18話 ○○○○○
新章始まりました!とりあえず、プロローグみたいなものです。よろしくお願いします!!
月は嫌いだ。あいつはいつも夜の暗いときに現れて、いつも見下しているように見えるから。
太陽とは違う。あれは直視出来ないくらい眩しくて、見ることさえも許さないかのようだから。だから、自分とはとても差が埋まらないくらいの存在だと思い知らされる。
でも月は違う。こちらからはただ見上げる事しか出来ない。雲に隠れるときは、まるで悪いことをした子供が物陰に隠れるように卑怯なんだから。
月は嫌いだ。見ていると心を綺麗にされるように輝いているのだから。まるで自分を嘲笑うかのように輝いているのだから。
その日は丁度月が綺麗に輝いている時だった。人で言うところの、人生の分岐点。ターニングポイントだ。
彼と数年ぶりに出会えたのがその日だったのを今でも忘れない。
その小さな瞳に写る自分は、一体その子にどんな気持ちをさせているのだろうか。自分が自分に問いかける。
右手にクマのぬいぐるみを抱きかかえ、小さな手で服の裾を握って離さない。
後ろ髪を引かれる思いで振り向くと、子は不思議そうな目で初対面の自分に幼い視線を向け、瞳に微かに映る不安の文字を体現している。
初対面と言えば嘘になるかもしれない。だが、この子にとって自分との対面はこの時が恐らく初めてだ。自分にとっては、何年も前からの顔見知りのはずなのに、彼の記憶に自分は居ない。
それは決して彼が忘れてしまったわけではない。それはただ、幼かっただけ。
まだ歳が二桁もいかない未熟な少年。自分と同じ髪色をして、自分と同じ瞳の色をしている。それは自分と彼が血の繋がった兄弟であることを証明するモノ。そしてそれが、自分にとってただ一つの心の救いだ。
繋がれた手と手は決して離すことの出来ない繋がり。
だが現実は、それをいとも簡単に破壊し、二人の間を引き裂くように迫り来る。
黒い外套を身に纏った集団は、目の前の少年―つまりは彼の弟を抱きかかえ、闇の中へ消えていく。
消えゆく間際、彼はたったり一人の弟に向けて叫んだ。全身全霊彼の全てを込めて、愛する家族へ。愛しい弟へ向けて―――
「大丈夫!お兄ちゃんが必ず、必ず救ってみせるから!だから、だから―――」
夢はいつもそこで終わりを迎え、残酷な現実へ押し返す。
そして起きて直ぐに考える事がある。それは決まって変わらない疑問。あの日、弟を連れ戻せなかった自分への後悔と羞恥の念。一番嫌いなモノへの投げかけ。
“あの日月は、僕を笑っただろうか”




