「ホウセイのヘボ説明と偉そうなくそた」
「くどくて、
ヘボい説明だな。
俺だから、
理解できたけど、
木太郎はバカだから、
まだ、わかってないぞ」
「バカはないだろ!」
「ヘボ説明だと?」
「いいから、黙れ!
要するに、
もとめ先生が自殺しなかったら、
もとめ先生自身が自分が持っていた本物のナイフが、
ニセモノのナイフにすり替えられたことに
すぐ気づくから、
もとこのナイフが、
ニセモノにすり替えられたなんてこと
を誰かが言い出すなんてこと、
すり替え犯は、
予想できなかったんだよ。
だから、
アスカちゃんが、
もとこの部屋にわざとニセモノのナイフ
を落とすこともありえない、
ってことだろう。
もう一本のナイフは、
俺がホウセイに預けたんだから、
すり替えはたった一度だけだったんだからな」
と、
くそたが、
ホウセイが気づいたことなのに、
あたかも自分で考えたように、
偉そうに話す。
「そうか。
すり替え犯は、
自ら、
もとめ先生のナイフとチウメちゃんのニセモノのナイフ
をすり替えたんだから、
ナイフを落とす前に、
もとこのナイフがすり替えられたなんて発想を思いうかべるはずはない、
ということだな。
ということは、
アスカちゃんが、
わざと
自分のナイフをもとこの部屋に落としたワケではないんだな。
でも、
それでアスカちゃんがシロということまでは断定できないぞ」
と、
ようやくホウセイの言いたいことがわかった木太郎は、
鼻をひくひくさせながら話す。
「いや、そうじゃない。
アスカちゃんがすり替え犯なら、
もとこの部屋で見つけたナイフが、
いくらチウメちゃんのナイフとそっくりだとしても、
それが自分が落としたものだとすぐわかるはずだからな。
だって、
自分が二つしかないニセモノのナイフのひとつ、
つまり、
チウメちゃんのナイフをすり替えたんだから、
残るナイフは自分のものしかないからな」
ホウセイはすぐ木太郎に言い返す。
「たしかにな」
くそたはそれだけ言い、
木太郎は悔しいのか、
「いくらそっくりとはいえ、
自分のナイフと他人のナイフを間違えるか?」
と、
また、それだけ言い返した。