「女の意地」
「か、ね」
もとこはそう言うと、
「かくざとう」
と
すぐ言う。
もとめも、
「ざ、ね、ざっしだな」
ときり返す。
「しぶといわね。
洒落じゃないわよ」
と
もとめは時間稼ぎをしながら、
「しんでれら」
と
カウントが始まる前に言う。
「こんなに真剣に二人でやられると、
疲れるなあ」
と
永久がホウセイの耳元で囁く。
「コンテストの方がいいよな」
と
ホウセイが永久の耳元で囁く。
「何、二人こそこそやってんの?
あれ、木太郎くんは」
と
もとこも、
もとめの意外な抵抗に疲れてきたのか
イライラしたような感じで言う。
「すいません。
木太郎はウンコだと思います」
と
ホウセイは適当なことを言って笑わそうと思ったが、
誰も笑わない。
「でりけーと」
と
もとめはゲームに集中し、またすぐ言う。
「け、か?けいさんき」
と
もとこもすぐ切り返した。
「さるまわし」
と
もとめが真面目な顔で言う。
木太郎がいたら笑っただろうが、
今はそういう雰囲気ではない。
「ま、か、まくのうち」
「の、ね」
「のみねーと」
と、
また、
もとめがすぐ言い返す。
「ね、か、ねこのみみ」
「それはダメよ」
「何でよ」
「さるのみみとか、
たこのくちでも、よくなるじゃない。
インチキするんじゃないわよ」
と
もとめも実はいらついていたのか、
はっきり、
もとこに言ってしまった。
「さるのみみでも、たこのくちでもいいじゃない。
単語よ。
それに、
んとか最初から始まらないことばじゃないのよ。
どこがインチキなのよ。
負けそうだからって、因縁つけるんじゃないわよ。
そうだ。
じゃあ、生徒たちの意見訊きましょうよ」
「いいわよ、姉さん」
「木太郎くんがいないから、
9人でちょうどいいしね。
多数決で文句なしね」
「もちろんよ。
あたしが勝っても生徒をいじめないでよ」
と
もとこももとめも、
何故か自信をもって言った。