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八上の三魂  作者: 双鶴


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第七話 八上の堅さ

丹波に入って数日。

明智光秀は、山々を渡り歩きながら国衆の城を見て回っていた。

その中でも、ひときわ目を引いたのが――八上城である。


「……なるほど。これが八上か」


山の尾根に沿って築かれたその城は、

まるで山そのものが城壁となっているかのようだった。

谷を見下ろす位置にあり、

攻め手は必ず狭い山道を通らねばならない。


利三が馬を寄せる。


「殿。

 八上は、丹波でも屈指の堅城と聞きます。

 波多野氏は代々、この地を守り続けてきたとか」


光秀は静かにうなずいた。


「地形を知り尽くした者が守る城は、

 兵の数では崩せぬこともある」


利三は続ける。


「さらに、波多野氏の結束は固いと。

 兄弟三人が力を合わせ、領民からの信頼も厚いようです」


光秀は目を細めた。


「……兄弟か」


その言葉に、わずかな興味が宿る。


「太陽のような当主・秀治。

 月のように寄り添う次兄・秀尚。

 そして――星のように鋭く輝く弟・秀香」


利三が噂を伝えると、光秀は小さく息を吐いた。


「民がそう呼ぶということは、

 それだけ三人が領内に光をもたらしているということだ」


光秀は八上城を見つめたまま、静かに続ける。


「……侮れぬ。

 城の堅さだけではない。

 領主の結束、民の信頼。

 これらが揃えば、容易には揺らがぬ」


利三はうなずいた。


「殿。

 八上を攻めるには、周囲の城を落とし、

 補給路を断つ必要がありましょう」


光秀はしばし沈黙し、

やがて静かに言葉を落とした。


「……まずは丹波の地を読み解くことだ。

 八上は最後でよい。

 焦って攻めれば、こちらが痛手を負う」


その声には、知将としての冷静さが宿っていた。


光秀は馬を進め、山の稜線を見渡した。


――八上は、ただの山城ではない。

――波多野氏は、ただの国衆ではない。


丹波攻めの難しさを、光秀は改めて悟った。


だが同時に、

その難しさこそが、光秀の闘志を静かに燃え上がらせていた。


「……面白い」


光秀は小さく呟いた。


こうして、光秀は八上城の堅さと波多野氏の結束を確信する。

その頃、八上ではまだ、

この知将の視線が向けられていることを誰も知らなかった。


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