叩け、叩け、叩け!
「獣の血が騒ぐな~」
メシヤにシメられたミドルであったが、相変わらず血気盛んであった。
(メシヤ先輩のせいで余計な刺激を与えたようだな)
「ミドル、日本も物騒になったものね」
連日、不穏なニュースが日替わりで起こる。
「これも雲水師匠の修行の内だわ」
ロードワークは街の治安維持も兼ねている。
「早くなんか起きないかな~!」
(ミドルが一番危険人物ね・・・)
《誰か捕まえてくれ!》
白昼堂々の強盗である。
ミドルが立ちはだかる。
「行くなら俺を倒してからにしな」
「なんだ、テメーは」
素人にしては俊敏なパンチを繰り出した。素人にしては。
「おそい、おそすぎですわ」
強盗の動きがスローすぎて、うっかり10倍手足が出てしまった。
ミドルの闘争心を満たすには、あまりに物足りない相手であった。
「おまえやり過ぎだぞ」
完全にグロッキーである。
「ふうふう・・・。ああ、君たちありがとう!」
強盗被害に遭った、街の電器店の主人が追いかけてきた。
「銀座電器さん、何を盗られたんですか?」
ウィルはマニアックな品が揃う銀座電器を贔屓にしている。
「おお、ウィルちゃん。これはね、ワシが開発したリチウム電池に代わる次世代の二次電池なんだ。それを前から狙ってたみたいでね」
火災事故の多いリチウム電池。次世代充電池の必要性は、以前から声高に叫ばれていた。ただ、銀座電器のこの親父、一介の小売店主では無い。
「ねえねえ。それよりもこの人、大丈夫かな?」
強盗にも五分ほどの魂はあるだろう。
「急所は外したぜ」
ミドルは家電を壊してしまうので、銀座電器には入れない。
「ミドルくん、ここはアレだ」
銀座電器の社長がこそこそ話す。
「首の斜め後ろをこう、ト~ンと・・・」
「そんな昭和のブラウン管テレビじゃあるまいし」
キョーコの実家では、現役でまだ視聴されている。地デジチューナーを繋げば、問題なく見れる。
「よっしゃ、やったるぜ」
「加減しろよ~」
木槌でさな板を小突くような音が響いた。
「あっ、目を醒ました!」
ウィルは強盗のサングラスとマスクを既に剥ぎ取っていた。
「あ、あれ? 私は一体・・・?」
男は急に人が変わったように、しゃっちょこばった口調で話し出した。
「叩けば直るって現代でも通用するんだな!」
奇怪なことをおっしゃる。
ウィルは男が持っていた身分証を手にしていた。
(こんなまっとうなキャリアの人が、なぜこんな兇行に?)
今年に入って頻発する事件の裏には、プロミネンスが無関係ではあるまい。




