真夏の夜の幽霊
浅井茶々という美少女の正体は幽霊でした。しかし茶々は、恋人に待ちぼうけを食らわされている我孫子スナオに付き合うように迫ります。原稿用紙10枚のオリジナルシナリオです。もし可能でしたら、読んでいただけましたら本当にありがたく思います!
「真夏の夜の幽霊」
人 物
我孫子スナオ(25)会社員
浅井茶々(15)豊臣秀吉の側室
豊臣秀吉(61)天下人
桜の宮萌(27)我孫子スナオの恋人
○阪急電車梅田のスクリーン前
恋人・桜の宮萌と待ち合わせ中の
我孫子スナオ(25)スクリーン
の上にある時計を見る。
我孫子「もう夜7時だ、待ち合わせ
夜6時なのに。萌ちゃんまだ来ない
ドタキャン7月にはいってこれで
5回目・・でも、今日はきっと
大丈夫、それにしても暑いなあ」
目の前でしゃがむ白い
ワンピース姿の浅井茶々(15)
茶々「くるしい」
我孫子「どうされましたか?」
茶々「ううう、胸が苦しい」
我孫子「救急車呼ばなきゃ」
スマホの画面映る。
茶々「救急車はいやや、呼ばんでええ」
我孫子「でも、どうしたらいいですか」
茶々「あかんしぬ・・胸が苦しい、
シャツのボタン外してくれへん?」
我孫子がシャツにボタン手を
かけよとした瞬間、
ジーンズにTシャツの
豊臣秀吉(61)走ってくる
秀吉「茶々〜待ってくれ〜!」
茶々「私を追いかけるな!ほっとい
てくれ!」
我孫子「誰ですか?あのお爺ちゃん」
茶々、我孫子の手を引いて
立ち上がる。
茶々「逃げるで!お供せい!」
我孫子「いや、僕は萌ちゃんとの
待ち合わせが」
我孫子、茶々に手を引かれて走る
○中之島公園
ベンチに座る茶々と我孫子
我孫子「もう、あのお爺ちゃん来ない
ですよ、じゃあ、僕、まち合わせに
戻りますから」
茶々、ポケットからいちご飴を
2個出して、一個を我孫子に
一個は自分の口に入れる
茶々「君、どれだけ鈍感のお人好し
やねん、君の彼女は、君とデート
する気ゼロやで、悪いけど」
我孫子「付き合って一週間、一番
ラブラブな時ですよ。何にも知らない
のに、なぜそんな事言うんですか?」
茶々「いや大体わかる。女がデートに
遅れるってのはな、もう別れたい
から早よ気がつけよっていう、遠回
しのブロックサインや。それでたら
もう試合終了や」
我孫子「そんなことあり得ません」
茶々「女心わかっとけよ。そゆ時は、
男からそっとフッてやるんや。
女に恥かかさんように。それが男の
優しさってもんや。悪いことは
言わんから早よ別れたり」
我孫子「いやならはっきり言ったら
いいじゃないですか、なんでそう
なるんですか」
茶々「いや、その奥ゆかしさが、
女という生き物の可愛い所なんや」
我孫子「男友達との付き合いも苦労
してるのに、そんなエスパーみたい
な駆け引き、僕には無理だ・・」
茶々「恋愛というのは高度な情報戦と
心得えよ、さもなくば敗北あるのみ」
我孫子「はあ。僕に恋は難易度高
すぎ。僕は恋の敗北者で結構です」
茶々、真剣な顔で我孫子を見る。
茶々「なあ君、この世には見たり触った
りできひんけど確かにあるもの、
そんなんがあるって信じられる?」
我孫子「それって占いとか、運命とか」
茶々「まあ、そんなとこや。君、
私の事見えてるか?」
我孫子「そこにいるじゃないですか」
茶々「私が見える心がズタズタの
君には恋の敗者復活戦の資格
がある。どや、私と付き合って
みない?女心教えてあげるわ。
ただし私おばけやけど」
我孫子「え?おばけと恋愛?」
茶々がスカートを捲ると足首
から先がない。
茶々「ご覧のとおり、私はおばけ。
でも、おばけかどうかは気にせん
といて。うちあんた気に入ったから。
うちは普通の恋人やとおもてくれ
たらいい」
我孫子「気にします!僕遠慮します」
茶々「私に恥かかしたら一生彼女でき
ないのろいかけるで!」
秀吉やってくる。
秀吉「茶々〜!」
茶々「やべ、逃げよう」
走り出す茶々と我孫子。
○大阪城天守閣
大阪城の天守閣の屋根に並んで
ソフトクリームを食べながら
座る茶々と我孫子。
茶々「私は浅井茶々、君、名前は?」
我孫子「僕は我孫子スナオです」
茶々「スナオくん、いい眺めやね」
我孫子「そうですか?それより誰
ですか、あのお爺さん」
茶々、遠い目をして。
茶々「天下人」
我孫子「茶々さんは、生まれた時
からおばけなんですか?家族は
いないんですか?」
茶々「生まれた時人間やったそうや。
家族も友達もおらんかったけど」
我孫子「ほんとに?」
茶々「少しでも弱み見せたらつけ込
まれる、相手の心を読み、自分の
手持ちのカードで死にもの狂いに
命をつなぐ毎日、それが生きてる時
私やったそうですわ、知らんけど」
風が吹いてくる。
我孫子「厳しい時代だったんですね」
茶々「人斬りがないだけで、今の令和の
時代も大変やと思うで、君らよう
頑張ってるよ。さあ入ろか、
私の家、此処やから」
我孫子「嘘?ここ大阪城ですよ、」
茶々、我孫子、城の中に入る。
○大阪城・天守閣
畳が敷き詰められた造られた
当時のお城の内部になっ
ている。その奥に着物姿の
豊臣秀吉が座っている。
秀吉「茶々、やっと会えた」
茶々「自分の思うように生きて、思う
ように死んでまだ何かありますか、
それとも私にまだ未練でも?秀吉様」
秀吉「未練はない。ただ儂は命を
燃やして全力で生きたお主に、一言
心の底から謝りたかった」
茶々「御殿様のお心は深すぎて私には
わかりかねます。嫉妬も猜疑心も
物欲もエロも残酷さも私には
理解不能ですわ」
秀吉、涙を流して床に頭を畳に
擦り付ける。
秀吉「茶々、ごめんなさい」
茶々「いやに弱気なことで。お殿様」
秀吉「しんだら、お殿様も何もない
儂も、しんでからちょっとは成長
したのかもしれない」
茶々「しんで成長?たわけた事を、
(大声)言っとくけど秀吉は昔から
何も変わってへん。寂しがりで、
お調子者で、臆病者で本当はとても
優しいお方やった。それを隠す為に
わざと威勢よく振る舞う小心者。
でも茶々は秀吉のそこが好きやった。
自分に正直になりはったのかな」
秀吉「茶々ごめん、そしてありがとう」
優しく秀吉を見る茶々の姿
次に秀吉のいた席をうつす。
そこには秀吉の姿はない。
茶々「成仏しはったみたいや」
我孫子「おばけでも、涙流すんですね」
茶々「おばけは涙を流さへん。絶対に」
茶々、呆然と秀吉がいた席を
見つめる。
茶々「本気で好きやったよ、秀吉。
今更笑える話やけど」
茶々、顔を伏せる。
我孫子「茶々さん?もしかして泣いて
ます?」
茶々「泣いてへんわ、おばけは泣け
へんのや、絶対に」
我孫子「茶々さん、大丈夫ですか?」
茶々「ごめん、別れの時間や。私
とは半日も続かへんかったね」
我孫子「恋の駆け引きのダシにされ
ました」
茶々「往生しまっせ」
茶々微笑みながら消えていく。
○阪急梅田駅・スクリーン前
時計は夜12時を指す。スナオ
に桜の宮萌(27)抱きつく。
萌「ごめんスナオくんほんとごめん、
仕事のプレゼン区切りついたから、
これからはずっと一緒にいれるから」
スナオ「此方こそこんな空気読めない
僕でごめん」
萌「空気は吸うもの、読めなくても
いいんだよ。それが私の大好きな
スナオ君だから」
スナオ嬉しそうにする。
F I N
ここまで読んでいただき本当にありがとうございます!感謝します!