File 3 Story 3
僕は何の説明もないまま、RiZさんに教えてもらったカフェに来ていた。
ここら辺は学生が多い。久々にキメた一張羅のスーツが嫌に浮いている気がする。
(何故会社じゃないんだろう?)
ステフをやたらに使えない状況だ。
そんなこともあろうかと、事前に資料と顔写真を頼りにクライアントを探してみる。
すると、
居た。大人しそうに座っている女性が資料の人らしい。
ドキドキで声を掛ける。
「こんにちは、名刺をお持ちの方ですか?」
彼女はハッとして立ち上がり、頭を下げた。
よし!最初の印象が肝心だ!
「僕は担当のReDと申します。よろしく」
現代で年もそう変わらない相手がクライアント。
初めで緊張する。
でも、ある意味初単独にしてはラッキーかも。
笑顔で対応しよう。
それまで立ったまま僕を観察するように見ていた彼女が、いきなり言葉を発し始めた。
「貴方が名刺のReDさん!?初めまして。私、拾ったんです、貴方の名刺。それでメモ貰って、書いてある電話番号にかけたら困ってる事を解決してくれるって『あの人』に言われたんですよ。で、かけたら女の人が出て。色々テストみたいな事されて、そしたら貴方が本当に来てビックリしてるんです。一週間くらい気持ちがふわふわしてるんです。あ!私の困ってる事って、実は好きな人がいて。その人の事すっごい好きで、サークルの先輩なんですけど。その先輩、後二週間でアメリカに語学留学に行っちゃうんです!でも私、全然相手にされないし、連絡先すら知らなくて大ピンチなんです!!本当に助けて欲しい時にウワサ通りの黒スーツのイケメンの人が現れて、色んな意味で運命感じちゃいましたケド、今日の貴方の黒スーツ姿はイメージと違ってちょっとガッカリでした。でもよろしくお願いします!!」
帰りたい。
カバンを持ってスッと立ち上がり、2歩下がった。
彼女のマシンガントークについていけず、色々と気になるポイントもあったが、然り気無くdisられて帰りたい気持ちが僕を駆り立てた。バイバイ。
「え!?何処行くんですか!?待ってください!!」
その言葉にハッとし、理性を取り戻す。
これは『仕事』だ。
「あぁ、すみません。僕の硝子のハートにヒビが・・・。何でもないです。所々気になる点があるのですが、質問しても?」
と言いながら二人は座り、僕はコーヒーを頼んだ。
「はい、何ですか?」
「『あの人』とは?名刺はどうしたんですか?」
「『あの人』・・・、あぁ。一回会っただけであまり覚えていないの。名刺はたまたま拾っただけですその後、『あの人』に渡してしまったから今は持っていません」
「そうですか・・・。では、黒スーツのウワサとは?」
「都市伝説みたいなものじゃないかしら?私も友達からちょっと聞いただけだからよくは知らないし。」
「なるほど、では本題に入りましょう。今回の依頼内容、お悩みを確認させてください」
「そう、それよ!私、先輩の連絡先を聞き出したいの!!」
「え、連絡先だけでいいの?」
「あ!じゃあ、あわよくばってゆーか、欲張っちゃうなら先輩の特別な人ってゆーか、恋人ってゆーかう~ん、彼女とゆーか出来れば結婚?みたいなぁ~(もじもじ)」
「うん、連絡先だけにしようか」
(コイツは恋愛には不得手だ。そして僕も専門外だ。とゆーか苦手とゆーか・・・)
「いけない、僕も毒されてきた」
「何ですか?」
「いえ、何でもありません。次回からは私服にします」
「あ、それいいかもぉ~」
僕は鋼の心を持つ決意をした。
一旦、彼女と別れて帰社した僕はドアを開けた瞬間、とてつもない安心感に包まれた。
RiZさんに声をかけられ、同じ女性とは感じられない程今回のクライアントはぶっ飛んでいるな、と思った。
「あら、ReD上手くいったの?」
「いえ、あのままでは僕の硝子のハートが・・・。今日は軽くミーティングだけにしました。少し気になる点もあったので」
「何?気になる事って」
「僕、名刺なんてないですよね?後、男がその僕の名刺とやらを回収したらしいんです。・・・おかしくないですか?」
「・・・そうね。その事については此方で調べるわ」
「お願いします。後はステフを使いたくて帰りました」
「まぁ、そこそこ頑張りなさい」
「はい!」
と、張り切って返事をしたと同時にドアが開き、KaZが入ってきた。
「おっ!ReD氏頑張ってるかが女子大生と二人っきりなんてラッキーボーイだな!代わってやりたいくらいだぜ」
「KaZさん・・・。全然ラッキーじゃありません。アンラッキーでした。代わって下さい。お願いします」
「ReDクンの初単独デビュー戦のジャマは出来ねぇよ」
「そんなぁ~・・・」
そんな仲良く冗談を言い合っている二人を黙ってみていたRiZさんは少し眉にシワを寄せながらKaZさんに言った。
「何処行ってたのよ、こんな昼過ぎまで」
「JOHの見舞いですよ。リハビリ行ってたらしくて待ってました。もう直ぐ仕事復帰らしいですよ。」
「そう。良かったわね」
何故かピリピリし出したこの場から僕は逃げ出したかった。
「ちょっとミーティングルーム借ります」
そこで今日の話を思い出しながら考えた。
きっと彼女は何度も失敗して、二週間なんて直ぐに過ぎてしまうだろう。その対策に少し時間が戻るってやり直しが効くといいなぁと考えた。だが、環境がデリケートで、ステフを容易に出せる所ではない。ステフと相談しなければとステフを呼ぶ。
「はい、何か御用ですか?」
「ちょっと相談なんでし、時間を少し戻す事は可能ですか?」
「時系列に影響が出ない程度でしたら可能です」
「具体的に何分ですか?」
「一人でしたら5~10分程度でしょうか」
「君の案内なしで、時間を戻す事は可能?例えばストップウォッチみたいな」
「?よくわかりませんが、似たような事は出来ますその場合私が感知出来ないので、『時間を遡る事』しか出来ません。どうしますか?」
「・・・なにか恐ろしいことになりそうだけど、お願いします」
「了解いたしました。設定しておきます。10分後に私のオプションに取り扱い説明を乗せておきますので読んでからご使用下さい」
「OK!ステフ!!」
忙しない一日が終わり、もっと慌ただしい日々が始まり、僕はきっとBroken Heart
書いててウケるー!ぇ
暑いので、更新滞ります。←
では、また。




