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破軍のヘルメシヤ  作者: 三重野 創


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漁師力学あるかぎり

「異次元とか異世界とか、何も特別なことじゃないんだよな」

 久しぶりの登場、ミドルである。


「メシヤ先輩の影響か?」

 ミドルの言うことを聞いていたら、シュレディンガーの猫だってあくびをするだろう。


(雲水師匠の書庫にメシヤ先輩関連の本があったことは、黙っておいたほうがいいのかしら)


「場の量子論なんて言うと混乱するけど、『何か行き詰まってるな~』って感じたら、場所を変えると良いことが起こったりするのは分かるだろ?」

 これは環境論の話と似ているようで違う。


「いつまで経っても釣れないから、漁場を変えるのと似てるかも」

 静岡は港町が豊富だ。


「そうだな。ちょっとしたことなんだよ。座ってても何も変わらないけど、歩き出すだけで良いアイデアが閃いたりな」

 散歩をすると、考えがススム。


「いまパラレルワールドものやマルチバースものが大流行りだけど、小さく区切ると分岐点だらけなのよね」

 あの日、あの時、あの場所でウィルに逢えなかったら、破軍の戦士達はいつまでも見知らぬままだったろう。


「無限なんて言葉が小さく見えるくらい、可能性に溢れてるんだろうね」

 キョウコもSF好きである。


「たとえばさ。世界なんていうけど、俺に言わせれば一歩踏み出すだけでそれはもう別世界なんだよ。だってそうだろ? 怖じ気づいて止まったままか、歩み出すかで、まったく異なる世界になると思わないか?」

 これは、動かざること山の如しを否定するものではないことを明記しておこう。


「ミドル、あんたけっこう鋭いこと言うわね。普通の人はそこまで気付かないものよ」

 ウィルにとってオブライエンは偉大すぎる存在だが、メシヤを素直に認めたくない気持ちがまだある。なにしろ、まだ話すらしたことがない。メシヤがオブライエンのお気に入りというのがどうも受け入れられないようである。


「ほんとさ、細かいこといったらめちゃくちゃあるんだよ。いま右を向くか左を向くかだけでも違うし、その向ける角度、スピード、止まるポイント、その秒数、途中での目の動かし方、目線の向き・・・とかさ。顔チョット動かすだけでも分岐しまくりだぜ」

 変人の領域である。


「ヒッショー、なんかマズいものでも食べたんじゃない?」

 腹を殴って吐かせるゼスチャーをするキョウコ。


「ぼくは分かるなあ。そう考えると、ダンスの振り付けなんてネタ切れにならない筈だな」

 ススムの一人称は『ぼく』で試しています。


「わたしは概ね賛成よ。休息が取れたらさっさと歩き出さないと、人生終わっちゃうわ」










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