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Story 6

でも、もう会話始まっちゃったしねー(菊

 そんなこんなで、少年に現状をRiSさんがサックリ聞き出した。僕には到底出来ない。

  要約すると、ピラミッド建設を依頼された集落の一人だった。

 死んだ彼の父親は今で言う考古学者で、父親の遺した建設方法の描いてあるらしい石盤によって王の信頼を得たが、他の者からはそれを疎まれている。

 だが、少年自身は石盤の描かかれている意味を解読出来ていないと言う事らしい。


「僕のお父さんもお爺ちゃんもずっと旅をしてきたんだ。ずっと大きな水の向こう側からここまで逃げて来たんだよ」


「海を越えて・・・(ボソッ」


「父さんまでは昔の人達の考えを調べる方法を受け継いでいた。調べた内容をエライ人に教えてあげるんだ。お父さんは僕にそれを教える前に死んじゃったから一人ぼっちなんだ」


「そうだったの、大変だったわね。ちょっとその石盤をみたいんだけど」


「え?」


「私なら分かるかも知れないわ・・・」


「「ほ、本当!?」」


「ええ、ただ可能性があるだけよ?」


  そんな話をしていたら、「おい」と少年を呼ぶ声がした。よく客が来るなぁと思いながら少年を見るといつの間にかドアに背を向けていた。

  不思議に思い振り返ると、身なりのキレイな男性達がふんぞり返って立っていた。


「あれ誰だ?」


  少年に聞くと


「おエライ神官サマがこんな下々の家に何の用だ」


  一瞬僕に話したのかと思ったが、あの男性に投げた言葉だった。


  「小僧に朗報だ、王がその下々の者の意見を聞き入れて下さったぞ。計画を早めたいそうだ、明日の夕日が落ちるまでには小僧もこんな集落の奴らと離れて一人暮らすなどという惨めな生活から解放されるだろうな」


「お前にそんな事言われる筋合いはない!」


「流れ者を受け入れて下さった王家に背くというのか?そんな事は出来ぬと思うがな、もしそんな事してみろ。集落の者みな一生王家の奴隷となるのだぞ」


「!?なんだって!そんな話聞いてない!」


「・・・まぁ、あの石盤を俺に渡せば状況は変わるんだがな。ハッ」


 と、少し笑いながら去って行く神官。とても気分が良い人ではなかった。

  RiSが、そういえばと呟く。


「君、何か知ってるの?」


「実は、僕見てたんだ。」


 現在のエジプト王は寛容で理知的な人らしく、彼ら親子を理解していた。父親に連れられて、普段から王宮の近くまで行っていたという。


「石盤の解読が終わったお父さんは神官と喧嘩してた。お父さんが事故で死んだのは次の日だ。」


「いつかお父さんが」と少年はそこで一呼吸おいた。やっぱり辛いようだ。


「お父さんが『たとえ私が死んでも石盤と神官との事は誰にも言うな、それがお前のためだ』って言ってたんだ。でもその後から神官は度々現れて、お父さんの遺した石盤の解読を邪魔してくるんだ」


「え?じゃあ、石盤に秘密が・・・?RiSさん!解読を!」


 振り返った僕に鋭い視線が合う。


「もう終わったわ」


「え?いつの間に!?」

 

「だから、私達の心得は時は金なりよ」


「常盤兼成?戦国武将ですか・・・?」


 彼女の眼光が僕を圧倒した。


「・・・おふざけはそれくらいにして、ここからは覚悟して聞いて」


 ポカンと僕を見上げてくる少年は、何かを問いたげだ。僕は頭上のはてなマークを解消出来ずにいる。


「一見暗号のようだけど、相当古いヒエログリフで書かれているわ。確かにピラミッドの建設方法を示しているわね。裏を見て、細部まで緻密に描かれている」


 解消させてくれないまま、RiSの説明を少年と聞いた。


 細かい凹凸で出来てる石盤の裏には、幾何学的な絵がある。よく見ると沢山の図が並んでいるんだ。


 一見華奢なRiSにも、これだけの石盤をひっくり返す力があるとは。やっぱり侮れないな。


「驚いたわ。これは古代の神官イムホテプの石盤なの。当時の王の記載もある、ここからはもっと貴重よ」


 RiSが読み上げた文は、簡素な日記のようだった。


 当時の王家で暗殺があったこと。確証もなく暗殺者は裁きを受けずに暮らしていること。作者の命数が迫っていること。後継者について…季節の流れ…若い頃の日々…。


「・・・死に行く直前に彫り上げたんだ」


「ええ。現代でも歴史的価値の上をゆく発見だわ。これを使えばピラミッド建設は、圧倒的にスムーズに進むでしょうね。地位を脅かすほどの発見よ」


 それは少年の身に危険が及ぶことだった。


 しかし、僕とRiSの会話を、少年の緑の目は理解していたんだ。


「僕行くよ。明日、王宮に」


「いいのか、君の命が危うくなるんだよ?」


「わかってる。だけど僕はお父さんの敵をとらなきゃいけない。もう行くしかないんだ」


 すでに、僕らと石盤を献上する事を決意していた。


 何から何まできっぱりと決めて行く少年だ。自分の反面みたいでなんだか恥ずかしかった。


 こういう緊張した場面だと、ついつい話題を変えてしまうんだ。


「それにしてもRiSさん、いつの間にか石盤見つけちゃってるし解読しちゃってるし、驚きですよ!」


「そうだよ。あいつらから隠しておいたのに」


 じっと石盤を眺めていたRiSは、顔をあげた。


「あら。ベッドの下ってよくある隠し場所じゃないかしら」

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