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第八話:即席コンビという名の奇跡

二人の心は一つになった

一人ではない時間

輝きはそこから…


舞台袖は、控え室よりも静かだった。

照明の熱。

スタッフの足音。

遠くから聞こえる、誰かのウケた笑い声。

瑛太は、台本を持たずに立っていた。

即興。

今日の形式は、それだけが条件だった。

横を見ると、星羅がいる。

背筋は伸びているが、指先だけが落ち着きなく動いている。

「……ねえ」

星羅が、小さな声で言った。

「もしさ、私が変なこと言ったら……助けてくれる?」

瑛太は、ほんの一瞬だけ考える。

そして、肩をすくめた。

「助けるっていうか……拾うだけや」

星羅は、くすっと笑った。

その笑いは、昨日より少し柔らかい。

名前が呼ばれる。

「次、瑛太さん、星羅さん」

二人は顔を見合わせた。

確認も、打ち合わせもない。

ただ、それだけで十分だった。

舞台に出た瞬間、空気が変わる。

客席の視線が、鋭く刺さる。

沈黙。

星羅が一歩前に出た。

「……あの、私、今日――」

言葉が止まる。

ほんの一拍。

瑛太は、その“間”を見逃さなかった。

「止まるな止まるな!

今、人生のロード中か!」

客席が、どっと笑う。

星羅は一瞬驚き、

それから流れに乗る。

「違います!

これは……心の読み込みです!」

「容量でかすぎやろ!

そんなん読み込み終わらんわ!」

笑いが、重なる。

星羅の目が、少し輝いた。

緊張が、勢いに変わる。

「私、今日ここに来るまで、三回転びました!」

「それもう、

オーディションやなくて厄落としや!」

テンポが合い始める。

即席のはずなのに。

長年の相方のように。

奇跡みたいに、噛み合っていた。

終わりの合図。

二人は、深く一礼する。

袖に戻った瞬間、

星羅が大きく息を吐いた。

「……生きてる」

「大げさやな」

そう言いながら、

瑛太は少しだけ笑っていた。

スタッフの視線。

メモを取る手。

空気は、悪くない。

星羅は瑛太を見上げる。

「ねえ……さっきのツッコミ」

「どれ?」

「助けるっていうより……

守ってくれてた」

瑛太は、答えなかった。

視線を逸らす。

意識すると、壊れそうだから。

ただ一つ、確かなことがある。

星羅との即席コンビ。

偶然みたいな出会いじゃない。

瑛太の中では、

それはもう――奇跡だった。

「……次、どうする?」

星羅が聞く。

瑛太は、少し間を置いて言う。

「次も、俺が拾う」

星羅は、少しだけ照れて、うなずいた。

二人の影が、

舞台袖の床に並ぶ。

まだ名前のないコンビ。

けれど、その距離は、確実に近づいていた。

読んで頂きありがとうございます

感想頂けたら嬉しいです

宜しくお願いします

猫田笑吉(=^・^=)

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