表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/16

【閑話】半妖・「天野クラマ」

前回のあらすじ書いておきます

神隠しにあった友人を探して欲しいという依頼を受けて、その神隠しが起きた神社へとやってきたゲンヨウ一行。そこには覚が領域支配のスペシャリストと太鼓判を押す座敷童が目を回すほど複雑な結界が張られていた。その後わざとこっくりさんの禁忌を犯しこっくりさんの怨念領域に入り込んだ一行は、座敷童の尽力で神社の周りの結界ごと怨念領域を破壊することに成功する。依頼者とその友人はこっくりさんを許し、和解することにも成功したためそれぞれの帰路につこうとしたとき、突然空から妖力の塊がこっくりさんの胸を貫き、石化させてしまう。

今回は幕間となっております。かなり短めです。

 私たちが帰路につこうとしたその時、突如上空から妖気の塊がこっくりさんの胸を貫いた。そしてこっくりさんはその傷口から石に変わってしまった。上空を見ると、一人の男が私たちを見下すような眼で見降ろしていた。



 (…何なんだ…こいつ…そもそも人間なのか?妖魔なのか?どちらの気配も併せ持っている気がする。妙な奴だ…)


 「…!あなた、何者ですか!なぜこっくりさんを石なんかに!」


 「いや、石に変えたのは俺の力じゃないさ。俺は奴を完全に除霊しようとした。でも奴ときたら…魂が壊れる直前に自身に対して石に変える妖術をかけやがった」



 覚が問うと男はねちっこい喋り方で答えた。



 「じゃあ、こっくりさんは…」


 「ああ、まだそこにいる。それよりも…問題はお前が今こっくりさんを除霊しようとしたことだ」


 「ん?ああ、そういうこと…俺の予想だと…君たちも将門の怨念に対抗するべく動いているのだろう?まさか妖魔を怨念から解放してはい終わりだなんて考えてないだろうね。もしそうだとしたら、君たちは甘すぎる。将門がこの世にいる限り妖魔たちの暴走は止められない。だから俺はこの世界の妖魔を皆殺しにすることにしたのさ」


 「妖魔を皆殺しに?ふざけるな。妖魔の魂を何だと思っている」


 「そうだ、そうだ!妖魔にも人権、いや妖権があるんだぞ!」



 座敷童は男に対し頬を膨らませながら腕を振り回す。



 「だから甘いんだよ。どのみち妖魔は怨念に支配されていようがされていまいが害を及ぼすものだ」


 「違う。それは今のこいつらが証明している。こいつらは人間の文化に馴染みともに共存している。それに、怨念に支配されないような妖魔もたくさんいることを俺は知っている」


 「ああ、そうだな。例えばそう、鬼の王、酒呑童子。かつては最強の鬼として日本中を恐怖させたが、打ち取られ幽体となった今では比較的温厚な性格となっているそうだ。だから俺は暴走した妖魔だけを狙っているんだろ?優しい方だと思うがねぇ」



 …ああ…まるで話にならない。こいつと私たちでは考え方が根本的に違っているようだ。分かり合うことのできない人間…こんな形で出会うことになるとは。つくづく運が悪い。



 「じゃあ、今日はこの辺でお暇させていただくよ。…あ、最後に教えておいてやろう。半妖、『天野クラマ』。これが俺の名だ。」


 「天野、クラマ……あ、待て!」



 天野クラマ…彼はその名を残して凄まじい速さで虚空に消えていった。



 「んあー!むかつくー!なにが、どのみち妖魔は怨念に支配されていようがされていまいが害を及ぼす存在、だ!あんな奴、酒呑童子がその気になれば骨も残らないくらいにぐちゃぐちゃに出来るんだから!」


 「それよりも、あいつ、半妖って言ってたよな。津多と似たようなものか?」


 「はい。ですが、津多さんは妖魔の末裔だというだけです。それに対して彼は半妖。つまり、肉親が妖魔なのでしょう。津多さんとは妖力が比べ物にならないほど高いですから」


 「これからはあいつにも注意しなければならないわけだ…面倒なことになったな。だが私たちのやることはこれからも変わらない。妖魔の『解放』、それだけだ。」


 「はい、そうですね。」


 「…あ、そうだ忘れるところだった。」



 私は白崎と美奈の元へ向かう。二人はいまだに事態が呑み込めず恐怖と混乱に震えている様子だった。



 「二人とも、大丈夫か?いろいろと迷惑をかけたな。」


 「いっ、いえ!そんな!」


 「そうですよ!捕まった私のせいでさなが来なきゃいけなくなったんですから!…あ、自己紹介がまだでしたね。さなから少し聞いてるとは思いますが、さなのマブダチの『美濃倉美奈みのくらみな』です。今日は本当にありがとうございました!」

 

 「うう…みなちゃん、やっぱりそのマブダチってのなんか恥ずかしいんだけど…」


 「ええ、今更?あんたさっき自分で言ってたじゃん。」

 

 「だって…」

 

 「ふふ…仲がいいんだな」



 二人を見て私はどこかほほえましく思えた。ちょうど私にもそんな友人が昔いたような気がする。



 「ええ、まぁ…とにかく、私からもお礼を言わせてください。本当にありがとうございました」



 「ああ。二人の名前、これからも覚えておこう。もしまた何かあったらいつでも連絡してくれ」


 「はい!」



 こうして、私たちはそれぞれの帰路にようやくつくことが出来た。ちなみに石になったこっくりさんはというと、あそこに置いておけばどうなるか分からないということで、石化が解けるまで一時的に封天寺で保管することとなった。



(何キロもの道を一人で担がせた恨みは一生覚えておくからな。)



あわゆく暴走しそうになる私であった。


何はともあれいつもの日常に戻れるかと思われた私たちだが、この時まだ私たちは知らなかった。翌日私たちは、ある意味では過去最大の事件に巻き込まれることになることを。



ここまで読んでくださりありがとうございます。少しでも面白いと感じていただけたなら幸いです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ