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作戦会議

俺の頭上から降りてきた二人は今日合流する予定のはずの仲間であり、『渡り鳥』のメンバーである。


俺にいきなり抱き着いてきたのがセリア。エルフの先祖返りであり、エルフに酷似した容姿をしている。

深い緑の瞳に、金色に輝くような髪に、異様なほどに整った顔立ち。

華奢な体をしているものの、魔神であるゲヘルに師事し、魔法を使いこなす。

耳が長くとがっているのが人でないことを除けば普通の人間と変わらない。文字通りこの世の者とは思えない美少女である。


「遅れたな」

袋を片手に持った鎧をまとった女性が下りてくる。銀色の髪に、整った顔立ちにきりっとした意思の強い眼差し。

長身で背筋はしゃんと真っ直ぐ通っており、隙のない身のこなし。鎧越しでもスタイルの良さが伝わってくる。

凛とした美人である。彼女はエリスといいこの世界の勇者である。


「にしてもよく俺のいる場所が見つけられたもんだ」

ライラックの港町は結構広い。空から探しても俺を見つけるのは厳しいはずだ。


「探査魔法を使ったの。ユウの持ってる魔道具の波長は独特だから」

つまりセリアは魔神達からもらった魔道具の波長を辿ってきたということらしい。


「ナルホド」

俺は思考停止して取り合えず相槌を打つ。

ゲヘルに弟子入りしてから驚かされてばかりである。

竜騎士と戦って勝利したり、国を覆うような大結界の手伝いをしたり。

もはやセリアに関しては何をしても驚かない。


「私はセリアとそこで落ち合ってな。取ってきた魔石は預けておく」

エリスは俺に大きな袋を渡してくる。中は全部魔石だろう。魔石は魔物を倒すともらえる魔素の結晶である。

エリスは近場(エリスの感覚的には)にある魔の森を二三回って、狩りをしてくると言っていた。

魔の森今の時期は魔引きは終わっているので、相当奥に潜ったのだろうなと思いながら、

俺はその袋をエリスから受け取り、収納の腕輪に仕舞う。


「それより一体何が起きている?港の方で黒い怪物と冒険者や警備兵たちが交戦しているようだが」


「ああ。少し場所を変えよう。直に見てもらった方が早い」

俺は海魔獣の見える屋根の上まで移動し、交戦している状況を見ながら二人に説明する。

警備兵や冒険者たちがどうにか海魔獣を必死に食い止めている。


「はるか遠洋にいるはずの海魔獣?…話には聞いたことがあるけど…あれが」

俺の説明を聞いたセリアが疑問を口にする。

セリアに海魔獣について聞きたかったが、今は時間がないのでやめておくことにする。


「ならばすぐにでも倒すべきだな」

エリスはエリスでスイッチが入った様子。剣に手をかけその場を離れようとする。


「早まるなってエリス」

俺はエリスの襟首をつかんでエリスが走り去るのを押しとどめる。

エリスは首がしまったらしくぐえっという声を上げ、涙目で抗議の視線を向けてくる。

時間がないのでエリスの抗議の視線を無視し、セリアに視線を向ける。


「セリア、もしこんな街中でアレを倒した場合どうなると思う?」

俺はエリスの抗議の視線を無視してセリアに問う。


「海魔獣は魔の森のない海で育っている。魔の森は魔素を消費するために作られたモノ。

魔の森の効果のない海域での魔素の濃度は恐ろしく高くなる。

そんな高濃度の魔素のある場所で生息している海魔獣は魔素の塊みたいなもの。

そんな魔素の塊をここで倒したとしたらこの港町は魔素に汚染され、最低でも数年は人が寄り付けなくなる」


「やっぱりか…」

セリアの話はなんとなく予測していた。海魔獣の体の外まであふれ出る魔素。

海魔獣のことは俺は知らなかったが、アレが倒された場合、奴の体内にある魔素は消えずにその場に残り続ける。

魔素は魔力の元になるものであり、それは人体に悪影響を与えるという。

そんなものがライラックの港町の中で倒されたのなら…。深刻な二次災害を引き起こすだろう。

俺一人でも倒すだけならできた。ただ、被害を抑えて倒すとなると話は別である。

倒した後のことを考えると俺は二人と合流するまで手を出せなかったのだ。


「海流の早いところなら魔素の拡散も早いと思う。岬の先はかなり海流が強かったと聞いているけど…」

セリアは船に乗っていた時の話を思い出しながら答える。

水夫の一人がセリアに気があったようで得意げに語っていたことである。

セリアは海に興味があったらしく、それを黙って聞いていた。


「おいおい、あの巨体をどうやって岬の先にまで移動させるつもりだ?相手は生き物だ。

さすがに持ったとしても動かれるだろうしアレを運ぶのは私でも無理だぞ」

生き物でなければ大丈夫なのかよとエリスにツッコみをいれたくなったが、エリスの場合冗談では済まない気がする。


「…沖まで移動か。俺に考えがある。セリア、準備ができるまであいつの注意を引き付けておくことはできるか?」


「できるわ」

セリアからは自信に満ちた表情からは早く力を試してみたい、そんな前のめりな感情が伝わってくる。

魔法を学んでセリアが良い方向へ変わっているのを感じる。


「なら俺に作戦があるんだが…」

俺は思いついた作戦を二人に話してみる。

二人は神妙な顔つきで俺の話す作戦に聞き入る。


「ユウの作戦に賛成。というかそれしかないと思う」

「一番被害がない倒し方ならそれに越したことはない」

作戦は思いつきであり、ちょっと無謀かなと思う点もいくつかあったが、二人とも全面的に俺を支持てくれた。

ちょっと無謀かなと思える作戦だけれど、仲間といるとできないこともできるように感じる。


「さてそれじゃ、はじめようか」

こうして俺たち『渡り鳥』による前代未聞の海魔獣の討伐作戦が始まったのだ。

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