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【第二章 犯人は二人】 (十七)葬儀

 (かつら)のいう「しりあい」の寺は、こぢんまりとしていた。昨夜の通夜も、今日の葬儀も、夢現(むげん)流の門下生は二十人ほど来ているが、それで堂はいっぱいになっている。

 門下生はみな、黒の紋付きで灰色の袴に足袋は黒のものを使っている。(あつみ)だけが洋服だ。


 (げん)(いち)(ろう)はというと、白い着物に黒い羽織を着ている。紋は蜂だ。いつもの紺色の羽織についている金具と同じ形のものだった。ピアスもつけたままで、金色が堂の光を弾いて光っている。

 

 現一狼をはじめ、誰も親族が着るような正式の礼装をしているものはいない。それが、いつものことなのか、亡くなった人が他流派の人だからなのかはわからない。


 うつむきがちに座ったまま微動だにしない現一狼は、人形じみて見える。一方の伊藤龍之(いとうりゅうの)(すけ)は、時折辺りをうかがうように視線を動かしている。「(りゅう)」の襲撃がいつかわからない今、こういうところに偵察に来る可能性はある。檜家だって、実際、葬儀のときに(せい)(りゅう)たちがきていたのだから。


 昨晩の通夜は、現一狼と龍之介が寺に泊まり込み、寝ずの番をしていた。そのせいもあるだろう。龍之介の顔色はいくぶん悪い。現一狼はいつもと変わらない。


 出棺となり、門下生達が立ち上がった。井筒(いづつ)たちが吉岡(よしおか)の棺を持ち上げる。森島(もりしま)の棺は、島田(しまだ)たちが運ぶことになった。島田は今朝になって体調が戻ったらしく、葬儀から参列している。


 島田たちのグループは、人数は少ない。だが、巨漢が揃っていて、難なく棺を持ち上げる。一方の井筒たちのグループは、腕力が弱い人が混じっているのか、持ち上げてはいるものの軽々と運ぶという雰囲気ではない。

 棺を担いでいた島田が、仲間に声を掛けて棺を下ろした。それから、井筒たちのところに歩いて行って吉岡の棺に手を掛ける。

 途端、島田は顔をしかめた。


「こっちの方がちょっと重いですね。井筒さん、ちょっと待っていてください。ぼくは先にあちらの棺を運ぶので、そのあと、こちらに戻ってきます」

「マジか。助かる。じゃあ、オレら、少し待機してるわ」


 井筒が額を手の甲で拭った。

 島田は軽く頭をさげて戻ると、仲間と森島の棺を担いで出ていった。


「軽々持ってるな。さすが島田」


 井筒の隣にいた門下生が、呆れ声で言った。


「大学時代、アルバイトで力仕事をしていたらしいからな。それにしても、どうしてこんなに重いんだ」


 井筒が棺に手を掛ける。一人ではどうにもならないらしく、すぐに手を離して首を振る。


「いや、案外、吉岡さんのほうが、体重があったってことはないか。森島さん、身長は島田並だったけど、細かっただろ」

「タッパの分、体重はあるだろうよ。島田は力が強いんだよ」


 ぼそぼそと二人が話していると、龍之介が、「おい」と呼びかけた。


「ここがどこかわかっているのか?」


 怖い顔で言われて、井筒たちは首をすくめた。

 やがて、島田たちが戻ってきて吉岡の棺も運んでいった。


 葬儀が終わり、骨壺が寺に預けられると、一同は道場に戻ることになった。行きと同じように、数台の大型タクシーと、伊藤龍之介の車に分乗するという。渥は行きに乗ってきた龍之介の車に乗ろうと近づいていく。

 そのとき、背後から腕をひかれた。


「渥君。ちょっといいかな」


 背後にいたのは島田だった。この世の不機嫌を寄せ集めたような、渋面をだった。

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