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「チウメのはなし5」
「うーん?
どういうこと?」
「このナイフは本物なんです」
ホウセイがチウメに訊くと、
チウメはそれだけ答える。
「本物だから、
もとめ先生は死んだんだろう?」
「ですが、
最初に
もとめ先生が自殺を謀ったときのは偽物だったんです」
「だから?」
「ですから、
あの部屋には
本物のナイフと偽物のナイフがあったんです。
私はそんなこと知らないので、
どうやって、
もとめ先生が偽物のナイフでは自分を刺したのか気になって、
このナイフを掴んでしまったんです。
そしたら、
本物で...」
チウメはそこで黙り込む。
「要するに、
チウメちゃんの指紋がついてしまったということ?
だから、
ナイフごと持ち去って、逃げようとしたの?」
チウメは黙って頷く。
すると、
木太郎が、
「二本の偽物のナイフに二本の本物のナイフか?
偽物はチウメちゃんとアスカちゃんので、
本物はもとこと?
そうか?
もとめ先生のだったのか」
と
独り言のように呟いた。