空爆予告
キラリと輝く特殊素材の機体、目標を破壊すると自身も灰塵に帰する無機質な形状、真っ青な空を轟音とともに切り裂きながら進むミサイルが、砂漠の真ん中を走る列車に突き刺さる。
紅蓮の炎が上がり、列車を二つに切り分ける。
俺の視線は、ミサイルからの視線になった。青い空と砂しかない光景の中を猛スピードでぶっ飛んでいく。目指すは砂漠の中にある一本の線の上を走っている細長い虫の様な列車。見る見る近づいていき破壊される車両は・・・・俺が乗っているカプセルが積んであるコンテナだ!・・・・
ふっと目が覚めた。
義碗の右腕以外の身体から汗が噴き出していた。
いつものくせで、目が覚めると本能的に周りの気配を探ってみたが、特に異常はない。ふーーっと大きくため息をついた。
アジトがある倉庫の一角でシュラフにくるまって寝ていたのだが、夢見が悪かったようだ。
まだ起きるには早い時間だが、寝付けない。
列車の中で変な時間に寝ていたせいかもしれない。
しかしあのミサイルは何の目的で撃たれたものだったのか。俺を狙ったのか。
いや、俺の目的阻止のためだけでミサイルによる列車攻撃は代償が大きすぎる。
では一体何のために・・・・積荷のリストを思い出しても何も思いつかない。
とりあえず博士の救出とは関係なさそうだ。
気持ちを切り替え作戦に集中するため、日頃のメンタルトレーニングで会得した、どんな状況でも瞬時に睡眠できるヨガの技で、再び夢も見ないような深い眠りについた。
「もうすぐ空爆予告が発表されるぞ」
Mr.Bが言った。
俺とMr.Jはイスラン軍の軍服、Mr.Bは運送会社の制服を着て運送会社マークの入ったトラックに乗り込み、Cビル近くの路上で待機していた。
見かけは地元で有名な運送会社の「いのしし」マークの入ったトラックだが、荷台の中は貨物ではなく最新の機器が装備され、複数のモニターにはCビルの様子が写っている。様々な方向からCビルの様子が監視できるようになっている。
Cビルは、かなり広い敷地に建っている白い外壁の研究施設だ。
地上20階、地下5階とさほど高層ではないが横に広い。敷地の周りはぐるりとフェンスで囲われており、出入りできるゲートは南北2箇所しかない。ゲートにはガードマンが常駐しており、研究所に訪れる全員を厳しくチェックしている。
モニターに映るCビルは、まだ、発表前なのでいつもと変わらぬ平穏な風景だ。
予告空爆は発表されてから3時間後に実施される。もちろんイスラン国の制空権はイスラン公国にあるため、通常の爆撃機による空爆は不可能だが、今回のような予告空爆の場合、ユーリ連邦の爆撃機は高度20万メートルの衛星軌道を飛んで爆撃してくる。
地上からの迎撃は不可能だ。
攻撃衛星でもあれば話は別だが、今のところ衛星軌道を含む外気圏を自由に活動できる兵器を所持しているのは、我がユーリ連邦とライバルのザビ共和国ぐらいなものだ。
さらに、その超高高度から寸分たがわぬピンポイント攻撃ができる機体を持っているのは、世界の警察と異名をとるユーリ連邦だけなのだ。
ユーリ連邦の国営放送を映しているモニターに、スポークスマンの姿が映った。
ユーリ連邦政府が重要発表をする時は、最近はこの人が出てくる、なじみの顔だ。
いよいよ発表の時だ。
「全世界の皆様へ発表します。我がユーリ連邦は、大統領の名において、今から3時間後に、イスラン公国N市の研究施設Cビルを攻撃します。現在Cビルでは、国際条例に違反した大量破壊兵器の開発が行われているからです。我々は正義の名において、これに断固立ち向かい、世界平和を勝ち取るためにやむを得ず攻撃を実行するものです。Cビルにいる関係者の皆様は、建物から早急に退去してください。我々は人的被害を望むものではありません。繰り返します・・・」
予告空爆の宣言はいつ聞いても不思議な感じが消えない。
ボクサーがこれから右の頬を殴りますよ、と言っているようなものだが、その拳がよけ切れないほど強力なものだから効果があるということか。
発表を聞きながら、モニターに映ったCビルのゲートを監視していると、ものの数分のうちに、まばらだった通行が一気に増え出し、それまで全ての通過する車両をチェックしていたガードマンはとても対処しきれなくなり、ゲートが開放され、ノーチェックで素通りし始めた。
「よし、作戦開始だ」
Mr.Bがアクセルを踏んだ。俺たちが乗ったいのししマークのトラックは、Cビルのゲートを難なく通過し建物の影に横付けにした。




