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6話 作戦は

間が飽きすぎました。すみません


「はあ、はあ……。クッ!」


 夏光は数十分間経っても獲物を狙うように追いかけてくる、三頭犬(ケルベロス)の大群から逃れることが出来ていなかった。むしろ数が増えている気がするのは、夏光の気の所為だろうか。


「マジで……。どうなってんだよ……。ここは……」


 やっとのこと出せた息を切らして夏光が嘆く。目指すは唯一灯りを帯びている安全そうな場所。しかし、そこまでの距離はなんとなく遠く見える。もしかしたら、体力が尽きる時が先に来るかもしれない。何か策があればーー


「……!」


 夏光は少し先の道を確認してピンと来た。真っ直ぐにはおそらく危ないであろう少し飛び出た崖。そして左にはあの灯りを帯びた場所。

 あの崖に向かって真っ直ぐ走ると思わせて直前で左に曲がればーー


「一か八かだけど、やんないと終わんねえよな」


 夏光は振り向いて三頭犬(ケルベロス)を見た。やはり諦める気配は毛ほどにもない。

 決心し、作戦を試みようと、直前で左に曲がる。と頭の中で何回もリピートさせた。


「ガルルルァ!」


 三頭犬(ケルベロス)が後2、3メートルあれば夏光に届くくらいの距離まで迫った。


「へっ! 人間より能がないことを後悔するんだな!」


 この様子なら気づいてねえな。ざまあみろ。俺の見事な罠にはまって落ちろ!

 崖が近くなる。そしてあっという間に後数歩のところまで来ていた。

 ーー今だ!


「うおおおおおお!」


 後一歩で崖から落ちるというところで足を踏み込んだ。そして左を向いてーー


「落ちろ犬ころ共が!」


 叫んで地面を蹴ろうとした時だった。夏光が踏み込んだ左足が滑る。体が斜めになり、顔が青くなった。


「なっ!」


 踏み込んだ足の下に丸い木があったのだ。予想外のありえない展開夏光は動揺を隠そうにも隠せなかった。


「クソっ!」


 なんとかして崖の端を掴もうとするがもう遅い。夏光の体は宙を舞い、落下する。


「こんなんありえねえだろおお!」


 ドシン! と重みのある音を立てて背中が地面に叩きつけられる。ただ、あまり高い崖では無かったのだろう。夏光は痛みを感じただけだった。


「マジでふざけんなよいせかーー」


 うつ伏せになって手を地についた刹那、夏光の体はまるで雪だるまのように激しく転がり始めた。


「ぐっ!」


 落ちた先が坂だったのだ。止まる勢いが無く、夏光は転がり続ける。


「いってえ!いてええええ!」


 間髪入れずに木が体を強打する。そして坂が緩やかになったところで、夏光はようやく木の幹を支えにして止まることが出来た。


「やっと……。とまった……」


 動こうとすると、全身が痺れるように痛んだので、そのままじっとした。


「なんとかアイツらから逃げられたのか」


 まぁ、作戦は台無しだったけど……。


「うわっ!」


 自分の腕を見て思わず声が出た。尖った木や、石の仕業だろう。切り傷が無数にある。着ているパーカーはもう服と言えないくらいにボロボロになっていて、足や腹から出た血で汚れきっていた。


「うっわ最悪……。これお気に入りなのに。ってか痛すぎるんだけど。こういう時ヒロインが助けに来てくれるんじゃないの?」


 思っていたことが何一つ合わずに、夏光は思わずため息をついた。


「もうこの世界で生きていける気がしねえ……」


 なんであんなモンスターみたいなのがいるのかも分からない。なぜ暗闇で目が見えて、その上肌がこんなに白いのかも分からない。ここが何処なのかも分からない。分からないこと尽くしの今に、夏光はもううんざりになっていた。

 ふと前を見ると、遠くの方にぼんやりと灯りと建物のようなものが見えた。


「町……かな。あそこに行けば何か分かるかも……」


 でも痛くて動けない。それに夏光はずっと走っていたせいか、凄まじい眠気が襲ってきた。


「まぁ……明日でも……いいよな」


 そう思って目を瞑ろうとした瞬間、鈴のような音が耳元で鳴った。

 なんだろ、この音……。

 一瞬疑問に思ったが、夏光は気にせず目を瞑った。


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