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Mr.R現る!

 新たな標的に設定されたクリス博士は、意外と後先考えないタイプらしい。

 危機が迫ってきてから現実に戻ったようだ。舌なめずりしながら近づいてくる乱入者を見て俺のベッドのそばまで後ずさりしてきた。


 当然、ヤツに俺の顔は丸見えだ。

 やっと気がついたらしい。ヤツの顔から不気味な笑いが消え、目をむいて俺を見つめている。

「き・きさま・・・ケンジか・・なぜこんなところに・・」

 声が上ずっている。よほど嬉しいのか、まあそんなことはあるまい。かなり恨みを持っているほうが正しいだろう。

「やあ・・久しぶりだな Mr.R、元気だったか」

 妙な場所で思いがけない相手に出会ったせいで間の抜けた返事をしてしまった。

 やはり間違いない。ヤツだ。ザビ共和国の工作員Mr.Rことリチャード・リンクス。


 以前、とある作戦で戦った相手だ。あの時のことがよほど思い出深いらしい。

 声が震えている。

「・・・ふ・・ふふ・・会いたかったぞ。この傷がうずく度に、貴様のそのいやらしい顔が目の前に浮かぶのだ。こんなところで会えるとは!この世も捨てたものではないな。まだ神はいるようだ」

 ヤツは興奮した赤い顔で口角につばを溜めながら吐いた。

 こんなヤツにいやらしい顔と言われてしまった。そっくり返してやる。

 しかし、この状態でそんな強がりを言っても全く意味がない。


 Mr.Rにとっては千載一遇、俺にとっては一番会いたくないやつに一番やばい状況で出くわしたということだ。

 ヤツは銃を構えたまま俺たちに近づいてくる。


 その時クリス博士が俺の影に隠れながら、耳元でささやいた。

「あなたの足はもう治っているわよ」

 俺の見間違いだろうか。そう言っているクリス少女の顔は、ニヤリと笑っている小さな悪魔のように見える。

 この表情は、見覚えがある。

 確か、俺が初めてこの義腕をつけ模擬戦をした時、義腕製作者である技術部のジャックがこんな目をしていた。人の命より自分の作品の結果に興味がある技術者のさがなのか。


「ほう、負傷兵になったのか。ん?足だな。ふっふっ万全のキサマとやりたかったが、まあいい。俺のバージョンアップしたパワースーツの威力をその体で直に感じるといい。嬲り殺してやるぜ」

 ヤツはそう言うと、歩きながら銃をホルスターにしまい、両手を挙げていきなり走り寄ってきた。

「キャッ..」

 小さく悲鳴を上げたクリス博士を横目に、俺はかけてあった毛布をまだ通常モードの右腕で掴み、Mr.Rの顔目がけて投げ拡げた。


 俺が全く動けないと思っていたMr.Rは、結構油断していたようだ。

 以前、人間捕獲用ネットランチャー「ブラッディスパイダー」をもろに浴び顔中傷だらけになった時と同じように、全く避けることなく広がった毛布を頭からまともに被った。


 一瞬、何が起こったのか戸惑ったのだろう、突進するスピードを弱め、被った毛布をがむしゃらにはがし始めた。

 なるほど、パワースーツは怪力が発揮できるが、首より上は生身の人間である。

 頭に引っかかった毛布をパワースーツの力でむりやり引き剥がそうとしたら、下手をすると首の骨が折れてしまう。

 その微妙な力加減をMr.Rのパワースーツはできないらしく、頭に絡まったたった一枚の毛布にもがいている。


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