「屋敷の呪い?」
「木太郎、泣くな。
俺たちのせいじゃない。
もとこ、
いや、
もとこ先生のいたずらも度が過ぎたんだ。
あんなところに無線機を置いていたり、
外に聞こえるように大声で話していたのは、
俺たちを脅かすためだったんだよ。
きっと、
ナイフをすり替えた犯人たちも、
俺たちより先にそれに気づき、
俺たちと同様に、
本気にしたんだろうな。
冷静に考えれば、
変な話しだ。
俺たち全員がもとこ先生の芝居にひっかかって、
あんなことまで考えたのは、
この屋敷の呪いかもしれない。
とにかく、
この後は、
犯人がチウメちゃんとアスカちゃんかどうか、
SDカードの中の爪から特定するんだ。
それですべておしまいだ」
永久は、
木太郎が偽造したメールのこともあるのか、
さほど、
もとこには同情していないようで、冷静に話した。
「犯人にちゃんなんか付けるなよ!」
木太郎が涙を拭いながら鼻声で言う。
「それはそうだが、
二人が怪しいことに間違いはないが、
爪を確認するまでは断定はできないからな。
そう興奮するな」
ようやく落ちついてきたのか、
それとも我慢しているだけなのか、
ホウセイも木太郎とは違って冷静に話した。
すると、
「ホウセイよく冷静でいられるな。
俺には無理だ。
二人が犯人だと確定したら、殺すしかない。
それが俺たちにできる最低限のお詫びだ」
と、
木太郎がとんでもないことを言いだしたので、
「やめろ!
殺人者だから、殺してもいいとは限らないだろう。
俺たちは、
あのときどうかしていたんだ。
きっと、これもこの屋敷の呪いだ。
いいか。
まずは、
犯人を特定することが先だ。
もとこ先生も、
木太郎が犯人を殺しても喜ばないぞ」
「もとこ先生のときは殺すしかないと言っていたくせに」
永久と木太郎が言い争いになりそうになったので、
「あのときは、
もとこ先生がオオシマさんと組んで俺たちを殺そう
としていたから、
ああいう話しになっただけだ。
木太郎もあのときは殺人否定派だったんだから、
とにかく落ちつけ。
永久の言うとおり、
犯人を特定させるの先だ。
いいな。
俺だって悔しいが、もうしょうがない」
ホウセイがそう言って、
木太郎の肩をやさしく叩いたのだった。