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八上の三魂  作者: 双鶴


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第十五話 孤立の山城

丹波の山々に、重苦しい空気が満ちていた。

明智光秀が諸城を次々と落とし、

国衆が織田家に屈していく中で――

八上城だけが、取り残されていた。


「また一つ、明智に……」


「このままでは、八上は四方を囲まれてしまう……」


家臣たちの声は、日に日に弱くなっていく。


秀治は評定の間で地図を見つめ、

深く息を吐いた。


「……味方が、いなくなっていくな」


秀尚も沈んだ表情でうなずく。


「兄上。

 かつては共に明智と戦った国衆たちが、

 今は皆、明智の旗下に……

 これでは援軍も望めません」


秀治は拳を握りしめた。


「皆、己の領地を守るために明智についたのだろう。

 責めることはできぬ……

 だが、八上はどうなる」


その横で、秀香は静かに地図を見つめていた。


「……八上は、完全に孤立しました」


秀治と秀尚が顔を上げる。


秀香は淡々と続けた。


「北の赤井家、南の青垣、

 東の柏原、西の氷上……

 すべて明智の勢力下です。

 八上は、丹波の中央で“島”になりました」


家臣たちがざわめく。


「これでは兵糧も……」


「援軍も……」


「包囲されれば、ひとたまりも……」


秀治は皆を制し、秀香に問う。


「秀香。

 明智は、次にどう動く?」


秀香は迷いなく答えた。


「八上を包囲するでしょう。

 前回のような大軍ではなく、

 周囲の城を拠点にして、

 じわじわと締め上げるはずです」


秀尚が息を呑む。


「……蛇が獲物を締めるように、か」


「はい。

 光秀は、八上を“最後の砦”として残しました。

 ここを落とせば、丹波は完全に明智のものになる」


秀治は目を閉じ、静かに言った。


「……八上は、丹波の最後の光か」


秀香は兄の横顔を見つめ、

胸の奥に痛みを覚えた。


「兄上。

 八上はまだ折れていません。

 ですが――

 このままでは、持久戦は不利です」


秀尚が振り返る。


「秀香、それは……」


「はい。

 次の評定で、はっきり申し上げます。

 八上は、戦い方を変えねばなりません」


秀治は深くうなずいた。


「……分かった。

 次の評定で聞こう」


その時、見張り台から太鼓が鳴った。


「報告!

 明智の斥候、八上の近くに現れました!」


評定の間に緊張が走る。


秀香は静かに立ち上がった。


「……光秀が動き始めました。

 八上の孤立は、いよいよ深まります」


山城に、重い影が落ちていく。

八上は、確実に包囲の輪の中心へと追い詰められていた。


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