File 2 Story 5
数分前の事がウソのように静まり、少女を抱えているReDの横で呆然と立ちすくむKaZ。
「・・・おじょーちゃん、とりあえず送るよ」
KaZから発せられた言葉はこれだけだった。
ReDは少女の瞳が少し恐怖心を持ったのに気付いたが、この子のためにはこの言葉しか出てこなかったのだ。
「・・・いい。一人で帰る。私これでも長の子よ。強いんだから!」
そんな強がりを潤んだ瞳で睨みながらKaZに言う姿は、本当に長の子である。
だからって放っておくわけにはいかないと言い張るReDに促され、二人は周辺の安全を見回る。
彼女を見送って、ようやく大事ないことがReDにもわかった。
自分たちの現状を把握しなければいけないことを忘れていた。
二人はベースの海岸へと再び歩き始めていた。が、KaZは少し胸騒ぎがしていた。
(JOH・・・そんな事ありえないよな・・?)
少し歩幅を広めて海岸ベースに着いたら、思った通りのことが起こっていた。
ReDがステフにふれると
「KaZさん!ベースが!・・・ベースの記録が消えてます!ベースがないんですよ!ココ、見てください!ベースがっ」
「わーってるよ、ベースベースうるさい。あー・・・外されたな、完全に」
少しイラつき気味に応えながらも、KaZは今後のことを考えていた。
非常にマズイ状況であることは確かだ。
「まさに本部が自分たちの位置を見失ってるわけ。立派に迷子だよ」
動揺しているReDはもうこの世の終わりだというばかりに青ざめた顔をしている。案の定、ワタワタとステフを弄りだした。
その様子を見ていたら、なんだかKaZも余裕が出てきたのだろう。
良いことを思い付いた!とでもいうようなニヒルな笑顔に早変わり。
近づいてくるKaZに、ReDはイヤな予感しかしない。
「なぁなぁ、俺行ってみたい所があるんだ」
「・・・。はい?何をこんな時に言い出すんですか!?僕ら、ソーナンしてるんスよ!戻れないんですよ!」
「だからこそだろ?ここでいっちょ男二人さすらいの旅ってのはどう?もういつ帰れるか分からない。つまり時間はたっぷりある。落ち着いて楽しもうぜ?」
ReDを宥めようと前に立つと、立派な帆船が彼方に見えた。
絵に描いたような海賊船だ。
「ほら、あそこにちょうどいい船もある。こっそり乗っちまえば旅のはじまりだぜ!」
「はあ・・分かりました分かりました・・もうこうなったらKaZさんに従いますよ・・」
「まあ、俺の気紛れみたいなもんだけどな(ボソッ)」
しかし、やはり慎重なReDは行き先の確認とかどんな船なのかとかうるさい。
仕方なしに偵察をすることになった。(結局海賊船だってバレたヨ)
KaZの大荷物にもかかわらず、なんなく船内に潜り込むことに成功した。
というのも・・・
~海賊との会話の回想~
「!あ、あのー、実は私たち旅の者でして・・・今まさにソーナン真っ只中でとても困っています!助けを呼ぶために移動しなければならないのに、手段がなくて・・・悪いこととは分かりながら」
相変わらずよくペラペラと出てくるな、とReDは思った。
少し涙ぐみながら、涙腺が弱そうな船員に情けを乞う。
「そうだったのか!次の仕事はインドの中心街だったはずが、それでも良ければ乗っていけ!」
「え?良いんですか?」
急に緊張がほどけたReDの横で、KaZはまだ一人で《お情けちょうだい》をやっている。
「ああ。ボスの俺が許す!」
!
「えっボス?!」「ヤッタ!インド!!スパイス天国!」
~終~
フツーに交渉が完了してしまった。なんとか行き先までGetだ。
ますますこの先が思いやられる展開に、ReDは苦笑するしかない。
ぶっ込み過ぎましたかねぇ?
まぁ、追々何かあるんじゃないですか?←




