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潜入!イスラン公国

 准将の部屋を出た俺は、いつものごとく、ミッションカードをカードリーダーにセットし、スマートグラスを使って作戦に関するデータの記憶をしながら宿舎に向かった。

 毎度のことながらこの作業は疲れる。

 24時間で液体になり情報が自然消滅する特殊素材のミッションカードは、一日で頭に詰め込むにはかなりきついデータ量なのだ。

 もちろんポイントだけ記憶してもかまわないのだが、細かいことを覚えなかったために命を失った仲間が何人もいる。

 死にたくないと思えば、人間というものは想像以上の能力を発揮できるものだ。



 俺は、ミッションカードの指示に従って久しぶりの鉄道を楽しんでいたのだが、途中、ミサイル攻撃を受け、せっかくの旅行が台無しになった。

 何とか、無理やり記憶したミッションカードの情報で、砂漠の中を高級オフロードバイクでかっ飛んで来られたおかげで、ほぼ予定通りN市に到着した。


 N市はイスラン公国で2番目に大きい都市だ。

 町の中央に小さな湖がありそこを取り囲むように緑が生え、町になっている。砂漠が国土の八割を占めるイスラン公国のなかでは特に大きなオアシス都市だ。


 昔はもっと大きかったようだが、オアシスの水量が徐々に減ってきており、町自体が少しずつ砂漠に侵食されてきている。その証拠に、町に入る手前の砂漠には、昔の建物が廃墟となって半分砂に飲み込まれ墓標のように建っているのが散見される。


 俺は、その建物の一つにオフロードバイクを隠し、そこで夜になるのを待ってから徒歩でN市に侵入した。

 我が国と戦争状態にあるイスラン公国なのだが、特に戒厳令等は布かれてはおらず、銃を持った兵士の姿がやたらと目に付くものの、街燈等も普通に点いていて、戦時下という緊張感はあまり無い。

 最近の戦争はこんな感じが多いらしい。


 ユーリ連邦の立場は、独裁者に対する反体制組織側の味方で、時折、予告攻撃を実施するという感じが定着している。

 イスラン公国体制側では、国内での反体制派への弾圧は厳しいものがあるが、ユーリ連邦への直接攻撃が行われたことはない。ユーリ連邦が本気になったらひとたまりもないことを知っているのだ。


 イスラン公国の国民も、その辺りはなんとなく理解していて、町の雰囲気もそれほど張り詰めてはいないようだ。


 俺は、闇夜に乗じてノスリル側のエージェントと合流するアジトへ向かった。赤道が近いこの国では、日中は50度を越える暑さだが、夜になれば頬に当たる風が気持ちいい。


 街燈の明かりを避け、兵士の監視から逃れるように街の中を進んでいく。

 街並みにはなんの緊張感も無い静かな空気が漂っているが、明後日に空爆予告が発表されれば蜂の巣をつついたような大騒ぎになるはずだ。


 アジトは街の中心から少し外れた倉庫郡の中の、比較的大きな建物の中に設置されていた。

 急遽作ったにしては、外からは判りにくく、入ってみると十分な広さを持った隠れアジトだった。さすが技術の国ノスリルということか。


 待っていた人間は4人。

 ユーリ連邦側の連絡員が一人、それにノスリル側の人間が3人、そのうちエージェントは二人のようだ。

 我がユーリ側の連絡員は、黒髪美人のサヤカだった。


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