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八上の三魂  作者: 双鶴


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第五話 丹波平定の命

永禄十二年、春。

安土城の一室で、

明智光秀は静かに膝をついていた。


「丹波を平らげよ」


信長の言葉は、短く、鋭く、迷いがなかった。


光秀は深く頭を下げる。


「はっ。

 丹波は山深く、国衆の結束も固き地。

 容易ではございませぬが……

 必ずや平定してご覧に入れます」


信長はわずかに目を細めた。


「容易ではないからこそ、お前に任せるのだ。

 丹波を押さえれば、山陰道が開ける。

 天下取りの道筋が整う」


光秀は静かに息を吸った。

丹波――

険しい山々に囲まれ、国衆が複雑に入り組む地。

その中心にあるのが、波多野氏の八上城である。


「光秀よ。

 丹波の国衆は、皆、己の地を守るためなら牙を剥く。

 だが、いずれも大義を欠く小勢にすぎぬ」


信長の声は冷たく、しかし確信に満ちていた。


「お前の才覚であれば、

 丹波など、ひとつずつ崩していけよう」


光秀は深くうなずいた。


「御意。

 まずは国境の情勢を探り、

 丹波の諸城の堅さを見極めます」


信長は立ち上がり、光秀に背を向けた。


「丹波を平らげよ。

 その先に、近畿の安定がある」


光秀はその背中を見つめながら、

静かに拳を握った。


――丹波は、ただの山国ではない。

――国衆の結束、地形の険しさ、城の堅さ。

――いずれも侮れぬ。


だが、命は命。

光秀は立ち上がり、家臣たちを呼び集めた。


「丹波へ向かう。

 まずは国境の地より、状況を探る」


その声は静かだが、揺るぎなかった。


こうして、丹波攻めの幕が上がる。


八上の三つの光がまだ穏やかに輝くその頃、

山の向こうでは、確実に大きな影が動き始めていた。


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