孤児院の青年(4)
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Gキブリは触覚を動かしながら、こちらを見ているかのようにこちらに近づいてきた。
子供たちはクローが驚いたことに笑いを抑えきれず、お腹を抑えながら笑っていた。
クローはそんなことはお構いなしにプニーの手から逃れたGキブリを瞬時に捕まえて、扉の外へ放り投げた。
するとプニーは泣き始めてしまった。
それもそのはず、いくらクローを脅かせるためとはいえ、あの速く走る虫を捕まえるのは苦労したのだ。
目的は達成できたとしてもプニーは子供、泣いてしまうのは当然である。
しかしクローは手慣れているのか、プニーと目線を合わせるように座り、頭をなでながら
「今度、俺と一緒にどっか行こうぜ。虫取りでも花摘みでも俺のいける範囲でどっかつれってやるから、泣くなよ」
「ほんと?」
「ああ、ほんとだよ」
「約束だからね」
プニーは泣き止み、どこに行こうか想像を膨らませながら、顔をにやけさせていた。
そんな顔を見て、なんだか自分のように嬉しそうな顔をしたアーニアが一瞬で表情を変えた。
「そういえば最近、私たちが寝てるとき外が騒がしいんだよ。シスターたちに訊いても何にも言ってくれないし。クロー、なんか知らない」
「知らないな。最近は町にいたけどそんな話は一回も聞いたことがないな」
クローは手を顎に当てた。
こんなスラム街前で騒ぎが起きるなんてどう考えてもスラム街の連中しかいないんだけどな。シスターたちが何も言わないとなるとスラムの奴らじゃないような気がすんだよな。
原因を考えるも誰の仕業か見当もつかないのですっぽり考えるのを諦めた。
「クロー、お帰りなさい」
「ただいま、マザー」
「あーマザー!」
とてもやさしい顔をしたお年寄りのマザーがクローたちに笑顔を向けた。子供たちがシスターマリアのところへ集まる。
マザーはこの孤児院の長だ。ここに50年以上もいるらしく、他のシスターからも信頼されている。クローもマザーのことは大いに信頼している。
というのも、孤児院でクローが一番お世話になったからだ。それはまた別の話。
そしてクローたちは楽しい時間を過ごした。
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