涙ばかりの毎日 強いあいつの毎日
日本の海岸線から、ハイパーループの路線沿いに、浮泳する影がふたつ。
「ひい、ひい」
ミドルががくがく震えている。
「老師はオレたちを殺す気か!」
温厚なススムもさすがに参っている。
ミドルの左手にはめた指輪が光る。
《Hey, Guys》
ウィルの声であった。
《気分はどうかしら?》
陸上のウィルは呑気なものだ。
「これじゃ浮かばれねえよ」
ミドルの平泳ぎのスピードが遅くなる。
《まあ、そう言わないの。これもれっきとした修行なのよ。あんたたちは力入りすぎてるからね。水に浮くってとても大事なのよ》
「それはそうだけど、これじゃ体がブヨブヨにふやけちゃうよ」
ススムの全身はだいぶ冷え切っていた。
《老師から伝言よ。『ふたりとも、水蜘蛛の術の使用を許可する』とのことよ》
ミドルとススムは、なかなかどうしてスターアイランドまでの水のりを半分まで泳ぎきっていた。
「おお、神の御子が見せた奇跡の水上歩行だな!」
ミドルはからだを縮めると、水面から跳び上がった。
必勝ミドルと阿弥陀ススムは、雲水翁より工学的サージカルオペレーションを受けている。気の循環が極まると、足の裏に水と反発するような力が生まれる。と言っても、ふたりの力だけではまだまだそんな芸当は出来ない。指輪の機構と体が呼応しないことには、水上歩行は成し得ない。
雲水翁がスイッチを押したのだろう。二人の指輪がグリーンシグナルを発した。
「海の駅まで競争だぜ! 腹減った!」
「おう!」
ふたりは目にも留まらぬ早足で駆け抜けていった。
《ミドリはススメ、ね》




