14話 レイリィって
こうちん!
ーーレイリィ。先ほど話していた兵士からも出た名前だ。確かレイリィさえ居ればどうにかなると兵士は言っていた。
「そのレイリィって奴はどんな奴なんだ? さっき兵士から盗み聞きした時も聞いたんだが。勇者とかそんな感じか?」
恐らく剣と魔法のこの世界。勇者やら選ばれし者やら居てもおかしくはないだろう。
「ほう、レイリィ様を知らぬと……ならば世間知らずな悪魔に教えてやろう。レイリィ様は、この国の王様、デウス・アルカディア様の娘であり、この国1番の腕前と言ってもいいほどの剣技を持った騎士だ」
「へえ、この国1番の剣技ねえ……是非剣道で1試合してみたいもんだ」
「フッ、面白い冗談を」
「別に面白さを求めて言ったわけじゃねえよ」
その話を聞いて、1つ夏光には気になる点があった。
レイリィの性別だ。この世界での名前の基準や、男性と女性それぞれどのような名前がどちらの性別を象徴させるか知らないが、レイリィと聴くと、夏光には女性というイメージが第一に浮かんだ。つまり、夏光のイメージ通りに行くと、レイリィとやらは女性ということになる。
「ところで、その王の娘のえらいえらいレイリィとやらは女なのか?」
「そうだが?」
女と確信して夏光はふむ……と顎を抑えた。
「キリッとしためちゃくちゃ強い女騎士か……悪くない。俺の好みだぜ」
「何を言っているんだ貴様は……」
兵長が心底呆れた表情を見せる。
「にしても、女が国で1番強いって……アンタら情けなくねえのかよ」
まるで兵を馬鹿にするように言うと、兵長は表情1つ崩さずに答えた。
「デウス様は我らが努力をして叶うような強さでは無いのだ。どう頑張ろうとしても届かない存在。いわば『神』と言ってもいいくらいだろう。その娘様だ。神の子でも我らには届かない」
「……神、か」
夏光は色々な感情を込めた呟きをした。
「ま、俺は世界の神に先日会ったけどな」
「……吸血鬼は頭のおかしい奴ばかりと聞いたが、その通りのようだな」
「そりゃ信じてくれないよな……俺でも信じねえわ」
「……そうだな」
兵長は微塵たりとも攻撃をするつもりがないようだ。剣も抜かずに立ちっぱなしでいる。そこで夏光は数秒後、その意味を理解した。
「まんまと時間使っちまったぜ……何もしてこねえと思ったら、そういうわけだな」
夏光が苦虫を噛み潰したような顔をすると、兵長は意地悪な表情を浮かべて笑った。
「ようやく気づいたか。吸血鬼が頭の悪い馬鹿でこちらも助かる」
夏光はまんまと罠にはめられたのだ。レイリィが来ればこの場は収まる。だが、レイリィが来るまでに兵士達は吸血鬼、夏光の逃亡を阻止しなければならない。つまり、今、戦わずしてレイリィが来るまでの時間を稼ぐのが兵士にとって1番安全であり、楽な方法なのだ。
「おしゃべりな性格が引っ張っちまったな……俺は馬鹿だ」
夏光は己の愚かさを嘆いた。
ラブコメばっか書いてると異世界ものとか書きたくなっちゃうよね分かる