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ミサイル攻撃

 俺は、ブラックアウトしたモニターを見つめ、2秒ほど固まったが、3秒目には活動を開始した。

 俺の職業では、時間が命という場面がかなり多い。

 瞬間で判断し行動しないと命がいくつあっても足りない。この場合は、あと3分ある。まだ余裕だ。


 とりあえず、砂漠の真ん中で必要不可欠なのは、水と食料だ。

 ありったけの在庫をバックパックに詰め込んで背負った瞬間に、カプセルに衝撃が走った。


 外部モニターを見ると、俺の車両の後ろ2両目が火を噴いて爆発している。


 何が3分後だ。基地に帰ったらマリーを問い詰めなくてはならない。もっともマリーは画面に出た情報を伝えただけなので責任があるはずはないが。


 それどころか、無事帰れるかどうかすら怪しくなってきた。

 あと数メートルずれていたらお陀仏だった。

 悪運の強さもこの職業には不可欠なのだ。


 外部モニターで被害状況を見ていると、ドーンという衝撃波がコンテナ内に響いた。

 ミサイルは音速を超えて飛んできたらしい。

 着弾より音の方が遅い。音速超えのスピードでこの移動中の列車に当てるということは、かなり高性能なミサイルということか。


 数キロメートルの長さがあった「ウルトラトレイン」は、シャベルで切られたムカデのように、半分の長さになってしまった。

 だが、運転手は気が付いていないのか。後ろ半分の貨車を置き去りにして一向にスピードを落とさないで走り続けている。


 外部モニターには新たにチカッと輝きが見えた。太陽の光りをミサイルの機体が反射したようだ。

 ふたつ見える。


 俺は、右腕を戦闘モードにするコマンドを右手首にある小型キーに入力した。


 俺の右腕は義腕だ。


 本物の腕は、数年前の訓練の最中、誤爆発とともに吹き飛んだ。俺が所属する連邦軍の特殊工作部隊は訓練が厳しいことで有名である。

 訓練中に命を落としたやつもいる。俺の右腕も、演習場のどこかに埋もれているはずだ。今頃は雑草の肥料になっているだろう。


 もっとも、現代の科学技術は金さえ積めば本物以上の身体を作ってくれる。

 俺の右腕もそうだ。

 家一軒建つくらいの値段らしいが、これはもう義腕ではない。

 なじみの技術屋が言うには、カテゴリー的には兵器の部類になるらしい。

 確かに、今俺が生きていられるのは、間違いなくこの義腕のおかげだ。これがなければ、多分2回目あたりのミッションで死んでいる。


 兵器といっても、腕から銃弾が飛び出たり炎を吹く訳ではない。

 市販品との決定的な違いは、基本性能だ。

 外見上は、本物の腕と全く変わらないし、動きも脳神経と接続していることから生身と変わらない。

 その辺りは市販品と大差ないが、まず耐久性が高いのだ。最新の複合素材でできているため、よほどのことが無い限り破損しない。


 さらに、根本的な力が違う。反応速度が常人の約4倍、パワーが約100倍まで引き出すことができる。


 有体に言えば、右腕に頑丈なパワーショベルが付いているようなものだ。

 当然、日常生活では無用なパワーのため、通常モードと戦闘モードの2種類で使い分けている。


 その右腕がコマンドを受け付けて戦闘モードになった。

 低い唸りが右肩から全身に伝わってくる。今までの経験からとても安心できる感覚だ。


 その安心感を味わいながら外部モニターを見ていると、次のミサイルの軌道が判った。

 こちらに直接向かってきてはいないようだ。2発とも列車が進んでいるさらに先に向かっている。


 おっ、着弾した。


 オレンジ色の炎とともに、2本のレールがはじけている。

 げっ、列車本体ではなく線路を狙ったのだ。


 俺は、バックパックを背負い直し、カプセルの扉を開けた。

 むあっと熱気が入ってきた。コンテナ内の気温は80度は超えているようだ。


 しかし、そんなことを気にしている場合じゃない。

 運転手も、線路が吹っ飛んでいることに気が付いたらしく、列車のスピードは急激に落ち始めた。


 コンテナの扉は中からは開けられない。

 俺は右手を手刀のかたちにしてコンテナの扉の真ん中辺りに突っ込んだ。

 空手で言えば中段の突きといった感じである。

 生身の右手であれば、硬い鉄板に指先が当たり悲鳴を上げるところだが、俺の右腕は家が一軒建つほど金をかけた兵器だ。


 鉄板のコンテナの扉に、まるでお菓子のヨーカンに刺さる竹串のように手がめり込んでいく。

 ある程度入ったところで、扉を止めているかんぬきを探り鍵を外すと、腕を引き抜いた。

 同時に扉が勢いよく外側に開き、こもった熱気を吐き出した。


 一応右手を確認したが、傷ひとつついていない。

 さすがである。

 この腕を開発した兵器開発センタの友人ジャックには感謝してもしきれない。

 今回も、作戦が終わったらイスラン公国の名物「砂漠まんじゅう」をお土産に買っていこう。


 いよいよ列車の速度は落ち、ほとんど徐行運転になった。

 どうやら破壊されたレールの手前で止められるようだ。


 なぜ、誰がこの列車を攻撃したのか気になるところだ。

 まさか俺を狙ってということか?情報がもれているということなのか?それともなにか全く他の理由で、俺は巻き込まれただけということなのか?

 どういう理由にしろ、俺は密入国者であることは間違いない。誰にも見つかるわけにはいかない。とにかくこの場を離れる事が先決だ。


 俺は、一旦カプセルに戻り、自爆スイッチをセットした。

 証拠隠滅のためだ。

 これで5分後には、このコンテナもろともカプセルは粉微塵になる。ミサイル攻撃をされたのだからこの車両が爆発してもそんなには怪しまれないだろう。


 コンテナから飛び出した俺は、置き去りにされた後ろ半分の貨車に向かって走り出した。


 このウルトラトレインはかなり多種多様な物を運んでいる。

 それこそ、赤ん坊の粉ミルクから食料品、電子機器、工業原材料、はては棺桶まであらゆるものを積んでいる。


 作戦前に渡されたミッションデータカードの中には、このウルトラトレインの積荷の情報もあった。

 確かイスラン公国の皇帝が注文したものの中に役立つものがあったはずだ。

 それが積んであるのは先程の攻撃で置き去りにされた75両目の貨車だ。


 数分後、俺は砂漠の真中を皇帝が発注したという高級オフロードバイクで、N市を目指し疾走していた。



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