武器よ、さらば
「お前がミドル・ヒチカタか」
下校中のミドルに、背後から冷低な声が掛けられた。
「そうだけど」
ミドルは振り返らずに答える。
「ついてきてもらおうか」
空気が完全に凍てついている。
「それ、俺になんか得があんの?」
両手を頭の後ろに組んだまま、ライトターンする。
男の手には、カラシニコフ拳銃が握られていた。
「ライターって訳じゃなさそうだね」
(これで本当にライターだったら、俺はこの人のことを好きになってしまうぞ)
「ヴィー(貴方)の腕を見込んでのことだ」
ドゥニア・ゲランガンで失格となったミドルだが、決勝まで進んだことは世界のならず者たちの耳目に触れた。
「あなたP国の軍人でしょ? 俺は日本人だぜ。頼む先を間違えてるよ」
誰かの手先となって闘うことなど、これっぽっちも考えていないミドル。
「ふむ。キミはまだ知らないと思うが、裏世界は決して国単位で明確に分かれているわけでは無い。私の所属もP国ではないしな」
ミドルは、混迷を極めた世界情勢に思いを馳せた。
「キミの祖国が政治的にも経済的にも低迷が続いているのは、偶然では無い。そのポテンシャルからすれば、とっくに世界の覇権を握っていてもおかしくないのに、だ」
「日本のためってなら、考えなくも無いけどね。こんな自由の利かない時代はもううんざりだよ」
ミドルの拳は震えていた。
「ああ、それでかまわない。キミは思う存分、腕をふるってくれ」
いままで仮面のような表情を崩さなかった男が、口元を緩めた。
「まだお名前を聞いていませんでしたね」
ミドルは頭を少しかがめた。
「アカーキー・アカーキエビッチだ。どうぞよろしく、ミドルくん」




