「もとめの整形デブ」
くそたの部屋に全員揃うと、
くそたは部屋の鍵まで閉める。
「実は、
みんなもうすうす感じていると思うんだが」
と
そこまで言いかけてから、
「おちた、オタクから話せ」
くそたはおちたに話しの中身をふる。
「えー、
実は、
もとめ先生が元デブで、
しかも整形した
というのは、
もとこ先生の嘘だと思うんだ。
だから、
直接もとめ先生に訊こうと思ったら、
くそたに白髪がなんとかだと言われて」
「バカヤロー、知らぬが仏だよ。
白髪の後の意味がわからなくて、
考え込んだのかよ」
と
くそたが怒った。
ここで、
いつもなら木太郎が大笑いして、
逆に頭をくそたに叩かれるところだったが、
木太郎はいない。
ヒトメがくそたの反応を見て、
木太郎を探していなかったので、
「あれ、木太郎くんは?」
と言ったので、
他の生徒も初めて木太郎がいないことに気づいた。
「あいつ、
逃げたきりどこ行ったんだろう。
大事な話なのに」
と
おちたが言うと、
「いいよ。
あいつがいると話しが途中で止まるから、
みんなで話しあってから木太郎を呼びに行こう」
と
ホウセイが言う。
「じゃあ、
えーと、
くそたのことわざは抜きにして、
とにかく、
もとめ先生に真実を訊いた方がいいと思うんだけど、
どう思う?」
と
おちたが真面目に訊く。
「バカじゃないの
と言いたいところだけど、
おちたくんがもとめ先生を好きなのがわかるので、
はっきり言うわね。
絶対訊いちゃだめ。
もとこ先生は怖いわよ。
さっきも、
あんた、
どこかに連れて行かれてたじゃない。
あんたがバラしたら、
何されるかわからないわよ」
と
アスカが言う。
「それだけじゃなく、
もとめ先生ももっといじめられるよ」と
永久が言う。
「でも、
このまま整形デブのままにされてて可愛そうだよ」
と
おちたは言う。
「みんな、
それが嘘だとわかってるわよね」
と
アスカがもう一度言うと、
おちたを除く他の生徒は全員頷く。
「おちたはバカだから、
説明してやるが、
くそたの諺が、
この場合適切がどうかは疑問だが、
くそたが言いたかったのは、
みんなも、
もとこ先生の嘘がわかってるから、
もとめ先生が、
もとこ先生が整形デブだ
と言っていたことを知らない方がもとめ先生の気分も害さないし、
丸く治まるということなんだよ」
と
ホウセイが言うと、
「うーん、
あの諺ってこの場合適切じゃないかもしれないのか。
でも、
言いたいことは、
そのとおりだ」
と
くそたは言う。
「なるほど、そういうことか」
と
おちたもようやく理解したようだ。