわけだが、実はパティムが出来なかった事は“収縮”無しでの魔法の発動ではなかった。では何か?それは単純に魔法の発動であった。
それはミレアがしたことと同じだが、パティムには魔法を強く発動させるイメージがなかった。“収縮”無しという課題は問題なくクリアしているのだが、その後の発動が出来ていなかった。
結局、アイリ達と話し合ったが、問題解決までに到ることはなく今日を迎えてしまった。
しかし、パティムには考えがある。昨晩、眠りにつく前、布団の中で考えた事。
それは、考えれば考える程に腹が立つような感覚に襲われ、まるで煮えたぎらない何かがフツフツと腹の中で湧いているよう。
思春期の女の子ならあるであろう、親に対する反抗期。つまり、自分勝手で暴走体質な父への怒り。パティムにとって、これが魔法発動への鍵だった。
それ故に発動の詠唱は......
「“お父さんのバカタレ!”」
その瞬間は誰にも認知出来なかった。しかし、結果だけが跡を残しており、確かに魔法の発動があったのだと思わせた。
簡単に言おう。パティムが魔法を放った方向の壁、床が吹き飛んだ。
「マジ?」
「す、凄い。」
「......」
「思春期は怖いな。」
アグレナを含める他4人が口を揃えた瞬間だった。
もはや恐ろしいまでの父親に対する怒り。可愛らしく大人しいパティムから放たれたとは思えない程の威力の爆砲。
するとアグレナが指を鳴らし、部屋が復旧された。
「よし。全員合格だな。」
数秒間、皆が静まりかえった。そして、
「「「「やったぁぁ!!!」」」」
アイリ達は肩を組むように喜びあった。
「パティム!凄いじゃん!あんな凄い魔法使えるようになるなんて!!」
「ううん、皆のお陰だよ!ありがとう!」
ルナとパティムは互いに見つめ合い、賞賛しあった。
「あの、アイリ.....。」
「ん?何?ミレア?」
歓喜する2人を見ていたアイリに、後ろからミレアは声を掛けた。
「その、あ、ありが、とう....ね。」
「ミレア......。」
頬を赤らめながら感謝の言葉を口にするミレアに、アイリは見とれた。言うなれば、思いもしない事をされたために、何をどう言って良いのか分からなくなってしまったのだ。
「ちょっと!何か言ってよ!恥ずかしい、じゃない。」
「えっ、あぁ、ごめんね。その、うん。」
互いに遠慮しあう2人。すると
「あぁ~!ミレアちゃんが照れてる~!可愛い~。」
「ちょっ!何言って、照れてない!」
「またまた~。」
現れたツンデレキラー。ミレアの顔がどんどん赤くなる。
とにもかくにも、こうして試験は全員合格で終わることが出来た。アイリはそっと胸を撫で下ろし、安心の息を吐いた。
するとアグレナがゴホンッと咳払いし、声を発した。
「お前達。安心するのはいいが、それは後にしてもらえる?」
4人は再び横列に並び、アグレナを見る。
「とりあえずはおめでとう。まぁ、全員問題無いとは思ってけどね。早速だけど、これから魔法について学んでもらう事に関して、私からお願いがある。」
アグレナは指を一本立て、笑みを見せる。
「近々、魔術競技祭が行われる。そこで、我が【豪傑】のメンバーは魔術競技祭に参加してもらい、そこで進化したお前達の実力を見せつけてもらいたい。異議は聞かないぞ。もう登録しちゃったし。」
「「「「えぇぇ!!」」」」
こうして、一波乱有りそうな魔術競技祭に向けて各出場者達が出揃い始めた。
運命の日は近づいている。




