「おちたの初恋ともとめ」
ゲームに夢中のくそたにも相手にされず、
木太郎、ホウセイが教室に残ったので、
おちたは一人寂しく食堂でジュースを飲んでいた。
そのとき何かいい匂いがしたなあと思うと、
「どうしたの、おちたくん、
誰も相手にしてくれないのかなあ」
とにこにこ笑いながら
もとめが自分の前の席にこしかける。
おちたは意外な展開に驚く。
また、正面から近くで見ると
その顔立ちがすごく整っていて、
肌が白くとてもきれいなことに感動する。
何か話さないと思うと余計言葉がでない。
とっさに出たのは、
「今日もいい天気ですね」の一言だった。
「あら、今日は雨よ」
「えっ」
「あっはは。冗談よ。緊張するでしょ。」と、
もとめは今度はにやにや笑って、
少しおちたをからかっているのだが、おちたは気づかない。
おちたは、
どこかもとことはタイプが違う気がしたので、
「先生、いや先生の妹さんは、
やっぱりいつも黒い服を着ているんですか」
と質問する。
「もとめでいいのよ。
君はどう思うの?」
とおちたの目を見つめて優しく訊いてくる。
「も、もとめさん、僕のカンでは
いつもはもっと普通の服を着ていると思います」
とドキドキしながら正直に答える。
「ピンポーンと言いたいところだけど半分正解ね。
そうね。いつもはアスカさんみたいな格好かな」
とにやりと笑って答える。
「あ、アスカさんの格好って凄くないですか」
とおちたが驚いたように言うと、
「今回は姉の命令で黒服だけどいつもはそうよ。
おちたくん、私のことデブだと思ってたの」
「いえ、いえ、そんな。
多分、スタイルいいんだろうなと思ったから、
普通の服でも充分素敵に着こなせると思って答えたんです。
でも、お姉さんってそれじゃあ、やっぱりデブなんですか」
と余計なことを言ってしまった。