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垂直離着陸小型輸送機オリバー20

 俺がチューブを受け取っていると、Mr.Bが再び携帯端末でどこかと話をし終わり、皆に向かって強い口調で言った。

「ここからは、飛行機で移動する。10分後にオリバー20が来る。すぐに着替えるんだ。時間がないぞ」

 オリバー20とは、最近配備された垂直離着陸小型輸送機で、20人乗りの最新型機だ。


 俺は、ベッドから降り用意してあった戦闘服に着替えた。

 あらためて体をチェックしてみると義腕の右腕と新しい左足は当然全く無傷。

 生身の部分も所々細かい傷があるがたいしたことはない。


 他の3人も戦闘服に着替えると病院の屋上に向かった。

 屋上にはドクターヘリ用のヘリポートがある。オリバー20はここを目指して飛行してくるがまだ姿はない。


 Mr.Bは、腕時計を見ながら西の方向を見ている。

「来た」

 こちらに向かってくる豆粒のような機影が見えたかと思うと、見る見るうちに大きくなってきた。

かなりのスピードだ。


 間もなくその迷彩色の機体が頭上に近づくと、翼下にあるジェットエンジンが器用に向きを変え、滑らかに水平移動から垂直移動に移りそのままヘリポートに着床した。

 「ほう、なかなかいい腕のパイロットだな」


 Mr.Bが感心していると、機体の後部のハッチが下に開いて搬入口が開き、中からパイロットヘルメットを被った男が顔を出し、早く乗り込むよう合図をした。

 エンジン出力を最低まで絞っているのだろうが、かなりの風が渦巻く中を4人揃ってオリバー20に乗り込んだ。


 中は輸送機なのに何も積んでいないせいか見た目よりかなり広い。

 4人は足早に機内の搭乗員シートに座り、シートベルトを締めた。

 搭乗員シートといっても、機体の壁面に沿って取り付けられたアルミパイプ製の簡易型ベンチのようなもので、座り心地など全く無視しており、単に飛行中に動かないように人間を固定しておくためだけのものだ。


 運転席も見えるところにあり、パイロットがどんな操縦をしているのかまで丸見えになっている。

 さっき搬出口から顔を出したのはこのパイロットだ。


 我々がベルトをロックすると、待ちかねたようにパイロットがこちらを振り向いて親指を挙げた。

 発信の合図だ。


 「キーーンーー」


 さっきまで絞っていたジェットエンジンが轟音をあげ始めると同時に、乗り込んできた後部ハッチが閉まり、機体が浮き始めた。


 着陸した時と同じように、滑らかに上昇しスーッと水平飛行に移行していく。やはり一流のパイロットだ。

 大抵の輸送機は軽量化のため防音設備がなく、エンジン音がうるさくて耳栓をしたりするものだが、さすが最新型。


 機内は意外と静かでちょっと大きな声を出せば会話もできる。

 しかし窓はほとんどない。

 幸い、俺が座ったちょうど後頭部のあたりに、点検口のような小さな薄汚れた窓があり、かろうじて外の景色が覗けたが、雲の中に入ったせいか、薄いグレー一色の世界だ。


 離陸してから数分しか経っていないが、もう雲のなかにいるとは、かなりのスピードで高度を上げているのだろう。このまま飛行できれば1時間もしないうちにノスリルの領空内に入ることができる。

 そうなれば、さすがのザビ共和国もあきらめるはずだ。


 ちょっと安心して、何気なく小さい窓から外を見ていると、一瞬何かの影が通ったのが見えた。

 錯覚か?


 そう思った刹那、「ゴン!」という衝撃が響いたか思うと、俺たちが入ってきた後部ハッチがミシミシ

と鳴り始めた。


「なんだ?何が起こっている?」


 Mr.Bがこう叫ぶと、その言葉に反応するように、飛行中は絶対開くはずのないハッチがギリギリと少しずつ開き始めた。

 乗員全員があっけにとられて見ていると、ハッチはいきなりガバッと開き、そこから機内の空気が物凄い勢いで吸い出され、機内は嵐のような状態になった。


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